丹羽政彦監督は「大声で頭痛」? 明治大学、21季ぶり優勝へ。【ラグビー旬な一問一答】
ラグビーの大学選手権は1月2日、東京・秩父宮ラグビー場で準決勝があり、過去12度の優勝を誇る明治大学が大東文化大学を43-21で制して19季ぶりに決勝進出。1996年度以来の大学日本一を目指す。
明治大学は前半こそ相手の強力なスクラムに苦しむなどして7-14とリードされるも、後半は接点へのサポートを密にして攻撃時間を確保。ウイングの山村知也が相手と間合いを取ってパスをもらえるようになり、2トライを奪うなど走り回った。終盤は足の止まった大東文化大学を向こうに、走り勝った。
試合後、就任5年目の丹羽政彦監督と古川満キャプテンが会見した。指揮官はある事情から苦悶の表情。普段以上に古川が話す出番が増えたが、試合の様子や次戦への意気込みについて細かく語った。試合をご覧になった方にとっては、以下の談話をより興味深く読めそうだ。
7日には、同会場で8連覇中の帝京大とぶつかる。
以下、共同会見中の一問一答の一部。
丹羽監督
「お疲れさまでした。試合中にたくさん叫び過ぎて血圧が上がって頭が痛く、あまりうまく話せませんが…。大東文化大学さんはすごくいいチームで、前半は(スクラムなどで)フォワードが頑張ってくれた。後半、40分間、しっかりアタックしようということで臨みました。ディフェンスでも前に出られた。そうして、最終的には突き放せた。前回の京都産業大学さんとの試合、今回の試合を通し、フォワードはまた強くなったと思います。次はどこが相手になるかわかりませんが(会見中に始まった2試合目で帝京大学の決勝進出が決定)、しっかりと準備して臨みたいと思います。
…えー、喋っていても頭が痛いので、質問はほとんど古川君にするようにしていただいて、私の話は少なめでお願いします(一同、笑う)。以上です」
古川
「今日は、フォワードはスクラムに重きを置いて、ディフェンスではダブルタックルで相手の外国人選手に前に出させないようしようと臨みました。
スクラムでは、大東文化大学さんの1番(左プロップの古畑翔)の部分でうちがうまく組めず…。自分たちとしてはヒット(最初のぶつかり合い)で勝っていて、そうであれば落とすはずがないのですが(故意に)落としていると見られていた。その最初の印象が試合を通して続いてしまって、そこでペナルティーを取られるシーンも多かった。試合の入りの部分で、スクラムを早く修正しないとレフリーの印象は変えられないと勉強した。修正力にこだわっていけたらと思います。以上です」
――いまお話になられていたペナルティーマネージメントの領域について、さらに詳しく語ってください。
古川
「スクラムでは祝原涼介(右プロップ。古畑と対面)が主にレフリーの方とコミュニケーションを取っていました。
大東文化大学さんのスクラムが僕らの頭をかち上げてくるものだったので、僕らは付き合わずに低く組んで我慢しようと練習してきていました。その部分は上手くいっていたのですが、スクラムが崩れた時にこちらの『2、3番(中央のフッカーと右プロップ)』の頭が落ちていると見られてしまっていました。そこはもっと改善したいと思っています」
――攻撃時のサポート役の質、後半に入ってから上がったような。
古川
「試合を通して、『2人目の選手は(ゴールラインに対して)90度に入る』という意識を持っていたのですが、前半に比べて後半の方が大東文化大学さんの足が止まっていたことでボールキャリーが前に出られていた。その意味では、ブレイクダウン(接点)自体の難易度は後半の方が低かったと感じていて。後半にボールキャリーがゲインできたのは前半から身体を当てていたからだと思うんですが、もっと相手が元気なうちから自分たちのいいアタックのためのブレイクダウンにこだわらないといけないと思っています」
――次戦で「いいアタックのためのブレイクダウン」を作るには、何が必要ですか。
「もっとキャリアの部分にこだわっていかないといけない。外国人選手は(準決勝第2試合を戦う)東海大学さんにも帝京大学さんにもいらっしゃいますけど、彼らにはボールへ絡む速度や強さがある。(ボールに)絡まれてからヨーイドンでブレイクダウンを始めても厳しいので、ファーストボールキャリーの精度にこだわりたいと思います」
――走り勝った要因は。
古川
「フォワード、バックスが明治大学のやりたいことを統一してできたのが差になったと思います。
自分たちとしては、もっとタイトなワントライ、ワンゴール差のゲームになると話して臨んでいました。そのなかで相手がミスしてくれたところ、梶村(祐介副キャプテン)の個人技などでスコアができた。だから、自分たちの形以外のことで点を取ったと自覚していて、点差ほど気は抜けておらず、当初想定していた通りの精神状態で試合ができたのかなと思います」
――明治大学の伝統的なシンボルであるスクラムを押されていた。それでも気落ちしなかったようだ。
古川
「スクラムで後手に回ってしまう部分もあったのですけど、僕たちとしてはスクラムにも、フィールドのブレイクダウンにもこだわっていました。すべての部分でタイトなゲームで通用するスキルを身に付けてきました。確かにスクラムは明治大学の象徴ですけど、僕たちはそこだけじゃない。やってきたことをやるというのが、僕らの強み。それは僕も試合中に言いましたし、皆もわかっていた。そうして落ち着いて80分間プレーできたのかなと思います」
――監督、大丈夫ですか。
丹羽監督
「…大丈夫です。ハハハハ!」
――19シーズンぶりにファイナリストになりましたが。
丹羽監督
「北島忠治先生が亡くなってから21年間も勝っていなくて、決勝も19年ぶり。正月を越したのも在任5シーズン中2回目です。もうひとつ上に行くというのは、明治大学にとっても大事なことでした。学生たちに1年間言ってきたのは、『明治大学には先人が作り上げた歴史しかない。こっからだ』。そして92人の部員が高いスタンダードで練習していることが、東海大学さんと(控え主体で)試合をした時にもわかりました。出られない選手も努力をしていることが、この結果に繋がっています。帝京大学さんも東海大学さんも、明治大学を成長させていただいたチーム。どちらが来てもチャレンジして、チャンピオンになりたいと思っています」
北島元監督の唱えた「前へ」を伝統的な部是とする明治大学が久々のファイナリストとなった。帝京大学とは秋の対戦時に14―41と敗戦。目下、差を埋める旅をしている。ポイントは古川が語った「ファーストボールキャリー」の精度と「2人目が90度に」の徹底か。攻撃時間の確保で、帝京大学が掴むチャンスの分量を最小化したい。