話題のコンビニハンバーグを食べ比べてみた。そしてコンビニPBの今後は?
ファミリーマートの刺激的な新聞の比較広告が掲載されて話題となっている。業界1位の会社(セブン-イレブン)と「どちらのハンバーグが美味しそう?」では、イメージでは88%が業界1位と答え、試食後の感想ではファミリーマートと答えた人が56%と僅差ではあるが逆転している。
ファミマのチェーン名を冠したPB商品が“ファミマル”とブランド一新となり、既に売場で展開されている660品が順次入れ替わっていき、おむすびや弁当など中食商品含む計約880品がファミマル"ブランドとして生まれ変わる。
そのリニューアル販促の象徴商品に選ばれているのが、国民食であるハンバーグで、"鉄板焼きハンバーグ"となる。セブン-イレブンが2010年に高級PB路線の先駆けの金のシリーズである"金の直火焼きハンバーグ"にぶつけたカタチとなる。
早速、ローソンの"肉厚!ビーフハンバーグ"の3品も含め家族で食べ比べてみた。
いつも同じ食卓を囲むか家族での食べ比べなので感想は同じになりがちなのはやむをえないが、ファミマは柔らかく、セブンは肉肉しく、ローソンはソースのコクのこだわり、というのが大枠の感想となった。食べ比べしたら多くの人が同様になるのではと思われる。しかしながら食は嗜好性の商品のため美味しく感じるなどの評価は人それぞれで、我が家での比較の結果は新聞広告とは必ずも一致しなかった。
詳細の比較は専門では無いので今後の美食の専門家の方の項目別の評価に任せるとして、コンビニの圧倒的な販売力と今までの開発の歴史もあり、メーカーとの共同マーチャンダイジングによるハンバーグは(ファミマは丸大食品、セブンは日本ハム、ローソンはマルハニチロ:製造は滝沢ハム)各社ともコストパフォーマンスの良い大変美味しいハンバーグとなっているのは間違いない。
小売業のPB商品は、20年以上前までは"安かろう、悪かろう"の模倣品も多かったが、大手メーカーがPB開発に本格的に参入してからは、味や品質とも大幅に改善され、適正価格の高品質商品となり、特にコンビニにおいては緊急購買から日常の買い場に移行していくのに大きな役割も果たした。
中食だけでは無く加工食品や日用品など幅広いカテゴリーのPB化も進んでいる。ポテトチップはカルビー、ポップコーンはジャパンフリトレー、ペットボトルのお茶は伊藤園、カップラーメンは日清食品やサンヨー食品など、複数のコンビニのPBを生産するメーカーが多数となっていて、同じ工場で違うコンビニのPBが製造されている場合も多々あるのが現状だ。
特にチェーン名を冠したPB商品は、コンビニ各チェーンとも白っぽいパッケージなのもあり、差別化商品というより直近では品揃えとして最低限必要な同質化の商品ともなっている。
一方、大手コンビニ3社は1万5000店以上の店舗網があり商品の効率的な経済ロット数に見合う販売力があるため、様々なカテゴリーのPB商品開発が多頻度で可能である。例えばドラッグストアはトップチェーンでもウエルシアの3055店舗(2021年1月)と、ほとんどが2000店舗以下の店舗網しか無いため、販売力を考えるとPB商品開発にも慎重にならざるをえない。圧倒的な販売力のあるドン・キホーテやコストコと大手コンビニ3社の計5社は、PB商品の開発のアドバンテージを持っているとも言える。
近頃、コンビニでは日用品のPB商品でヒット商品も出始めている。
ファミリーマートが親会社の伊藤忠商事の祖業である衣料品カテゴリーで、"コンビニエンスウェア"というブランドを立ち上げ、高品質で低価格のため、お客さまに支持されている。特にソックスはSNSでの若者からのトレンド拡散やキムタクがテレビで着用告白するなどの効果で幅広い客層から人気となり、今までのコンビニの衣料品は緊急購買での下着の販売が主だったが、アウターの外着ともなるソックスや黒いTシャツなど新しいカテゴリーの開拓にも成功している。
ローソンでは、私も商品開発を少しお手伝いさせて頂いたが、(株)トップスがローソンのバイヤーと協業で個包装の入浴料を発売し、PB商品では無く先行販売ではあるが、バスクリンのきき湯の約2倍の売価にもかかわらず、発売初週できき湯の販売数を既に超えて売上NO.1商品となっている。
その"行ったつもりの入浴料世界の旅気分"は、ハワイ・タヒチ・フィンランド・台湾の各4種でABCテレビの「朝だ!生です旅サラダ」と組み、
パッケージ裏のQRコードを読み込むと旅サラダ厳選のそれぞれの対象エリアの絶景動画を風呂で見る事が出来、まさにコロナ禍の時代に即したところが人気の理由となっている。
今後、コンビニが日常使いの店に変化していく中、中食だけで無く日用品などまでカテゴリーの範囲を広げて、面白いPB商品の開発が進んでいきそうだ。
TVCMやネット広告などの販促は短期的な業績アップする施策として売上アップに即効性がある。コンビニはコロナ禍でビジネスや繁華街立地の店舗の売上が緊急事態宣言明けで回復しつつあるものの厳しい状況なため、まさにファミマの大量販促はタイミングとして適切だと考えられる。但し販促には大きなコストがかかるため、長中期的に販促の結果が求められ、継続的に固定客を獲得出来る販促になっているかどうかの本当の意味での結果が出ているのは1年後となりそうだ。
コンビニは利益率11%と低利益のタバコの販売構成比が全売上の約4分の1前後となっているため、メーカーブランドのNB商品よりも利益率が10〜20%以上高い、PB商品の開発が今のコンビニのスタイルやサービスを維持するためにますます重要になっていきそうだ。
コンビニではクリエィティブ思考で商品開発出来る商品開発者の有無がこれからコンビニが生き残っていくためのキーポイントとなりそうだ。