【宝塚市】地元住民に18年愛される古本屋さん。小説から人文/芸術の専門書まで多彩な品揃えが魅力です
まちの本屋さんが減り、近頃は欲しい書籍をピンポイントでweb購入することが増えました。便利な反面、ふらりと立ち寄った書店で掘り出し物に出合う。そんな楽しみを懐かしむ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
『あおぞら古書店』さんは多彩なラインナップが魅力のお店。ジャンルや時代を問わず、掘り出し物に出合いまくる品揃えの秘密は、地域の皆さんとの交流にありました。
地域住民の寄付で運営される本屋さん
阪急宝塚線・山本駅北口から、雲雀丘花屋敷(ひばりがおかはなやしき)方面に向かって線路沿いを30メートルほど進むと、右手に『あおぞら古書店』さんが見えてきます。店頭には大量の文庫本が陳列され、本好きなら思わず足をとめたくなります。
実は、こちらは特定非営利活動法人『兵庫 虹の会』の施設で、もともとは障がいを抱えた方の就労を支援する作業所でした。
18年前に、篤志家3人からの蔵書の寄付をきっかけに『あおぞら古書店』がスタート。以来、地域の方たちの本の寄付によって運営が維持されています。
現在は、古書店であると同時に、地域活動支援センターあおぞらとして、本のクリーニングや小物づくりの内職といった軽作業を通じ、障がいを抱えた方が社会に出る前のリズムを作る、あるいは地域の方と交流する場になっているのだとか。
もちろん古書はどなたでも購入が可能です。収益は通所者の工賃や活動費に充てられます。
多くの人からの寄付で広く深い品揃えが実現
店内を見渡して驚いたのは、文芸評論をはじめ、歴史などの専門書が充実していること。これは、最初の寄付が人文系に造詣が深い方たちの蔵書であったため、その後も同系統の本が集まるようになったからだそう。
文芸評論の棚には、阿川弘之さんの『志賀直哉』(はじめてこの評伝の存在を知りました!)や、今年早世された論客・福田和也さんの本もありました。江藤淳さんの古いものは、初版本かもしれませんね。
このほかにも演劇関連ではベケットや野田秀樹さん、芸術関係ではゴッホの豪華本も。
評判を聞きつけて、資料を探しに来店する研究者もいるのだそう。
かと思えば、東野圭吾や京極夏彦といった人気作家の小説や、最近の直木賞受賞作、児童書など、気楽に楽しめる本もたくさん揃っていました。純文学も多数あり、それ目当てのお客さまも来店するといいます。
「雑誌と百科事典以外は、ほぼすべて引き受けています」
との所長の言葉を裏付ける、すばらしい充実ぶりです。クリーニングをしっかりされているので、状態が良い本が多いのも嬉しいところ。
そして、バラエティに富みながら、ひとつのジャンルや作家の作品がある程度まとまって置かれ、寄付された方たちの好みや人生がなんとなく透けて見えるのが興味深いです。
なにより、世の中にはまだまだ紙の本が好きな人がたくさんいるのだと嬉しくなりました。
CDやDVD、レコードも販売
本と同様に、寄付されたCD、DVD、ブルーレイ、レコードも販売しています。
洋楽も含めて昭和の楽曲など一定の年代以上の人なら懐かしく、若者はエモいと思いそうなラインナップ。
とくにレコードは、青春の思い出として大切にされてきた歴史を感じます。
本が人をつなぐ
古書店の魅力は、現代のものだけでなく、過去の優れた著作や名作に出合えるところ。数多(あまた)の作家たちが考え、知恵を絞り、膨大な労力をかけて残してくれた財産です。年経た背表紙をみるだけでも、時を超えたであいは心に響くものがありました。
「くつろげるスペースもありますので、まずは本についてのおしゃべりを楽しむ、くらいの気持ちで来ていただけたら」
と所長はいいます。
本好きならきっと楽しい『あおぞら古書店』さん。一度、足を運んでみてはいかがですか。
店舗情報
あおぞら古書店
■ 場所:〒665-0816 兵庫県宝塚市平井2-1-2
■ 営業時間:月~金曜日 10時~17時
■ 連絡先:0797-80-2345
■ 公式Instagram
※年末年始 2024年12月26日~2025年1月5日はお休みします。