なぜ、日本の平均気温は〇〇度と言えないのか?
日本列島は南北に長く、気温の差が大きいため、日本の平均気温は具体的に気温〇〇度とは言わず、「差」で表す。しかし、全国15か所の気象データでは日本を代表する気温と言えないところも。
「災害級の暑さ」が流行語
今年(2018年)は暑かった。毎年、同じようなセリフを言っているように思うけれども、まさかここまで、が正直な感想です。7月18日の岐阜県を皮切りに、8月23日の新潟県まで、のべ17か所で最高気温が40度を超えました。日本(全国)の月平均気温は3月から10月まで8か月連続で平均基準を上回っています。
そもそも、日本の平均気温は何度なのでしょう?
気象予報士になったばかりのとき、実際の気温が知りたいと思ったことがありました。でも、答えはノーです。
なぜならば、日本の平均気温は1981年から2010年までの30年間を平均基準とした「差」で表すからです。実際の気温を求めずに、なぜ「差」を求めるのか?私も初めはよくわかりませんでした。
理由を考えてみると、
日本列島は南北に長く、また、富士山の山頂と麓で気温が違うように標高によっても気温は大きく違います。
真夏ならば、沖縄と北海道の気温差はあまり気になりません。でも、真冬はどうでしょう。北海道は日中でもマイナス10度以下、一方で沖縄は冬でも25度以上の夏日になることもあります。
たとえば、総務省家計調査の貯蓄現在高をみて、ずいぶんと世の中はお金持ちが多いと感じるのと同じ。格差が大きいものを平均しても、全体像は見えません。
そこで、長期にわたり気象観測が続けられている場所で、都市化などの環境の変化が少ないと思われる全国15か所の気象観測所を選び、その場所の平均気温を求めます。
さらに、基準となる値(1981年から2010年までの30年間)と比べ、「差」を決めるのです。これらをまとめて日本の平均気温(の偏差)とします。
ややこしく思えますが、具体的な気温ではなく、平均基準からの「差」とすることで、寒い場所や暖かい場所、山頂や麓などの環境の違いをなくし、平均的な状態からの違いを浮き彫りにするのです。
しかし、基準となるものが変われば、「差」も変わってしまう。
たとえば、2017年の日本の年平均気温偏差は1981年-2010年平均基準ではプラス0.26度ですが、20世紀を平均基準とするとプラス0.86度です。
また、全国15か所だけで(そこには東京も、大阪も、名古屋も、福岡も、人口の多い大都市は含まれず)、日本の平均的な気温となるのか、疑問もあります。気温は一番身近なものなのに「差」で表現しては実感が伴わない。考えても腑に落ちません。
【参考資料】
気象庁ホームページ:日本の年平均気温
気象庁ホームページ:日本の平均気温の偏差の算出方法
気象庁ホームページ:世界と日本の気温、降水量の経年変化に関して、よくある質問
総務省統計局ホームページ:家計調査(貯蓄・負債編)調査結果