平等先進国ノルウェーで女性の日、6千人の行進が語る課題
100周年を祝い、6千人が行進に参加
3月8日の国際女性デーを記念して、北欧ノルウェーの首都オスロでは、国会議事堂前で大規模な集会が開催された。主催者側の発表によると、約6千人が中心地にあるカール・ヨハン通りでのパレードに参加。
ノルウェーでは1915年に最初の国際女性デーが祝われ、今年で100周年目を迎える。
現政権は女性の権利を否定する?
毎年のことではあるが、政治色が色濃く出た年となった。主催をした「3月8日委員会」は、今年のメインテーマとして「女性の権利を攻撃する現政権を止めろ!」というスローガンを掲げ、ノルウェー現政権を批判する立場をとった。
ノルウェーではいずれの政党も平等社会を目指しているが、政策の方向性には違いもみられる。批判の矛先となったのは、女性政治家でもあるソルベルグ現首相、財務大臣、こども・平等・社会大臣、農業・食料大臣の面々だ。
現政権への評価が分かれる国内
2013年に政権交代をして以来、ノルウェーでは中道右派陣営が政権を維持。移民の受け入れ制限を掲げる進歩党をはじめとして、一部の弱い立場にあるとされる社会層には厳しい陣営としても認識されている。
特に、進歩党には差別的な問題発言をする政治家もおり、国内ではスキャンダル報道にこと欠かない。保守党のソルベルグ首相(ノルウェーで2人目の女性首相)率いる陣営には、女性政治家が多いが、その本人たちが女性の国民から支持を十分に得られているかについては疑問が残る。
行進したかったのに、できなかった人々
今年のパレードにおいては、現政権を真正面から批判していることによって、「女性の日」を一緒に祝いたくても、行進に参加しなかった人々も多い。「平等」社会を目指すリーダーであるはずの現平等大臣は、就任前から過去のセクシュアリティに関する差別的な発言が注目を集め、「女性の日」には批判されやすい人物だ。「ほかのかたちでも、女性の日を祝うことはできる」と、本人は今年の行進に参加をしなかった。
現政権に投票をした女性を批判するメディア報道もあり、現政権の支持者たちの中には、行進に参加しないことを選んだ者もいる。「左派政党の支持者のためのパレード」という批判の声もあり、誰もが平等に参加できたわけではなさそうだ。祝いたくても、スローガンに同意できずに行進に参加しなかった人々の数は明らかになってはいないが、今年は数多かったのではないかとみられている(警察によると、昨年はオスロで異例の1万人以上が参加)。
平等先進国として知られているノルウェーだが、女性が男性と同じように活躍できる社会に到達していないことは、国全体としては同じ理解だ。女性が男性と同じ賃金を得られていないこと、女性のリーダーがまだまだ足りないこと、男性が育児にもっと積極的に参加するべき必要があること、女性への暴力反対など、これらの問題点は共通の認識となっている。
現政権への考え方や、国際女性デーでの祝いの仕方は、人それぞれ異なるが、ノルウェーの人々にとってはこの日は重要な日であることは変わりない。行進には参加をしなくても、「女性の日、おめでとう!」とFacebookに書き込みをする人も筆者の周りには多かった。50年後、100年後に今のノルウェーはどうなっているのか。女性の日に行進をする必要がなくなっている社会であることを、願っている人は多いだろう。
Photo&Vido&Text by Asaki Abumi