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【有名ブランドも?】バレンタインで浮き彫りになる“甘くないチョコ”という社会問題

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
“甘い”はずのチョコが、“甘くなかった”ら?(写真:アフロ)

■バレンタイン・デーで毎年思い出すこと

今週末、あなたはどのような一日を過ごす予定でしょうか。

今週の日曜日は2月14日、そう、「バレンタイン・デー」でございます。

バレンタイン・デーの風習は、日本において1960年ごろから普及し始め、世界各地で行なわれる行事とは異なるスタイルで進化をとげてきたとされています。しかし1970年代には一旦その流れはストップし、定着はしないかと思われていたものの、1980年代から商業的なキャンペーンも多く行なわれるようになり、次第に「女性から男性への告白」というスタイルが定着してきたらしい。2000年代以降は、バレンタインデー近辺で、チョコレートの日本の年間消費量の何割もしめるなど、壮大なチョコレートまつりになりましたとさ。(wikipedia等、参照)

ただ、昨今はジェンダー・ダイバーシティ(性の多様性)の文脈もあり、今後は、女性から男性へという文脈だけではなくそれ以外のチョコレート消費も増えていくのかもしれませんね。実際、「友チョコ」、「義理チョコ」などの認知度の高い消費行動も顕在化しています。

と、私がチョコレートやバレンタイン・デーという、愛や文化を語ってもしょうがないのですが、本稿で皆様にお伝えしたいのは“社会をチョコっと良くするチョコ”の話です。(ここは笑う所です)

実はチョコレートという代物、非常にやっかいな食べ物の1つでもあります。私の専門であるCSR(企業の社会的責任)領域でも、実は毎年バレンタインデー前後に話題になる話です。チョコレートの製造や販売過程において環境・社会・人に配慮をする、「オーガニック」(無農薬・有機栽培)や「フェアトレード」(公正取引)、「エシカル」(倫理的取引)、の概念も一部では随分浸透してきているようにも思いますが、まだまだ一般認知度が高いとは言えません。

■チョコレートの“甘くない”課題

近年、主に途上国のチョコレート生産現場では、生産者と先進国メーカーとの不公平・不公正な商取引が行なわれる社会問題が話題になっています。

その課題を解決しようと適正価格で取引するフェアトレード(公正取引促進)の動きが起こっています。オーガニック・チョコレートなどは特に、その原材料となるカカオや砂糖に、このフェアトレードで取引されたものが使用される場合と多いとされます。この最終的に“甘い”食べ物も、製造過程では“甘くない”、むしろ苦い思いをする人が多いとなれば喜ばしいこととは言えません。

そこで、数年前から日本の有名なチョコレート販売メーカーである、森永製菓や明治などが中心となり、環境・社会に配慮した商品や、売上の一部がNPOに寄付される商品などを積極的に販売しています。今年はブルガリなどのラグジュアリーブランドの限定チョコでも、売上の一部がNPOに寄付されるという商品があります。

一言で「チョコで社会貢献」というのは簡単ですが、注目すべきはそのプロセスです。つまりチョコの“何が”社会貢献なのか、です。

障がい者が作るから社会貢献(障がい者雇用促進)なのか、フェアトレードだから社会貢献(途上国生産者との公正取引)なのか、間接的にNPOへの寄付になるから社会貢献(NPO支援)なのか、などなど。実際のインパクト(社会的影響)を考えれば、数千人や数百〜数千万円のお金が動いた程度で社会は良くなりません。そんなんでなるのだったら、とっくに良くなってるって。

だからこそ、企業サイドだけではなく、消費者側もより社会に良いチョコレートを選ぶことで、間接的に社会貢献につながるのです。日本で生活をする1人でも多くの人がこのような動きをすれば、確実に社会は良くなっていくはずです。

■チョコの巨匠である、企業の対応

日本の大小なチョコレート・メーカー(販売店)が、これらの課題に正面から取り組んでいます。いくつか事例を紹介します。

ブルガリ|イル・チョコラート

森永製菓|1チョコ for 1スマイル

明治|チョコレートで応援します

ネスレ|ネスレ カカオプラン

全国夢のチョコレートプロジェクト|久遠チョコレート

チョコレートデザイン|VANILLABEANS

ピープル・ツリー|フェアトレード・チョコレート

企業がNPOと協業でチョコレートを販売する方法もたくさんあるのですが、NPO自身がチョコレートを直接販売している事例もあります。

日本ハビタット協会

難民を助ける会(AAR JAPAN)

チョコレボ

バレンタインデー間近ということで、多くのネットショップでは売り切れが出始めているようです。これは良い傾向。

愛の告白を中心に何かしらのメッセージを乗せてチョコレートをプレゼントするのに、そのチョコレート自体の制作過程で誰かが泣いていたなんて、もらうほうも嬉しくないですよね。

■結局、皆さんにしてほしいこと

と、色々と書いてきましたが、読者のあなたにしてほしいことは「行動」です。

本記事で紹介したチョコレートを買うもよし、リンク先のNPOや企業のプロジェクトページをよく見てみてるもよし、です。また、市販にはなりますがのチョコをプレゼントし、チョコレートが抱える社会背景を少しでも家族・友人・恋人との会話の中に盛り込んでくれたらOKです。

特に今年は2月14日が日曜日ということで、カップルや家族ですごす方々は、これらのチョコの話をしてほしいです。ビジネスパーソンは…会社がないから週明けですね。学生は…学校がないから週明けですね。

さいごに。環境・社会に配慮のあるチョコを買って、チョコっと社会貢献を!(これが言いたかった)

※ちなみにフェアトレード、エシカル消費に関する詳細は以下の記事で紹介していますので興味がある方はどうぞ。

日本でも浸透するエシカル--エシカル消費と企業の関わり方

CSR調達と46%の倫理的購入を望むエシカル消費者たち

フェアトレードの定義とは? フェアトレードが自己矛盾なわけ

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。

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