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「国立」最後のラグビー日本代表戦で「野見宿禰」「織田ポール」を見よう!

斉藤健仁スポーツライター

2019年にアジアで初めて開かれるラグビーワールドカップ、そして2020年の東京オリンピックのメーン会場として、日本のスポーツの「聖地」の一つ、国立競技場(正式名称は国立霞ヶ丘陸上競技場)が改築されることになった。5月25日(日)、2015年ラグビーワールドカップの最終予選を兼ねた「アジア五カ国対抗2014」の日本代表対香港代表戦が、スポーツの公式戦としては最後となる。そして5月31日(日)には、国立競技場のすばらしさを後世に伝えるため、「SAYONARA国立競技場FINAL“FOR THE FUTURE”」と題し、1日を通して、国立競技場にゆかりのあるアスリートやゲストを迎え、陸上やサッカー、ラグビーなどさまざまなイベントが行われる。

前身は1924年に建設された「明治神宮外苑競技場」

現在の国立競技場は、他の国同様に、1964年の東京オリンピックを契機に、1958年に建設された「ナショナルスタジアム」である。東京都新宿区及び港区にまたがる、5階建ての楕円形のスタジアムは収容人数54244人(障害者席40席を含む)を誇り、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)によって運営されている。

国立競技場の前身となるスタジアムがお目見えしたのは1924年のこと。明治天皇が崩御されたことを受けて、1915年に明治神宮の造営が始まり、1919年、明治神宮のそばの青山練兵場跡地に、当時の大日本体育協会会長で東京高等師範学校(現在の筑波大)の校長でもあった嘉納治五郎らの発案により、明治神宮外苑競技場が着工。1923年の関東大震災の影響で工事が一時中断したものの、1924年に完成。陸上競技場として作られたスタジアムだが、トラック内のピッチではサッカーなどの国際試合も行われた。

オリンピックの前に、1958年のアジア大会のメーン会場に

その後、2度の大きな戦争を経て、日本は平和になったことを世界にアピールするため、夏季オリンピック招致を表明。その招致の前段階として1958年に第3回アジア大会も誘致し、そのメーン会場として明治神宮外苑競技場の建て替えが決定した。それが現在の国立競技場である。

1957年1月に着工し、13億円(当時)の費用がかけられ、1958年3月に完成した。当時の収容人数5万7千人で、立ち見を入れると6万5千人と、もちろん日本一のスタジアムとなった。

東京オリンピックを2年後に控えた1962年3月には、バックスタンドの増設、聖火台のバックスタンド中央への移設、電光掲示盤や夜間照明設備の改修などが行われた。ついに1964年10月10日、東京オリンピックの開会式が国立競技場で催された。その後は、サッカー、ラグビー、陸上などの国際大会や国内大会の会場となり、日本のスポーツの歴史を紡いできた。

国立にあるモニュメントを目に焼き付けておこう!

国立競技場には、さすがナショナルスタジアムだけあって、さまざまなモニュメントがある。これから行われるラグビーの日本代表戦などで国立競技場に足を運ぶ機会がある人は、注目してほしい。

まず、最も印象的なのは、メインスタンドの壁画である。向かって左の壁画は、相撲の元祖と言われる「野見宿禰(のみすくね)」、また右側には「勝利の女神(ニケの像)」を飾ることによってスポーツのもつ「美と力」が象徴された。

トラック内にそびえ立つ白いポールをご存じであろうか? サッカーでいうところのアウェーのゴール裏にある。このポールは、故・織田幹雄選手を称えて建てられたものだ。織田選手は、1928年のアムステルダム五輪で、日本選手団の主将として出場し、三段跳びで日本人初の金メダルを獲得。さらに1931年には当時の三段跳びの世界記録となる15m58cmを樹立した。そのため、このポールの長さは15m58cmで、通称「織田ポール」と呼ばれている。

ほかにも国立競技場内外にはモニュメントやブロンズ象が多くある。正面玄関前には上部にはメダリストの名前が刻まれた「東京オリンピックの優勝者銘盤」が飾られている(聖火台とともに、この銘板は残される予定)。さらに、国立競技場内には、「スポーツ図書館」と「秩父宮記念スポーツ博物館」があった(現在、両施設ともに国立競技場の改修に伴って長期休館中)。 

50年にわたって、サッカーやラグビーの日本代表のホームスタジアムとして、数々の歴史に残る試合が行われてきた国立競技場。7月から10月にかけて解体され、2019年に新スタジアムとして生まれ変わる予定だ。ただ、改築されたとしても、その歴史はいっこうに色褪せることない。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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