TikTokフォロワー200万超・世界で人気のアウシュビッツ生還者リリー「ひいひいおばあちゃん」に
「ついに5世代目。ナチスはユダヤ人を絶滅することができませんでした」
第2次大戦時にナチスドイツが約600万人のユダヤ人、政治犯、ロマなどを殺害した、いわゆるホロコースト。ホロコーストの象徴のような施設が、ポーランドに設立されたアウシュビッツ絶滅収容所で、アウシュビッツでは約110万人が殺害された。ナチスドイツの収容所政策は「労働を通じた絶滅」だったので、死ぬまで働かされ、働けない子供や老人は収容所に到着直後に選別されてガス室で殺害された。
そのアウシュビッツ絶滅収容所から奇跡的に生還し現在、英国に住んでいるリリー・エベルト氏はTikTokで視聴者からのホロコースト時代の質問に回答したり、ホロコースト時代の経験を語っている。17歳の曾孫のドヴ・フォルマン氏も登場している。2023年12月29日にリリー氏は100歳の誕生日を迎えた。そして2024年4月にはリリーが「ひいひいおばあちゃん」になったとひ孫のドヴ氏がXで「ホロコーストを生き延びることができるなんて思いませんでした。ついに5世代目まできました。ナチスドイツはユダヤ人を絶滅することができませんでした」というリリー氏の言葉を引用して報告。
明るく元気で世界中に200万のフォロワーがいる大人気の100歳のTikToker
リリー氏のTikTokのフォロワー数が2021年6月に100万人を超えた。そして2021年11月には140万人を突破し、2021年12月には150万人を突破。2024年4月時点で200万人のフォロワーがいる。ホロコーストの生存者で、内容も重たいことも多いが、そのような辛い過去の歴史を語る時でも明るく元気な100歳のおばあちゃんのキュートな表情やパフォーマンスが人気だ。
リリー氏は1923年12月29日にハンガリー生まれのユダヤ人で、何も罪もなかったがユダヤ人ということでナチスドイツに占領されてから14歳の時に母と弟、3人の姉妹とともにアウシュビッツ絶滅収容所に移送された。リリー氏も「私たちは何世代にもわたってハンガリーに住んでいました。だからハンガリー人以上にハンガリー人という意識でした」と語っていた。そしてアウシュビッツに到着すると彼女の母のニナ、弟のベラ、妹のベルタはガス室に送られてしまった。TikTokでリリー氏が語っているのはこのような当時の辛い経験だが、それでも笑顔で伝えている。
TikTokを運営している企業が中国系ということから、中国との経済安全保障および国家安全保障の観点から欧米では大人には敬遠されがちなTikTokだが、若年層に人気があり、リリー氏は若年層にホロコースト時代の経験をTikTokで伝えている。ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰えており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。ホロコーストの記憶や経験を後世に伝えようとして、またホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化も積極的に進められている。デジタル化された動画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても多く活用されている。だがそれらの動画は教育用に作られているため、学校の授業での視聴に使うことから長時間で、写真なども残虐なものも多くあり内容も重たいことが多い。だが、リリー氏のTikTokのように音楽に合わせて短時間であれば、若い人にとっても見やすいし、ホロコーストを知るきっかけにもなりやすい。
またユダヤ人のTikTokの動画は「jewtok」(ユダヤ人のJewとTikTokの造語)と言われて、「#jewtok」と付けて発信すると、世界中のユダヤ人がチェックしやすいので視聴者も増えやすい。
リリー氏は「ドヴと一緒に動画撮影するのはとても楽しいです。ホロコーストの体験を次世代に伝えていくことはとても重要で、このような動画配信ができることを誇りに思います。私のホロコースト時代の体験の証言は決して忘れてはならないことです。時が経って、多くの生存者が他界しているので、当時の証言を伝えて共有していくことは私たちの責任です」と語っていた。さらに「私はもう若くないです。このようなホロコーストの歴史を伝えていけるのは私たちが最後だと思っていました。でもこのようなソーシャルメディアを通じて次世代に伝えていくことができるのがとても幸せです」と語っていた。
▼リリー氏が「ひいひいおばあちゃん」になったことを報告するひ孫のドヴ氏