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『VALU騒動』にみるYouTuberヒカルの無期限活動休止動画を見て…

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です。

ついに、VALU事件の発端であるヒカル氏らが、何度も頭を下げる謝罪動画がようやく公開された。

『いつも応援してくださっている皆様へ』

人気YouTuberのヒカルが、きょう(※2017年9月)4日より無期限で活動を休止することになった。所属事務所「VAZ」が代表取締役社長の森泰輝氏名義で、ヒカルのほか怪盗ピンキー、かず、禁断ボーイズ、ラファエルも合わせて活動を休止、および同社が運営するヒカル、禁断ボーイズ、ラファエルのチーム「NextStage」を解散することを発表した。

出典:YouTuber・ヒカル、無期限活動休止 NextStageも解散

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6252944

筆者がこの「VALU騒動」で指摘していた点は下記のとおり。

「事件の経緯はいろいろと類推され、インサイダー取引や詐欺、消費者保護問題などが叫ばれてはいるが、すべてはYouTube動画のネタであったと見るのが一番正しい見方だとボクは思う。『誰が一番、VALUで稼げるのか?』という、自身の影響力を活かした壮大な動画ネタに臨んだのだ。ネタ的にも金額が大きければその影響度が高くなることは織り込み済みだ。そこに株式のセオリーも何もなかった」

出典:だれが『VALU』を殺すのか?

本人の謝罪動画によると、指摘どおりの、インサイダー取引や詐欺というよりも、YouTube動画の企画ネタであったと読み取ることができた。

チマチマした企画では面白くない

YouTubeで稼いだカネをつぎこんで、派手に遊ぶという芸風は、YouTubeの企業側からすると社会倫理上好ましくないという点においては、利用規約違反に近いのかもしれない。しかし、むしろYouTube側の「好きなことで、生きていく」のブランドコンセプトを標榜する生き方としては逸材だったのだろう。YouTube側の利用規約はあくまでも胴元であるYouTubeの判断でいかようにでもなる。そして、彼らはVALUでお互いに、誰が一番になるかを競いあう動画から、一気に、「チマチマした企画ではYouTube的に面白くない。全員で売りだし、まとまった金額をYouTubeで使えば盛り上がるだろう」というインパクト狙いへの路線へと変更したと言う。

動画の中で、「VALU」も「VAZの関係者」も関与していた…とあったが、そこは訴訟対策でしかないだろう。

おそらく「VALU」は、誰が一番になるかという企画であれば賛同さえすれど、全員が同時に売り出すことに関しては、絶対に結果が見えているから事前相談があれば必ずストップをかけたはずだ。VALU側はYouTuberの「VALU」に対しての表現力に期待したところだったがまさかの対応だったことだろう…。ある意味、VALUの敷居を広げる為のYouTuberという表現者の登場は諸刃の刃だったようだ。

(※追記)VALU社はこの件について、コメントしている

「VALUがヒカル氏らまたはVAZ社に対して企画を持ち込んだ」という事実があったかのように誤解され得る発言がありましたが、そのような事実はありません。また、ヒカル氏らによる大量売却について当社は一切関知および関与しておりません。

VAZ社側から当社に対して「VALUに人気YouTuberをアサインできないか」と事前に相談があり、当社がVAZ社の関係者に対してVALUの仕組みを説明したことや、優待の内容について議論したことは事実ですが、ヒカル氏らによる大量売却その他の投稿内容やTwitter上での発言等について当社は関知および関与しておりません。

なお、当社は、VAZ社の関係者としか連絡を取っておらず、ヒカル氏らと直接やり取りをしたことはありません。したがいまして、ヒカル氏らが当社とVAZ社の関係者とのやり取りをどのように認識していたかは当社には関知し得ません。

出典:ヒカル氏の動画における当社への不適切な言及について

 彼らが犯したイタズラ企画は、完全に無知といえどもVALUにおいては、多大な損害へと発展している。いや、それができてしまったというユルさは、世知辛くせざるを得なくなり、ルールも改定となった。それでなくとも、胡散臭いというレッテルの中でのスタートから、徐々にビットコインやブロックチェーン、評価経済への理解が促進され、なおかつ新たな個人サービスの流動化の可能性が評価されはじめた頃だったから実に残念だ。一気に、ビットコインの「マウントゴックス」のような扱いをVALUは社会的に受け取ることとなった。また、関連市場へも影響を及ぼしている。細かなところでは、筆者への「VALU本」や「セミナー」の仕事にまで影響しているほどだ(泣)。そう、VALU全体の市場価値の目減りは甚大だ。それでなくとも新規参入に対してのモチベーションも落ちている。この北朝鮮騒動の社会情勢の中でビットコインは乱高下しながらもヴァリューを上げているチャンスにもかかわらずだ。本当にこのVALU騒動は大迷惑だったのだ。筆者はVALUの勝手エバンジェリストの1人でもあるからさらにだ。

一方だけの言い分の取材を行う朝日新聞の完全子会社AERA

そして、ヒカル氏らは、騒動を起こしてからは、対企業としての「訴訟」を懸念して、そして、事務所側の対応として、ひたすら沈黙をつらぬく…。しかし、彼らを取り巻く、社会のムードが、彼ら自身へのメンタルへと影響を及ぼしたようだ。当然、この「VALU騒動」を起こした当事者として、イベントなどの営業仕事は、吹っ飛んでしまう。おりしも、VALU騒動が起きた当日に、朝日新聞AERAはこんな記事を掲載していた…

