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「平和の祭典」の五輪が終われば、米韓合同軍事演習が始まる!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
米韓連合軍の上陸訓練

世界の耳目が集まっている平和の祭典、リオ五輪も残り3日。五輪が終われば、朝鮮半島では米韓による夏恒例の合同軍事演習(UFG)が始まる。

軍事演習は例年ならば8月の第三週の18~20日に実施されるのだが、今年は五輪期間中ということもあって回避され、閉幕(21日)後の22日からスタートする。

五輪開幕直前までノドン2発を連射していた北朝鮮も五輪期間中は軍事行動を控えている。しかし、米韓合同軍事演習が始まれば、また今月25日が「先軍政治の日」にあたることなどからミサイルの再発射が予想される。これにより、しばしの「休戦」を終え、朝鮮半島は再び、対立、対決の状態に戻ることになる。

参考資料: 平和の祭典中は北朝鮮の軍事挑発も「一時休止」

金正恩政権になっての過去4年間の米韓合同軍事演習を検証すると、2012年は8月21―31日、2013年8月19-30日、2014年は8月18日―21日、そして昨年(2015年)は8月17-28日までと2014年を除くと、訓練は10日間以上行われている。しかし、今年は22日―26日までと、2014年並みに期間が短い。

核実験を示唆している北朝鮮を刺激するのは得策でないとの判断か、それとも、短期間の訓練で十分との判断か、定かではないが、演習期間や規模についての正式発表はまだされてない。

演習に参加する米韓両軍の規模は、おそらく例年同様に米軍3万余名と韓国軍5万余名とほとんど変わらないだろう。動員される戦力は、2013年の時は、F―22ステルス戦闘機、B52爆撃機、ステレス戦略爆撃機B-2、イージス駆逐艦「ラッセン」や「フィッツジェラルド」などが参加し、2014年の時は演習前にB-52戦略爆撃機が3基グアムに配備された。今年も、演習を控えすでにグアムにステレス戦略爆撃機B-2やB-1Bが配置されている。

夏の演習も春の演習同様に北朝鮮との全面戦争を想定した訓練が実施される。

2012年の演習では北朝鮮が長距離砲で首都ソウルを集中的に攻撃した場合を想定しての対応演習が行われ、2013年の演習では北朝鮮が奇襲攻撃をかけ、局地戦争に挑んできた場合、強力に対応する訓練が実施された。

2013年のそれは、北朝鮮が武力挑発すれば、韓国軍だけでなく、米軍戦力も報復に加わり、挑発の原点とその支援勢力を撃滅する訓練であった。具体的に北朝鮮が韓国が実効支配している西北諸島を攻撃した場合、北朝鮮の砲兵部隊だけでなく、その周辺の兵站施設や4軍団司令部まで叩く訓練が実施された。

2014年の演習は、北朝鮮の核とミサイルの脅威に対応するための訓練で、ずばり、北朝鮮の核とミサイルをいかに除去、無力化するかの訓練であった。そして、昨年の演習も2014年の演習に基づいた訓練が実施された。

北朝鮮は2012年の時は、金正恩党委委員長が先軍政治の日の「8・25」の慶祝宴会での演説で「我慢にも限界がある。私の命令を受けた人民軍将兵らは無謀な戦争挑発策動に対処し、戦闘陣地で決戦のための最後の突撃命令を待っている」と述べ、全面的な反攻に向けた作戦計画に署名していた。金委員長は米韓軍事演習期間中に最南端の島防御隊と第313大連合部隊指揮部を視察していた。

2013年には国防委員会を通じて「我々の忍耐にも限界があることを肝に銘じておけ」との談話を発表し、戦略ロケット部隊に「1号戦闘勤務体制」を発令した。戦略ロケット部隊はスッカドからノドン、ムスダンを運営する部隊である。

2014年の演習では「我々への奇襲攻撃を画策した戦争練習である」(8月8日付労働新聞)として「共和国に反対する北侵核戦争演習が続くならば、自衛的な対応を取る。その対応にはミサイルの発射や核実験が含まれる」(朝鮮中央通信)と、ミサイル発射や核実験を示唆していた。

そして、昨年も「宣戦布告」だとして「強行すれば、厳重な軍事的報復を招くだろう」と反発していた。軍総参謀部の報道官は「米国と南朝鮮が宣戦布告してきた以上、我々のやり方の最も強力な先制攻撃が任意の時刻に無慈悲に開始される」と警告していた。

(参考資料)朝鮮半島で近々、軍事衝突が起きるか!

それでも過去4年間の北朝鮮の反発をみると、言葉では対決姿勢を鮮明にしていたものの、具体的なアクションは何一つ起こさなかったし、実際に何事も起こらなかった。むしろ、「米朝関係、南北関係を正常化すためにも、また非核化を実現するためにもその一歩として軍事演習を中止してもらいたい」とか、「演習を中止すれば、核実験を中止する」と、核実験と演習中止を交換条件とするなど、交渉の余地を残していた。

しかし、今年は、米韓が応じないことがわかっているせいか、そうした条件を一切提示していない。

合同軍事演習の期間が短縮されたことで反発を弱めるのか、それとも、B-2など米戦略爆撃機のグアム配備に「傍観しない」(8月17日の外務省報道官談話)と「予告」しているように5度目の核実験に踏み切るのか、9月9日の建国記念日まで北朝鮮の動向に目が離せない。

(参考資料)北朝鮮は5度目の核実験に踏み切るか!

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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