インフルエンザの複数回感染に注意 すでに感染した人へのワクチン接種は必要か?
新型コロナは落ち着きを見せていますが、インフルエンザが流行し続けています。インフルエンザウイルスは種類が多く、同シーズン内で数種類のウイルスが流行することがあります。異例の流行となっている今シーズンは、インフルエンザに複数回かかる可能性が指摘されています。
今シーズンの流行
昨シーズンは、主にH3というタイプのA型インフルエンザが流行しました。その後だらだらと流行が続き、収束することなくじわじわと再増加に転じ、H1というタイプのウイルスの占める割合が増えています。現在、H3とともにH1が流行しています(図1)。
インフルエンザウイルスの外側にはエンベロープというタンパクの膜がありますが、このタンパクは複数種類あります。このうち、ヘマグルチニンというタンパク質の種類を「H」の番号で表しています。
さて、A型インフルエンザに2回かかってしまう事例は以前から知られています。A型はウイルスの種類がたくさんあり、同シーズン内で複数のA型ウイルスが流行することがあります。
同じA型インフルエンザであってもウイルスの種類が異なると、先に感染したウイルスの抗体がうまく機能しないことがあるため、H3とH1に2回感染してしまう可能性があるわけです。B型インフルエンザも流行すると、インフルエンザに3回感染する懸念もあります。
ただ、まれな現象であるため、過度な心配は不要かもしれません。
発症後の「再発熱」
インフルエンザ発症後、いったん解熱したにもかかわらず数日以内に発熱がみられる「再発熱」という現象があります。
子どもやA型インフルエンザに多いとされており、全体の15~20%程度にみられる現象で(2,3)、これは別の型のインフルエンザが再感染したわけではありません。
ただし、インフルエンザ発症後に肺炎球菌や黄色ブドウ球菌などによる細菌性肺炎を続発することもあり、再発熱との区別が難しいことから、違和感を覚えた場合は医療機関を受診するようにしてください。
すでにインフルエンザに感染、ワクチン接種は?
インフルエンザワクチンは、麻しんや風しんのように高い予防効果ではありませんが、高齢者で約40%、乳幼児で約60%といった高い有効性が示されています(4)。
そのため、高齢者、基礎疾患のある人、妊婦などは優先的に接種するべきです(図2)。
ワクチンはシーズンごとに流行株を予測して生産されます。今回は、A型が2株、B型が2株で構成された4価のインフルエンザワクチンとなっており、現在の流行株に対しても有効です。
効果は接種後2週間から5か月くらい持続すると考えられており、現在流行が続いていることから早めに予防接種を済ませておくとよいかもしれません。
今シーズンすでにインフルエンザにかかった人は、免疫が獲得されているため同じ型のウイルスにかかることはありません。ただし、異なる種類のウイルスが同時流行している場合に複数回感染することがありうるため、上記の推奨者についてはワクチン接種を検討してよいでしょう。感染後、1~2週間あければ接種可能です。
(参考)
(1) インフルエンザウイルス分離・検出速報 2022/23シーズン(URL:https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html)
(2) Suzuki E, et al. Clin Pediatr (Phila). 2007 Jan;46(1):76-9.
(3) Uehara T, et al. J Infect Dis. 2020 Jan 14;221(3):346-355.
(4)厚生労働省. インフルエンザQ&A.(URL:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html)