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増える主婦や中高年のアルバイト・パートは喜べるのか

前屋毅フリージャーナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

人手不足といわれるなかでアルバイトやパートの需要は高まっている。そんななか、5月22日付『日本経済新聞』(電子版)は、アルバイトやパートを探している人における「主婦や中高年の割合が高まっている」と報じている。

アルバイトといえば学生のイメージが強いのだが、そこに主婦や中高年の参入が増えているというのだ。特に2014年以降は、60~70代の男性の割合が顕著に増えてきているという。

政府は「1億総活躍」を掲げて「働き方改革」なるものを推し進めている。それに応えて主婦や中高年が労働市場に打って出てきている、と解釈できないこともない。

しかし、やはり無理がある。

主婦や中高年が求めているのは、不安定なアルバイトやパートなのだろうか。仕事をするなら安定した正社員、もしくは正社員に準じる立場で、と考えている人たちは少なくないはずである。働きがいも賃金も、両者には大きな格差がある。

仕事しようにもアルバイトやパートしかないので、仕方なく応募しているのではないだろうか。「働き方改革」というのなら、正社員として働ける環境整備に熱心に取り組むべきである。残念ながら、そういう意欲が政府には感じられない。

もうひとつ気になるのは、主婦や中高年でアルバイトやパートを探している人が増えているということは、「生活が苦しくなってきているのではないか」ということだ。生活のためにアルバイトやパートでも働かざるをえない、といった主婦や中高年が増えてきていることの表れではないだろうか。

『日経』の記事には、アルバイトやパートの時給が「前年同月を26カ月連続で上回った」とも記されている。しかし、4月の平均時給は997円でしかない。とても充分とはいえないはずである。

生活が苦しくなるなかで、やむおえず主婦や中高年はアルバイトやパートでも働こうとしている。それで喜ぶのは、人手不足に頭を抱える経営者ばかりである。それを「働き方改革」であり「1億総活躍」と言うのであれば、疑問を感じないわけにはいかない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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