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タイガース 安芸キャンプの推しメン・小豆畑捕手「目指すは第二の小田幸平!」

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
昨年中盤から打撃力がアップ、この安芸キャンプの推しメンと言われる小豆畑選手。

安芸キャンプでは2年目の横田選手、5年目の一二三選手、そしてルーキーの横山投手、守屋選手、植田選手らの名前が、よく記事に登場しています。そんな中で決して派手ではありませんが、3年目の小豆畑眞也捕手(26)のバッティングも目を引きました。最初の3日間しか見ていないものの、昨年中盤以降に増えてきた“いい当たり”を継続しているようです。

昨シーズンは5月まで1割台だった打率が、6月18日のファーム交流試合・楽天戦(鳴尾浜)で4打数2安打して2割を超え、7月には.294まで上昇!最終的には52打席と少なめながら、45打数12安打で.267の打率を残しました。フェニックスリーグは全17試合中12試合に出場、うち9試合がフルでマスクをかぶって36打数9安打2打点の打率.250。最後は4試合連続のフルマスクと、これは自信と成長をもたらしたことでしょう。

ブルペンにて。投げ終わったルーキー守屋投手(左)と話をする小豆畑選手。
ブルペンにて。投げ終わったルーキー守屋投手(左)と話をする小豆畑選手。

「形を捨てたら形がよくなった」

昨年、何か大きな変化があったのかと尋ねたら「意識を変えました」と小豆畑選手は言います。安芸キャンプ3日目の練習後に聞いてみると「今まで、とにかく強く振ろうとしていた。飛ばそうとは思わないけど、強く振っていい打球を打ちたくて。でも体を意識して、体を使って、バットという道具を使うことを意識したんです」とのこと。

去年のシーズン中にそういう意識改革が自分の中であったと?「芯に当てれば勝ち。そのため、がむしゃらに振るのではなくタイミングなんですよね。タイミングの取り方だったり、股関節への体重の乗せ方だったり、そこへ乗せたのをしっかり移動できるかどうか。そんなことを割とシンプルに1点だけ集中してやったら、他の部分がよくなってきました」

なるほど、あれもこれもじゃなく1つがクリアできたら、自然と他もよくなってきたというわけですか。すべてはつながっているという証明でしょうね。「フォームで打つんじゃない、タイミングで打つんだと。僕は何でもかんでも形から入るタイプなんで。追い求めていたものが形だったけど、違うと意識したら形がよくなった」…なんだか哲学めいてきましたよ。

ロングティー中の小豆畑選手。
ロングティー中の小豆畑選手。

きっかけは何だった?「1年目は試合に出してもらえたけど、2年目は激減してしまった。先発で出ても打てないと代えられる。例えば2打席あったらヒット1本、つまり5割打たないと交代させられてしまう。1発で勝負するにはどうすればいいのか?と真剣に考えました。出場機会が減ったことで逆によかったのかもしれません」

それはいつ頃?「去年の夏くらいから、これじゃないかなと感じることがあって」。目を見張るようなヒットが出始めた時期ですね。フェニックスリーグも好調でした。ちゃんと年末年始もキープしてきたのは「オフもずっと、この練習をしていました。ここで逃したらおしまい。ことし最後になるという思いで」だそうです。そして「キャンプに入っても継続できています。というか上がってきていると思う」と手応えありの表情です。

八木コーチ「小豆畑は一番練習した」

八木打撃コーチによれば、小豆畑選手は今キャンプの“推しメン”だそうです。いいバッティングしていますね。「もう既に去年から打っていたでしょう?」。確かに昨シーズンの途中から、あれ?という感じがありました。本人は意識を変えたと。「その理由の1つは練習。あいつは一生懸命、練習したよ。鳴尾浜で一番打ってたなあ、小豆畑が。数打てば(意識が)そうなってくる」

このキャンプでも維持できていますね?「キャンプでも現段階、フリーバッティングの段階で良くなってきたなあと思うよ。試合はまだこれからだけど、練習の段階で良くなってこないと確率は上がらない。去年も打席が少ないわりに、よく打ったんでね。本人は年齢的なこともあるし、ほんと一生懸命やっていますよ」。

また、フェニックスリーグや秋季キャンプに続き、この安芸でもマンツーマンでキャッチング、スローイングの練習をしている吉田バッテリーコーチにも聞いてみました。「頑張ってるねえ!いいでしょう?八木コーチのイチオシだから。あ、いやキャッチャーとしての話で…。「それはまだまだ。時々、ポロッとやるしね(笑)。でもよくなってきたかな」。さすがに家族よりも2人でいる時間が長いだけあって、優しくて厳しいお父さんみたいです。

吉田コーチ(右)と捕球練習。この2ショットは安芸でも鳴尾浜でもおなじみです。
吉田コーチ(右)と捕球練習。この2ショットは安芸でも鳴尾浜でもおなじみです。

小豆畑選手も「キャッチャーはまだまだです」と即答でした。「キャッチャーは完成がないポジションなので。引退した時が完成形なのかもしれません。僕はことしで終わるかもしれない。ちゃんとやっておかないと損ですよね。後悔なく終われるようにと。いま取り組んでいることが『まだまだこれからだったのに』と思って終わるんじゃなく、『これで結果が出なかったら仕方がないな』と言えるくらいまでやって終われるのが理想」

息の長い選手になりたい!

まだ3年目ですが社会人から入って今年27歳という年齢も踏まえてか、最後、終わりと何度も口にする小豆畑選手。でもそれを乗り越えて、ずっと続けていくことが本当の目標。「第二の小田幸平を目指します!小田さんのように長く野球をやりたい」

ことしのお正月のこと。「いっぱい考えました。結婚したというのもありますね。嫁が言ったんですよ。『野球の話をしている時が一番楽しそうだから、それをできるだけ長く続けてほしい』って。たまにはエエこと言うなあ」なんて失礼なこと言っていましたよ、奥さん(笑)。でも結婚して期する思いがあったはず。長い野球人生を締めくくる時に、これが大きな分岐点だったと話せる日がきますよ。きっと。

「スタープレーヤーを目指してはいません。僕が古田さんになれるわけじゃないので。新聞の1面でなく、3面でいい」。それでふと思い出しました!ルーキーイヤーだった2013年は沖縄キャンプに召集された小豆畑選手。おなじみ新人選手の初休日で藤浪投手と2人、露天風呂に入っていたんですよねえ。仲良く背中を流したり、お湯をかけたりするセミヌードのツーショットが、バーンと1面に出ていましたっけ。あ、すみません。まじめな話をしているのに。

安芸キャンプ初日のセレモニー後。ことしは表情がとても明るく、動きも軽いですね。
安芸キャンプ初日のセレモニー後。ことしは表情がとても明るく、動きも軽いですね。

去年の安芸キャンプは、初実戦となる練習試合直前にベースランニングで右太ももを痛めてしまいましたが、ことしは何が何でも11日の練習試合(西武戦、安芸)に先発マスクをかぶりたいでしょう。最後に小豆畑選手からのメッセージをどうぞ。

「そこにいるときは何とも思われず、気づかれなくても構わないんです。ただ、おらんと困る人になりたい。玄人好みのキャッチャー目指して、きょうも小豆畑は汗をかいています!」

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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