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ヤンキースに解雇された元MVPがマイナーリーグ契約で新天地へ。今年の10本塁打は10.6打数に1本

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョシュ・ドーナルソン Jul 8, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月31日、ミルウォーキー・ブルワーズは、三塁手のジョシュ・ドーナルソンとマイナーリーグ契約を交わした。

 この2日前に、ドーナルソンは、ニューヨーク・ヤンキースに解雇された。昨年3月のトレードでミネソタ・ツインズからヤンキースへ移ってからは、不振が続いていた。昨シーズンは、打率.222と出塁率.308、15本塁打、OPS.682。今シーズンは、打率.142と出塁率.225、10本塁打、OPS.659だ。

 その前の7シーズンとも、ドーナルソンのOPSは.800を下回ったことがなかった。2015~17年と2019年の4シーズンはOPS.900以上を記録し、2015年はMVPに選ばれた。

 スタッツの急降下と37歳の年齢からすると、ヤンキースの解雇は理解しやすい。一方、ブルワーズがドーナルソンを迎え入れたのも、実績だけが理由ではないと思われる。

 ドーナルソンは、2015年の41本塁打を筆頭に、シーズン30本塁打以上を4度記録している。直近は、2019年の37本だ。そのパワーは、今もまだ失われていない可能性もある。

 今シーズンは、故障に見舞われ、33試合しか出場していない。106打数で10本塁打なので、1本当たりの打数は10.6だ。この数値は、サンプル数こそまったく違うものの、これまでの自己ベスト、2017年の12.6打数/本(33本塁打)を凌ぐ。

 また、今シーズン、二桁のホームランを打っている200人強のなかで、ドーナルソンを上回る数値の選手は、9.6打数/本(29本塁打)のアーロン・ジャッジ(ヤンキース)しかいない。ちなみに、ジャッジとドーナルソンに次ぐのは、11.1打数/本(44本塁打)の大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)だ。

 ブルワーズでは、オールスター・ブレイク後、ルーキーのアンドルー・モナステリオが三塁を守っている。ここまでは、65試合で打率.256と出塁率.335、3本塁打、OPS.685。今月の25試合は、打率.211と出塁率.290、2本塁打、OPS.590だ。もともと、モナステリオは、パワーのある打者ではない。マイナーリーグ時代に、二桁のホームランを打ったシーズンは皆無だ。

 どのタイミングなのかはわからないが、ブルワーズは、ドーナルソンをAAAからメジャーリーグへ昇格させるのではないだろうか。8月が終わる前に契約を交わしたので、ポストシーズンのロースターに入れることもできる。ブルワーズは、シカゴ・カブスと3ゲーム差の地区首位に立っている。

 ドーナルソンは、「ブリンガー・オブ・レイン」というニックネームを持つ。雨をもたらす者、といったところだ。そのバットにより、恵みの雨ならぬ得点を、ブルワーズにもたらすかもしれない。本数は少なくても、ポストシーズン進出をめざすレギュラーシーズン終盤、あるいはポストシーズンにおいては、いつも以上に貴重なホームランとなり得る。

 なお、ドーナルソンと同じ日に、ブルワーズは、外野手のグレッグ・アレンともマイナーリーグ契約を交わした。アレンも、ヤンキースでプレーしていた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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