ハーパーの打席で「スアレスに代えてクローザーを起用する選択肢」はなかったのか
リーグ・チャンピオンシップ・シリーズの第5戦の7回表、サンディエゴ・パドレスは、二塁打と相手のワイルド・ピッチで1点ずつを挙げ、3対2と逆転した。その裏、ダルビッシュ有は無死二塁とされたが、代わって登板したロベルト・スアレスが無失点でイニングを終わらせた。
8回裏を迎えた時点でも、スコアは3対2のまま。マウンドには、引き続きスアレスが上がった。スアレスは、先頭打者にシングル・ヒットを打たれ、無死一塁で打席にブライス・ハーパー(フィラデルフィア・フィリーズ)を迎えた。そして、カウント2-2から逆転のホームランを喫した。パドレスは、3対4で敗れた。
第4戦を終え、パドレスは1勝3敗と追い詰められていた。次の黒星は、シリーズ敗退となる。8回裏とはいえ、セットアッパーのスアレスに代え、クローザーのジョシュ・ヘイダーを起用する選択肢もあったように見えた。ハーパーが左打者であるのに対し、スアレスは右投手、ヘイダーは左投手だ。
この時、ヘイダーは、ブルペンで投げ始めていた。だが、ボブ・メルビン監督は、試合後の会見で、あの時点では登板の準備ができていなかったと語っている。この言葉どおりだとすれば、ヘイダーを起用する選択肢は、なかったことになる。
ただ、もう少し早くヘイダーを準備させておけばよかった、ということでもないようだ。メルビン監督は、残り6アウトでヘイダーを投入する気はなかったとも発言している。
ここ3年とも、ヘイダーが1登板で記録したアウトは4以下だ。しかも、4アウトの登板は、2020年の8月14日とワイルドカード・シリーズ第2戦、今年のディビジョン・シリーズ第2戦の3度だけ。6アウトを奪ったのは、2019年の9月7日が最後だ。一方、スアレスは、2イニング目に入っていたが、これは珍しいことではない。レギュラーシーズンの45登板中、4分の1近い11登板は4アウト以上。そのうちの2登板は5アウト、3登板は6アウトだ。ディビジョン・シリーズの第2戦でも、無死一、三塁の場面で登板し――こちらも、ダルビッシュに代わって投げ――ホームを踏ませることなく、6アウトを記録した。
また、スアレスがそれまでに打たれた5本のホームラン、レギュラーシーズンの4本とポストシーズンの1本は、すべて右打者が相手だった。ちなみに、ヘイダーは、今シーズンの被本塁打8本中1本が左打者だ。
ハーパーにはホームランを打たれたものの、スアレスは、続く3人をアウトに仕留めた。1点を追う9回表に、パドレスは、同点と逆転の走者を塁に置いた。けれども、2人とも、ホームに還ってくることはできなかった。このイニングのプレーについては、こちらで書いた。