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中国の春節が大異変!「今年は出かけません!」

中島恵ジャーナリスト
春節は家族団らんで過ごす楽しいイベントだが、今年は異変が起きた(筆者の友人提供)

 中国は今日、春節を迎えた。昨夜は旧暦の大みそか。「年夜飯」という大みそかのごちそうを食べ、一家だんらんで楽しく過ごすのが習わしだ。

 そして、中国のSNS、ウィーチャットにはたくさんの「新年快楽」(新年おめでとう)などの挨拶が並ぶのも恒例。タイムラインにも書き込むが、個人的に友人に新年のかわいいスタンプを送ったり、送られたり、自動配信で友人全員に送ったりする人も非常に多い。

 しかし、今年は異変が起きた。例年なら、日本人である私のもとにも、旧暦の大みそかの晩にはたくさんの新年祝賀の挨拶が送られてくるが、今年は少し少なかったのだ。

「気のせいかな」と思ったが、そうではなかった。新年の挨拶が比較的少ない理由は、やはり武漢で発生した新型肺炎のことを心配している中国人がとても多かったからだ。

世界各地で武漢を応援する中国人の輪が広がっている

「加油! 武漢」(がんばれ、武漢)

「天祐! 武漢」(武漢にご加護を)

 もちろん新年を祝う言葉も飛び交ってはいたが、同時に武漢についても一言触れる人もかなりいた。新型肺炎に関する最新ニュースを集めてシェアする人などが多く見られたのだ(中には、このときとばかりマスクを高額で転売する業者などもいたが……)。

中国のウィーチャットでは「武漢がんばれ」というスタンプが飛び交っている
中国のウィーチャットでは「武漢がんばれ」というスタンプが飛び交っている

 武漢出身の友人は「今年は残念な春節となってしまった」と心境を吐露し、上海や杭州など比較的武漢に近い距離の都市に住む友人もかなり心配していたのが印象的だった。

 上海の友人から届いた年賀スタンプは紅包(中国の赤いお年玉袋)の中にマスクが入った画像だった。杭州の友人から届いた年賀スタンプは、お正月用品の袋を背中に背負ったねずみの画像と「今年は特別な春節。今年は出かけません!」という言葉がセットになったものだった。

 中国国内だけではない。日本でも武漢や武漢を含む湖北省出身者を中心にマスクや救援物資の寄贈などを募集するQRコードがたくさん出回っていた。アメリカも同様で「中国人留学生会」などの組織を中心に武漢支援の輪が急速に拡大している。

 ウィーチャットを駆使し、国内外の中国人が結集しているのだ。

 毎年、春節になれば、ターミナル駅や地方空港は猛烈な人で大混雑するが、今年は直前になって旅行を断念するなど、取りやめた人も少なくない。春節とは思えないほど閑散とした列車の車内の写真をウィーチャットに投稿している人もいた。

 もちろん、事前予約してしまっているので、海外に出国した観光客も多いが、フィリピンで入国拒否に遭うなど、「中国人」というだけで、散々な目にあっている。そうした報道を目にして、中国人同士の結束は固くなり、近場でも出かけない(出かけられない)という人が増えた。

 中国国内では春節恒例の楽しみである各地の「廟会」(縁日)はその多くが中止となり、上海ディズニーランドも一時閉園となるなど、春節のお祝いムードは吹き飛んでしまった。私の記憶のかぎりでは、2003年のSARSのときでも、ここまでの自粛や対策はなかった。

 死者の増加など新型肺炎に関する報道が刻々と流れ、中国は厳戒態勢となった。事態は予断を許さない状況だが、「よりによって、なぜこのタイミングなのか……」と多くの中国人は深いため息をついている。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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