WBSSベスト4決まる!元世界王者たちを驚愕させた井上尚弥のパンチ力とは
プロボクシングのバンタム級最強決定戦WBSSトーナメントの4強が出揃った。
日本時間4日、WBA世界バンタム級スーパータイトルマッチで王者ライアンバーネット対世界5階級制覇王者ノニト・ドネアの試合が行われ、
ドネアがバーネットを下しWBSSシーズン2バンタム級トーナメント準決勝に駒を進めた。
それにより準決勝の対戦カードは以下のカードに決定した。
・井上尚弥(大橋)vs.エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)
・ノニト・ドネア(フィリピン)vs.ゾラニ・テテ(南アフリカ)
準決勝は来年の春にアメリカで開催との話が出ている。
注目が高まるトーナメントだが、最有力優勝候補の井上尚弥とは、一体どれほどの強さなのか。改めて元プロの視点で分析してみる。
井上と手合わせをした経験があるが
実は井上とは私が現役時代に手合わせをした経験がある。まだ彼が高校生の時に私が所属していたジムに練習に来たのだ。当時からスーパー高校生がいることはボクシング関係者の間で噂になっていた。その時は軽いマススパーリング(パンチを当てない実戦練習)をした。
お互い本気では無いので、そこでは、まだ強さは未知数だった。その後プロに転向して破竹の勢いで3階級を制覇して今に至る。あの時本気でやっていたらと少し残念に思った。
世界王者達も一目置いている存在
私はこれまで数々のチャンピオンと対談している。
ボクサー同士だと個性的な話になりなかなか面白い。その中で必ずといっていいほど名前が出る選手がいる。
それが井上尚弥だ。現役の世界チャンピオン達も井上には一目置いているのだ。井上の強さの代名詞といったらパンチの破壊力だ。
世界のトップに君臨する強豪を文字通り1発でマットに沈めてきた。
今年の5月にノックアウトしたジェイミー・マクドネル(イギリス)や9月の試合のファンカルロス・パヤノ(ドミニカ)は世界のトップクラスの選手である。その選手を相手に1ラウンド以内に倒してきた実力は同じボクサー達にも衝撃的だったようだ。
海外の強豪を相手に痛快にノックアウトする姿は同じボクサーからしてもリスペクトが非常に高い。
今回は苦戦するのではという、評価の高い相手でも僅かな時間で一掃してきた。
井上は強いものと戦い、強いものに勝ち続けてきた!
これはシンプルなことだが、非常に凄いことだ。
野球で例えると200kmの球速
先日、元世界チャンピオンに井上の話を直接聞く機会があった。
井上と実戦練習のスパーリングをした経験があり、私に興奮しながら話をしてくれた。
その強さを野球に例えた。
バッターボックスに立って、150kmの豪速球を想定して準備していたらいきなり200kmの球が飛んできた。
それぐらい桁が違うパンチ力だった。そのパンチが直撃する恐怖から自分のボクシングを見失った。
スパーリングの時は試合より大きなグローブを使うのだが、ガードの上からでも痺れるパンチで壊されると思った。
守っても怖い、攻めてもカウンターを取られて右も左もやばかった。と...
相手は井上より上の階級の元世界王者である。その選手に練習でも試合でも一番強かったと言わしめた。
私は驚きを隠せなかった。この話を聞いた時に、井上がなぜ強豪達を一撃で沈めてきたかを理解できた。
井上の想像以上のパンチ力への驚き
ボクシングは1ラウンドでのKOが意外と多い。開始直後はお互いに慣れておらず、パンチが効きやすいのだ。
ボクシングでは蓄積していくダメージより、想定外の衝撃でダウンするケースが非常に多い。
序盤はパンチの交換でお互いの情報を蓄積しながら戦っていく傾向がある。
特に1ラウンド目は情報が無いから、感触を確かめながら戦う事が多い。
そのファーストラウンドに強いパンチをもらうと、タイミングやスピード、パンチへの耐性が無いため倒れてしまう。
相手は井上のパンチを、これぐらいだろうと予測して試合に臨む。
しかし実際にパンチを食らってみると、それを遥かに超えた威力に驚くのだ。
そして相手は怯んでしまい、自分のスタイルを見失い戦意を喪失させられるのだと私は推測する。
井上はどこまで行くのだろうか
破格のパンチ力を持つ井上だがどこまで行くのだろうか。もちろんこのトーナメントを優勝してもらいたいが、もっと先の展開も期待してしまう。フィリピンの英雄マニーパッキャオやボクシング史上最も稼いだメイウェザーのような存在になるのも夢では無い。海外での評価も試合ごとに高まっている。井上の姿も見て、ボクシングを夢見る若者が増えていくだろう。次回アメリカで行われる準決勝も目が離せない。(文中敬称略)