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北朝鮮は5度目の核実験に踏み切るか!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
米本土を核攻撃する北朝鮮の宣伝映像

咸鏡北道吉州郡豊渓里にある核実験場で多数の車両や人の動きが活発なこと、地震波探知などの計測装備が設置されたこと、韓国国防部が「(北は)いつでもできる核実験が行える状態にある」と警戒していることから北朝鮮による5度目の核実験が現実味を帯び始めている。

金正恩委員長が3月15日に核弾頭ミサイルの大気圏再突入の模擬実験を視察した際「核攻撃能力の信頼性をさらに高めるため、早い時期に核弾頭の爆発実験を断行せよ」と指示していたことから5度目の核実験は時間の問題とされていた。しかし、これまで可能性を示唆しながら、実際には見送ったケースが過去に3度々あった。

1度目は2010年10月から11月にかけてで、オバマ大統領の訪韓(11月10日)に合わせ動きがあった。また、2012年にも4月から5月にかけて同様の動きを示したことがあったが、いずれもその年には実行しなかった。また、2014年春にも核実験を示唆していたが、これもアドバルーン、デモンストレーションで終わっていた。しかし、その一方で、陽動作戦を駆使し、核実験を強行した例もある。

北朝鮮は3度目の核実験の時、直前に「米国などは3回目の核実験と早合点し、実行すれば先制攻撃すると騒いでいる」との談話を発表し、西側の「核騒動」を一笑しておきながら4日後(2013年2月12日)に核ボタンを押していた。

北朝鮮が5度目の核実験を強行するのか、あるいは来月に始まる米韓合同軍事演習を牽制するための心理作戦の一環なのか、見極めが付きにくいが、直近の2度の核実験を前例に例えるなら、それなりの「予告」があってしかるべきだ。

1度目(2006年10月9日)は10月3日に声明を出して核実験計画を発表していた。2度目(2009年5月25日)も4月29日にスポークスマン声明で「核実験と大陸間弾道ミサイル発射実験を含む自衛的措置を講じる」と発表していた。3度目(2013年2月12日)の時も、40日前に国防委員会の声明(1月23日)で「高い水準の核実験を行う」と示唆していた。

今年1月6日の「水素爆弾」称される4度目も金第一書記が前年の12月9日に平壌市の平川革命事績地を視察した際「今日、我が祖国は国の主権と民族の尊厳を固く守る自衛の核弾、水素弾(水素爆弾)の巨大な爆音を轟かせることのできる強大な核保有国になり得た」と水素爆弾について言及していた。

韓国が高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の配備を決定した2日後の7月11日、北朝鮮は総参謀部砲兵局の名で「制圧するための物理的対応措置を取る」と示唆していたが、この声明を核実験の示唆とみなせるかどうか、判断が分かれるところだ。と言うのも総参謀部砲兵局は核実験の担当部署ではないからだ。従って、核実験を強行するなら、直前にそれなりの「予告」があるのではないだろうか。

仮に核実験に踏み切るとすれば、その時期はいつになるのか?

最短で7月27日の朝鮮戦争休戦記念日前が考えられる。北朝鮮は7月27日を休戦記念日でなく、戦勝記念日と定めている。朝鮮戦争が勃発した6月25日から7月27日までを反米月間と定めている。従って、7月27日は反米キャンペーンの最終日にあたる。その締めくくりとして、人民軍の士気高揚のため核ボタンを押すかもしれない。

ちなみに過去4度の核実験はいずれも、月曜から水曜日にかけて行われている。

1度目(2006年10月9日)と2度目は(2009年5月25日)月曜日に、3度目(2013年2月12日)は火曜日、そして4度目(2016年1月6日)は水曜日だった。いずれも午前10-12時(日本時間12時半)の間に行われている。

今月が見送られるなら、米韓合同軍事演習(フリードムバンガード=UFG)が行われる来月(8月)ということになる。恒例では、夏の米韓合同軍事演習は8月中旬から10日間程度行われる。昨年は8月17-28日まで行われていたので、核実験はその前後の可能性が大だ。

今回の核実験が、水爆の再実験なのか、新たに開発したウラン型爆弾の実験なのか、それとも、小型化された核弾頭の爆発実験になるのかも注目ポイントだ。

金委員長の「核攻撃能力の信頼性をさらに高めるため、早い時期に核弾頭の爆発実験を断行せよ」の指示に従えば、核弾頭の爆発実験の可能性が最も高い。しかし、水爆実験の可能性も捨てきれない。前回(1月6日)の「水爆実験」は北朝鮮が自ら認めているように「試験的用水素爆弾の試験」でまだ完成しておらず、未完のままだ。従って、再度の水爆実験もあり得る。

核のボタンを押すのか、押さないのか、当事者である北朝鮮以外は誰にもわからない。明白なことは、金委員長がボタンを押せば、朝鮮半島情勢は後戻りができない重大な局面を迎えるということだ。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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