バルサがリーガの「優勝戦線」から脱落?グアルディオラの「痕跡」と原点回帰の失敗
バルセロナが、窮地に立たされている。
新型コロナウィルスの影響で一時中断するまで、バルセロナはリーガエスパニョーラで首位に立っていた。残り11試合で、2位レアル・マドリーとの勝ち点差は2ポイント。マドリーとのタイトルレースは熾烈になると予想されていたものの、バルセロナに自力優勝の可能性が残されていた。
だが中断明けの試合でマドリーが5連勝を飾った一方で、バルセロナは2勝3分けと勝ち点を落とした。バルセロナに勝ち点4差をつけて首位に立ったマドリーが、2016-17シーズン以来の優勝に前進しているという状況だ。
■監督交代
バルセロナは今季途中に監督交代を行った。1月のスペイン・スーパーカップの準決勝敗退という結果を受け、エルネスト・バルベルデ前監督との契約解除を決断。キケ・セティエン監督を招へいした。
ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長とエリック・アビダルSD(スポーツディレクター)にとって、セティエン監督はファーストオプションではなかった。まず白羽の矢が立てられたのはロナルド・クーマン監督(現オランダ代表)、シャビ・エルナンデス監督(現アル・サッド)だったのだ。
だがバルセロナ出身のシャビには監督就任に適した時期ではないと断られた。オランダ代表との契約を残すクーマンの招へいは実質的に不可能だった。そして、「第三の案」として呼ばれたのがセティエンだった。
セティエンに期待されたのは、「クライフイズムへの回帰」だ。ボール保持率を高め、対戦相手を敵陣に押し込み、ゴールを奪って勝つ。美しく勝利せよーー。バルセロナの創造主であるヨハン・クライフの言葉を体現するようなフットボールが、シーズン途中という準備段階のない中で求められたのである。
■グアルディオラの退任
2012年夏、ジョゼップ・グアルディオラ監督(現マンチェスター・シティ)が退任した際、指揮官の不在は乗り越えられるものだと信じられていた。
4年間で14個のタイトルを獲得。その成功について、のちにグアルディオラは次のように語っている。
「若く野心のある会長(ラポルタ)、スポーツディレクター(チキ・ベギリスタイン)、信じられないくらい素晴らしい選手たち...。世代が合致した。そして、我々には世界一の選手(メッシ)がいた。私は監督としての適齢期にあり、世界を席巻できると思っていた」
勝利は指揮官の手腕によってのみ、もたらされるのではない。クラブが一枚岩となっていなければ、結果を手繰り寄せるのは難しい。グアルディオラの言葉は、現在のバルセロナに突き刺さるように、リフレインしている。
■原点回帰の結果
セティエンの初陣となったグラナダ戦で、バルセロナは1000本以上のパスを繋いだ。ポゼッション率は80%を超えた。カンテラーノのリキ・プッチが決勝点の起点となり、「カンテラ重視」と「ポゼッション」というクライフイズムが具現化された試合だったと言えるかもしれない。少なくとも、メディアレベルでは、その方向性が定められた。
しかし、セティエンはビッグクラブを率いるのが初めてだった。スタープレーヤーの扱いに慣れておらず、選手のマネジメントにおいて綻びが生じ始める。アシスタントコーチに激情型のエデル・サラビアを置いたことも、事態を複雑化した。先のセルタ戦では、給水タイムにリオネル・メッシが露骨にサラビアの指示を無視しているシーンがカメラに抜かれている。
決戦となったアトレティコ・マドリー戦では、アントワーヌ・グリーズマンをアディショナルタイムに投入するという不可解な采配に走った。試合後の会見で「明日、グリーズマンと話をする」と弁明したセティエンだったが、ソーシャルメディア上でグリーズマンの父親が「話しをするためには訪問者側が鍵を持っていなければいけない」と綴り、弟は「本当に、泣きたい。たった2分だなんて...」と記した。すぐにメッセージは削除されたものの、どうにも後味が悪かった。
リーガの優勝をマドリーに明け渡してしまうと、バルセロナに残されたタイトルはチャンピオンズリーグのみとなる。2015年以来、バルセロナが手にできていないものであり、近年バルセロニスタが最も欲しているタイトルである。だがタイトルの行方以前に、セティエンと選手の間の溝、そしてそれを表面化させてしまっているクラブ体制は切実な問題だ。