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前面展望席が魅力!鳥取―大阪、2時間半で結ぶ「スーパーはくと」 最前席予約したらハズレ先頭車だった…

鉄道乗蔵鉄道ライター
貫通型先頭車に当たった場合は前面展望は困難となる(筆者撮影)

 大阪から鳥取に向かう場合、第三セクター鉄道の智頭急行線を経由する特急スーパーはくと号を利用するのが一般的なルートだ。この特急スーパーはくと号は、1994年12月3日の智頭急行智頭線の開業にあわせて運行が開始され、現在は京都・大阪―鳥取・倉吉間に1日8往復の列車が運行されている。大阪―鳥取間の所要時間は約2時間半だ。

 智頭急行智頭線は山陽本線の上郡駅と因美線の智頭駅を結ぶ国鉄路線として計画された路線であったが、1980年代の国鉄改革の影響を受けて建設計画はいったん中断。しかしその後、京阪神地区と鳥取県を結ぶ短絡ルートとして特急列車を運行させることを目的に建設が再開され、開業以降はこれらの地域を結ぶ重要路線としての役割を果たしている。

高鳴る全面展望席への期待 

筆者が期待した非貫通先頭車からの前面展望風景(写真:Cheng-en Cheng CC BY-SA 2.0)
筆者が期待した非貫通先頭車からの前面展望風景(写真:Cheng-en Cheng CC BY-SA 2.0)

 特急スーパーはくと号で使用されるHOT7000系気動車は智頭急行が保有する車両で、先頭車は前面が見渡せる展望構造となっていることが大きな特徴だ。このタイプの車両は非貫通型先頭車と呼ばれている。座席表は智頭急行の公式ホームページでも公開されており、鳥取・倉吉行の列車は1号車1番A~D席が最前列となり、逆方向の大阪・京都行では5号車1番A~D席が最前列となる。

 このような特急スーパーはくと号であるが、筆者は先日、大阪在住の友人から「毎朝、通勤途中にディーゼルエンジンの爆音を響かせながら追い抜かれる特急スーパーはくと号と特急はまかぜ号に乗ってみたい!」という誘いをうけ、1泊2日の弾丸旅行で鳥取を訪問することになった。往復で同じ列車に乗るのはつまらないという話になり、往路では播但線経由の特急はまかぜ号に乗車することになったことは記事(1日1本だけ運行、大阪―鳥取間を約4時間半で結ぶ「はまかぜ号」 乗り通したら車販も自販機もなかった!)でも詳しく触れている。そして、復路ではなるべく早く帰りたいということもあって鳥取―大阪間で特急スーパーはくと号を利用することになった。

 さらに、せっかく特急スーパーはくと号に乗るのだから1番前に乗りたいということになり、大阪行の先頭車となる5号車1番AB席を確保するために、この座席が発売される1か月前の午前10時に駅窓口に並び、いわゆる10時打ちをしてもらい座席の確保にも成功することができた。

10時打ちで最前席を指定した特急券(筆者撮影)
10時打ちで最前席を指定した特急券(筆者撮影)

 先頭の座席を確保できたことから、旅行への期待が高まるばかりであるが、この時は特急スーパーはくと号に魔物が潜んでいることは知る由もなかった。

鳥取駅で味わった絶望感…座席の前はまさかの壁だった!

思ってたのと違う!(筆者撮影)
思ってたのと違う!(筆者撮影)

 特急スーパーはくと号には2種類の先頭車がある。もちろん前面展望が可能な非貫通型先頭車による運転が原則ではあるが、まれに中間車としても運転可能な貫通型先頭車と呼ばれるタイプの車両が先頭に立つこともある。この貫通型先頭車に当たった場合は1番AB席の前はただの壁となることから一部のファンの間からは「ハズレ車両」と呼ばれている。この貫通型先頭車には1番C席がないことが大きな特徴となっていることまでは筆者も知っていたことから、事前にえきねっとの座席表で確認したところ筆者が押さえた席を含めて5号車1番A~C席までは「×」印となっており、筆者は、座席表からC席は存在するものと思い込んでいたことから当日はもちろん特急スーパーはくと号の全面展望が楽しめるものと期待していた。

 そして、いよいよ特急スーパーはくと号の乗車日となり、前面展望ができる車両に高鳴る胸の鼓動を押さえて列車の入線を心待ちにしていたところ、やってきたのは貫通型の先頭車。絶望感とともに列車へと乗車すると案の定、予約した座席の前はただの壁だった。

乗務員室後ろのコンパートメント席は調整席扱い(筆者撮影)
乗務員室後ろのコンパートメント席は調整席扱い(筆者撮影)

それでも大阪駅までは快適に乗車

恋山形駅で離合した京都発倉吉行スーパーはくと3号は先頭が非貫通車だったので恨めしく見えた(筆者撮影)
恋山形駅で離合した京都発倉吉行スーパーはくと3号は先頭が非貫通車だったので恨めしく見えた(筆者撮影)

 筆者が乗車した特急スーパーはくと6号は、10時46分に高架の鳥取駅を発車するとぐんぐん加速。すでに登場から30年ほどが経過した車両ではあるがパワーのある加速は乗車していても気持ちがいい。鳥取駅を発車してしばらくすると車掌さんが巡回にやってきたが、筆者の状況を察してくれたのか、前の席は大阪までほぼ空席なのでどこの席を使ってもよいと言ってくれた。

 筆者と同行の友人は、2番C席に座ると貫通扉までの通路を含めて前がよく見えることに気付き、この座席を確保。筆者は、調整席扱いとなっている乗務員室後ろのコンパートメント席に座り、因美線から智頭急行線への分岐や列車交換などの要所で、運転室後ろの扉にかぶりつき要所要所で全面展望を楽しむことができたため、大阪駅までは快適に過ごすことができた。大阪駅には13時19分に定刻通りに到着した。

智頭急行線内の車窓風景。奥の線路はJR姫新線(筆者撮影)
智頭急行線内の車窓風景。奥の線路はJR姫新線(筆者撮影)

1番C席は全列車で調整席扱い!?

 帰宅後に判明したことではあるが、特急スーパーはくと号の両端の先頭車となる1号車と5号車のC席は調整席扱いとされており、通常は販売されていないということが分かった。これは、智頭急行公式ホームページ上で公開している「お客様の声と対応について」というPDFファイルからもその内容を確認できた。

 貫通型の先頭車は予備車であるが、通常の非貫通型先頭車が急な理由で貫通型先頭車に差し替えられても、座席販売上の不都合が生じないようにこのような対応を取っているように思われた。結局は、どちらのタイプの先頭車両に乗れるのかは運次第ということのようだ。

大阪駅に到着したスーパーはくと6号(筆者撮影)
大阪駅に到着したスーパーはくと6号(筆者撮影)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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