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朴槿恵前大統領、一審判決へ。引きずり下ろした“ろうそくデモ”をめぐる是非とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

本日4月6日に韓国の前大統領である朴槿恵被告に対する一審の判決公判が行われる。どんな判決が出るか注目されるところだが、大統領の座から引きずり下ろした“ろうそくデモ”が、韓国の小学生の教科書に掲載されるという。

韓国教育部は来年3月から使用される小学校6年生の「社会」の教科書に、朴前大統領を罷免に追い込んだ“ろうそくデモ”の写真を掲載するとの内容を発表した。

新しい教科書には、朴槿恵前大統領を弾劾するために2016年に行われた“ろうそくデモ”の写真を載せ、その下に「韓国で民主主義はどのような過程を経て発展してきたでしょうか?」「市民の政治参与活動が社会の発展のためになぜ重要なのでしょうか?」という主旨の内容を掲載するという。

教育部関係者は韓国メディアに「“ろうそくデモ”は(朴槿恵政権)以前にも行われていたため、政治的なメッセージを連想させない写真を載せた」と話しているが、多くの人は朴前大統領を罷免したときのデモだと感じ取るのは明らかだ。

「ノーベル賞を」という声まで出た“ろうそくデモ”

それほどまでに“ろうそくデモ”は、韓国にとって意義の大きい出来事だったといえる。

当時の様子は日本のテレビでも取り上げられていたが、かつての民主化デモを連想させるような荒々しさや悲壮感はなかった。

ネット上ではデモに参加した美女が話題になったり、文化公演が繰り広げられたりと、まさに国民的なイベントだった。

それどころか、韓国の人気報道番組が「“ろうそくデモ”はノーベル賞を受賞できるか」と真剣に分析していたほどだ。

(参考記事:ノーベル賞を渇望する韓国にまさかの“次の一手”…受賞する可能性はどのくらい?

そんな“ろうそくデモ”が教科書に掲載されるということで、韓国では大きな注目を集めている。

韓国メディアもこぞって報じており、「“ろうそくデモ”が来年、小学6年生の教科書に掲載される」(『マネートゥデイ』)、「小学6年生の教科書に“ろうそくデモ”が載る…パク・ジョンチョル、イ・ハンヨルも登場」(『中央日報』)、「来年小学6年生の社会教科書にろうそくデモ写真が載る模様」(『聨合ニュース』)といった具合だ。

反響も大きく、とある関連記事には8000件を超えるコメントが書き込まれていたほどである。最近、アメリカの教科書に韓国の歴史や文化が掲載されるというニュースもあったが、教科書の話題はやはり注目を集めるようだ。

意外にも慎重な意見が多数?

ただ、韓国市民たちの反応を知りたくてそのコメントに一通り目を通すと、肯定的な意見が多いだろうと思いきや、そうではなかった。

「これはちょっと違うのではないか」「歴史は10年ほど経って判断されるべき」「まだ朴槿恵の罪名や量刑も確定していないのに、独裁者を追い込んだと子供たちに教育するのか?」といった、慎重な意見が目立つのだ。

また、「朴槿恵がやろうとしていた国定教科書に反対していた人が似たようなことをしている」という皮肉もあった。

国定教科書とは、2016年に議論になった新しい歴史教科書のことで、韓国の建国年を「1948年」に確定するなど、反対意見が多数上がった“問題の”教科書だ。

(参考記事:韓国の歴史教科書が「大韓民国樹立」を“1948年”に確定し、大混乱!! 一体何が問題なのか?

主に当時の野党、現在の与党である「共に民主党」などが国定教科書に強く反対し、結果的に白紙となっている。

ベトナムへの遺憾表明は絶賛されたが…

文在寅大統領は先日ベトナムを訪問した際に、ベトナム戦争当時の民間人虐殺に「遺憾の意を表明」して韓国国内では一定の評価は得ていたようだが(特にネット上で)、今回の新しい教科書に関しては一筋縄ではいかないかもしれない。

(参考記事:韓国がベトナムとの“不幸な歴史”に謝罪…ネットではなぜか「安倍よ見習え」の大合唱に

今後は、新しい内容を加えた現場検討本を作成し、内容や分量などを検討・修正していくという。「多様な意見の集約を通じて、質の高い社会教科書を完成させる」というのが教育部関係者の意気込みであるが、果たして……。

反対する意見も少なくないだけに、いずれにしても、今日の一審判決の結果も今後にいろいろと影響を及ぼしそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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