フランスがベンゼマ不在でも強い理由。エムバペ中心のチームと前回王者が取り戻したスタイル。
エース級の選手が大会前にチームを去った。それでも、依然として強さを誇示している。
フランス代表はカタール・ワールドカップでベスト8進出を果たしている。準々決勝では、イングランドと激突する。
■ベンゼマの離脱
フランスはカタールW杯直前にカリム・ベンゼマが負傷した。代表のスタッフと協議したのち、ベンゼマの離脱が決定した。
ベンゼマは昨シーズン、レアル・マドリーで46試合44得点をマーク。マドリーのチャンピオンズリーグ制覇とリーガエスパニョーラ優勝に大きく貢献して、2022年のバロンドール賞を受賞した。
そのベンゼマを欠き、チームは弱体化すると思われた。だが蓋を開けてみれば開幕から2戦2勝でフランスはベスト16に一番乗りして、決勝トーナメント1回戦ではポーランドを下している。
「ベンゼマに関して、反対の意見は持っていない。でも、彼が代表に復帰して、フランス代表は戦術的にバランスを失った」
「それはUEFAネーションズリーグで見て取れたと思う。なんとか解決することができたけれど、時間が必要なのは明らかだった」
オリヴィエ・ジルーは以前、そのように語っていた。これはベンゼマが悪い、という話ではない。ベンゼマ、またキリアン・エムバペ、アントワーヌ・グリーズマンといった選手を共存させるのが難しかったという話だ。
■前回王者のスタイル
ベンゼマがいなくなった。ただ、それは逆説的にフランスに戦術的なバランスをもたらした。
フランスは2018年のロシアW杯で優勝を達成した。ディディエ・デシャン監督は【4−2−3−1】を基本布陣としていた。CB型の選手を最終ラインに4人並べて、強固なチームを作り上げた。トップ下にグリーズマン、右にエムバペ、CFにジルーを据え、堅守速攻のスタイルで世界に頂点まで駆け抜けた。
中盤では、エンゴロ・カンテとポール・ポグバが躍動した。左のブレイス・マテュイディまで下がり、この3人がボール奪取のタスクを遂行した。それぞれが役割を全うした末に、フランスの勝利があった。
〈フランスの布陣〉
今大会のフランスは、その形に近いシステムとスタイルでプレーしている。
CFにジルー、左にエムバペ、右にウスマン・デンベレ、中盤にはアドリアン・ラビオ、グリーズマン、オウリエン・チュアメニ、最終ラインにリュカ・エルナンデス、ダヨト・ウパメカノ、ラファエル・ヴァラン、ジュール・クンデが入り、GKにウーゴ・ロリスというのがフランスのスタメンだ。
攻撃の時には、右インサイドハーフのグリーズマンがトップ下の位置にズレてくる。ラビオとチュアメニがダブルボランチになり、【4−3−3】から可変式の【4−2−3−1】が形成される。そう、ロシアW杯の時と同じ形だ。
決定力を発揮するのはエムバペだ。前線でジルーが起点となりながら、そこにグリーズマンからボールが供給される。均衡のとれ始めたチームの完成度は、ここにきて高まってきている。
「我々は1週間ほど早くワールドカップに向けた合宿に入ることができた。それは大きなアドバンテージだった。選手たちに暇な時間を与えなかったからね。インテリジェントな選手が揃っている時に、物事はうまく回り始める」とはデシャン監督の言葉だ。
過去、W杯で連覇を達成したのはブラジルとイタリアのみだ。フランスが目標を果たすため、強かに邁進している。