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西郷真央、吉田優利の日本勢だけじゃない!韓国女子ゴルフ界でも米ツアー進出が加速するワケ

金明昱スポーツライター
米ツアー最終予選会を2位で通過したイ・ソミ(写真・KLPGA)

 近年、日本の女子プロゴルファーの米女子ツアー進出が加速している。米女子ツアー最終予選会(Qシリーズ)に出場した西郷真央が通算26アンダーの2位タイ、吉田優利は通算19アンダーの7位タイで来季米ツアーの出場権を獲得した。今年のプロテストに合格した馬場咲希は62位タイに沈み、ツアーメンバー入りを逃している。

 また、今年は稲見萌寧がTOTOジャパンクラシックで優勝し、来季米ツアー挑戦を表明。原英莉花は米女子ツアーの2次予選会(Qスクール)に出場するもスコア誤記で、最終ラウンド進出を逃したが、“米ツアー志向”の流れが加速しているのは間違いない。

意外と多かった米ツアー最終予選会の韓国選手

 そこで気になっていたのは、お隣韓国女子ゴルフ界の実情だ。近年は韓国女子ツアーの試合数や賞金額が増え、米ツアーを目指す選手が年々、少なくなっていた。今年、日本のプロテストに合格し、先月末に開催されたQTファイナルでトップ通過を果たしたソン・ガウン(宋佳銀)も「国内ツアーの充実から、海外ツアーに出る選手が少なくなっている傾向は確かにある」と語っていた。

 しかし、ふたを開けてみると今年の米女子ツアーの最終予選会には、多くの韓国人選手がエントリーしていたのだ。イム・ジンヒ(25歳)、イ・ソミ(24歳)、ソン・ユジン(23歳)、ホン・ジョンミン(21歳)、イ・ジョンウン5(35歳)など。

 結果はイ・ソミが2位タイ、ソン・ユジンが7位タイ、イム・ジンヒが17位タイで来季米ツアー出場権を獲得。イ・ジョンウン5は23位タイ、ホン・ジョンミンは45位タイでツアーメンバー入りを果たしたが、レギュラーツアーの出場が限定的で下部のエプソンツアーの出場権が付与される。

今季韓国ツアー4勝で賞金ランク2位のイム・ジンヒも米ツアー最終予選会を17位で突破(写真・KLPGA)
今季韓国ツアー4勝で賞金ランク2位のイム・ジンヒも米ツアー最終予選会を17位で突破(写真・KLPGA)

米ツアー目指す韓国選手に従来とは“違う傾向”

 その顔ぶれを見ると、過去に米ツアーに進出した韓国選手とは違う傾向が見えてくる。例えば、現在米ツアーを主戦場にする通算7勝のパク・ソンヒョン、通算1勝のイ・ジョンウン6、昨季から米ツアーに参戦したチェ・ヘジンは、韓国ツアーで賞金女王となり、確固たる地位を築いて米ツアーに参戦している。つまり、国内ツアーで圧倒的強さと結果を残したあとに、海を渡るのが通例だった。

 しかし、今回は国内ツアーで「ある程度の結果を残した選手」が、こぞって米ツアー予選会に挑戦していたのが特徴。イ・ソミは韓国ツアー通算5勝、ソン・ユジンは今季2勝、イム・ジンヒも今季4勝で賞金ランキング2位に上り詰め、実力を認められたトッププロではあるが、“国内に敵なし”という強さでもない。

「世界の強い選手たちと腕試ししてみたい」

 韓国ツアーで戦っていれば“安泰”と考える選手がいる一方、「世界の強い選手たちと腕試しして、自分の実力がどれほどのものなのかを味わってみたいという選手がいるのも事実です」(KLPGA関係者)という。

 つまり、韓国ツアーで数年戦って結果を出したあとに、米ツアーを目指したいと考える選手が一定数はいるということだ。これは、来季日本ツアーの前半戦出場権を勝ち取ったソン・ガウンも「日本に行きたい選手は私が知る限りでは5人ほどいます」と話していたが、“海外で力を試したい”という韓国選手は思っている以上に増えているのだろう。

 韓国選手の海外志向は日本ツアーと同様で、来年以降は“渡米、渡日の波”が押し寄せるのかもしれない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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