アメリカ予報官もお手上げ? 突然降り出した「工場雪」
「雪ぐ」と書いて「すすぐ」と読むのは、雪に「掃き清める」という意味があるからのようです。それだけ私たちは、純白の雪に清らかなイメージを抱いています。しかし4日アメリカに降ったこの雪の場合は、話が違うかもしれません。
降り積もった「工場雪」
上のレーダーは、4日(火)夜にアメリカ中部ネブラスカ州に降った雪を表しています。不思議なことに、画像の上の箇所には雪が一切発生していないにもかかわらず、ノーフォーク(Norfolk)周辺から急に湧き出ているように見えます。
この突如発生した雪の正体は、鉄鋼製造工場とエタノール処理施設の2つの工場の煙から発生したもので、一般的に「Industrial snow(工場雪)」などと呼ばれています。この夜、風下の町では多いところ5センチの雪が降ったようです。
工場雪のメカニズム
工場雪の正体は、工場から出る煙に含まれる水蒸気が凝結し、凍ったものです。空気が湿り、気温が氷点下で、逆転層(上空の空気の方が下層の空気より暖かい)が発生している、冬の夜~早朝に発生しやすいことが知られています。
工場雪は地上100~200メートル付近の低いところでできるために、自然雪の特徴とは異なっています。多くの自然雪は空の高いところで発生してゆっくりと冷やされながら地上に落ちてくるため、きれいな六角形の樹枝状をしていることが多いですが、工場雪の結晶は1~2ミリの針状をしているそうです。
結晶が小さいために物体に付着しやすく、また道路も滑りやすくなります。見た目は普通の雪ですが、成分・性質ともになかなか歓迎されない雪といえましょう。
(↑4日インディアナ州でも工場雪が降り、気象局は特別気象情報を発表し、運転に気を付けるよう注意を促した)
世界の例
工場雪はアメリカの他に、スイスやドイツといったヨーロッパでも観測されているようです。また旭川地方気象台の山本晃氏の論文には、北海道の上川盆地などでも同様な現象が見られたと記されています。
雪といえば早いもので、明後日7日(金)は二十四節気の「大雪」です。