AERAdot.: 5億円ですか。すごいですね。その内訳を教えてください。

ヒカル:広告収益(再生数に応じた報酬)が60%。あとは企業案件が40%です。

最近、依頼が急増しているので、月に4本くらいと決めています。3カ月先まで予定が埋まっているのが現状です。(中略)動画でお金を使うのは僕の個性のひとつです。圧倒的な個性がないといまのYouTube界では生き残っていけません。(中略)嫌われることも個性のひとつだと考えています。大きなことを言って興味を抱かせ、動画に誘導する。嫌いだけど無視できない。そんなYouTuberを目指しています。正直な話、批判されてもまったく怖くない。本音で話して嫌われて、それで評価が下がっても、質の高い動画を投稿し続けていれば必ず再評価されます。嫌われることを恐れて本音を話せなくなるほうが怖い。

出典:カリスマYouTuberヒカルの年収は”自称”5億円 「日本一にふさわしいのはぼく」

さらに、AERAdot.では、ヒカル氏のインタビューを続けた…。

――そもそもVALUで何をしたかったのですか?

目立ちたかったのが本音です。YouTube以外の分野でも活動したい思いがありました。僕と、同じ事務所に所属する禁断ボーイズのいっくん、ラファエルの3人で、「誰がVALUの時価総額や価格のランキングで上位になるか」を競う動画の企画でもありました。

――8月9日のVALU上場、「明日、一気にバリューで動く!」というツイート(同14日)を経て、15日にはVAを売却しました。VAを売ったことで得た利益はいくらですか?

僕個人としては約4千万円。彼ら2人のVAも値上がりしていたので、2人の利益が約1千万円です。

――タイミングを考えると、利益を得るために「売り逃げた」と感じる人も少なくないと思います。「お金をもうけよう」という気持ちはありましたか?

ゼロです。そこははっきりと否定させてください。VALUでお金を稼ごうと考えたことは一度もありません。僕らの知名度を上げるためのツール、動画のネタにしたいという思いしかありませんでした。

――とはいえ、利益が出ると認識されていましたよね。

はい。もし利益が出たら、なんらかの形で視聴者さんに還元したいと考えていました。

出典:人気YouTuberヒカルが懺悔 「甘くみていました」

筆者が、気になるのは、それに対するVALU側への取材を朝日新聞社の完全子会社である「朝日新聞ウィークリー AERA」のウェブが一方的なヒカル氏側の「懺悔」という記事で終わってしまっている点である。今後、訴訟の恐れがあるからこそ、一方だけを取材しているのはなんだか奇妙な取材であると感じた。

この2週間で何が起きたのか…?

この、動画で何度も何度も、頭を下げているが、一体誰に頭を下げているのだろうか?タイトルどおり「いつも応援してくださっている皆様へ」とあるように、応援しているファンだけの為だけでよかったのだろうか?

「詐欺師のレッテルを一生背負う」「胸をはり生きていくことができない」「自分のキャラをつらぬくために煽る発言」「法律問題に発展している為発言しないでほしい…」「このまま偽り続けることに耐えきれなくなる」「嘘の情報に耐えきれない」「事務所の為に背負うのは耐えきれない」「この行動には葛藤がある」

文言を聞いていると、すべて自分たちの自己都合ばかりではないのか?一体、何に謝罪しているんだろうか?

一番、謝罪すべきは、VALUもしくは、VALUのユーザーではなかっただろうか?VALUとは訴訟があるとすると少なくとも、すべてのVALUのユーザーに謝罪すべきである。支援した人、しなかった人も含めてだ。VALUというプラットフォームの価値を毀損したことに対しては何もない。法的措置かもしれないが、この謝罪動画をアップするくらいなら、VALU社に真摯に動画謝罪すれば法的措置も発生しないかもしれないのに…。

まるでSMAP謝罪会見のデジャブ

 自称、年収5億円の収益のうち、40%の広告が吹き飛ぶとすると、2億円程度が吹き飛ぶこととなる。4000万円のしかも全額買い戻し(損切り分は買い戻せない)をしており、しかも、無期限活動休止となると甚大な損害だ。

 なんだか、例えはまったく違うが、NextStageファンの人にとっては、SMAP×SMAPの謝罪会見で見たような、デジャブを感じたのではないだろうか?結局SMAPは、今から考えると解散しないという発言はなかった方が良かったのではとSMAPファンの1人としては思う。そう、この謝罪会見は、なんだか中途半端な釈明と謝罪とVALUの関与説明が入り混じった奇妙な謝罪動画にしかみえない。そう、謝罪すべき時は謝罪だけすべきなのが謝罪会見のセオリーだ。ラファエル氏はマスクで顔を隠しているくらいなら出ないでほしいとさえ思う。

しかし、この2週間、何もアクションが無かったことよりも、これで、かなり前進できたはずだ。できれば、VALU社ではなく、VALUのユーザーに対しての謝罪もぜひお願いしたいものだ。それでないと動画で言っている通りの「保身」だけでしかないのではないだろうか? 惜しむらくは、謝罪している対象をもっと広げてほしかった…。そこだけが本当に残念である。無期限活動休止の判断は社会の空気感や心象で大きく大きく変るのだから…。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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