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防災グッズにもコロナ禍の影響?最新の防災意識とは【#コロナとどう暮らす

山本久美子住宅ジャーナリスト
67%が用意している非常用持ち出し袋の中身にも変化?(写真:アフロ)

9月1日は防災の日。1923年9月1日に発生し、10万人以上の死者・行方不明者を出した「関東大震災」に由来しています。例年この日に向けて、各社が防災関連の調査を実施します。コロナ禍で、2020年の最新の調査結果には興味深い結果も見られました。詳しく見ていきましょう。

四国地方では地震、中国地方では豪雨、北海道では感染症に高い不安

まず、SBIいきいき少額短期保険・SBIリスタ少額短期保険の「“地震・防災”に関するアンケート調査」を見ていきます。「現在、不安に感じている災害」について聞くと、「地震・津波」(62.3%)が最も多い回答でしたが、「豪雨・洪水、がけ崩れ、地滑り、土石流」(42.8%)が前年より大きく増加しました。近年の甚大な水害などによる影響と思われます。

不安に感じている災害ですが、地域別に見ると違いが大きいことが分かります。「暴風、竜巻」や「大規模な火災」は地域別にそれほど大きな差がないのに対して、「地震・津波」や「豪雨・洪水等」では、突出して高い(赤丸は全国平均より20%以上高い項目)地域があります。

出典:SBIいきいき少短・SBIリスタ少短「“地震・防災”に関するアンケート調査」
出典:SBIいきいき少短・SBIリスタ少短「“地震・防災”に関するアンケート調査」

「地震・津波」で四国地方が高いのは、「南海地震」の発生が懸念されているからでしょう。首都直下地震が懸念される関東地方、東海地震が懸念される静岡県、愛知県を含む中部地方でも高くなっています。また、「豪雨・洪水等」で中国地方が高いのは、2018年7月の豪雨災害の記憶があるからでしょう。調査時期は7月1日~3日ですが、時期が異なれば九州地方ではもっと高い数値になったかもしれません。

興味深いのは「感染症」で、北海道が高いことです。北海道では比較的早い段階で「第1波」に、4月中旬~5月下旬に「第2波」にと、2つの感染拡大に見舞われたことが影響していると考えられます。

防災対策をしているのは半数以下、生活の延長上の対策が多い

次に、セコムの「防災に関する意識調査」を見ていきましょう。「防災対策をしているか」を聞くと、「対策をしている」が45.2%、「対策をしていない」が54.8%で、防災対策をしている人は半数に届きませんでした。それでも、対策をしている人は2018年(36.2%)、2019年(44.0%)と、年々増加する傾向にあります。

では、どういった防災対策をしているのでしょうか?

<Q 具体的にどのような防災対策をしていますか?>

・1位 非常持ち出し袋の用意 66.8%

・2位 一定量の食料・生活用品の日常的な備蓄(ローリングストック) 61.9%

・3位 テレビや食器棚等への転倒防止器具の設置 39.8%

・4位 緊急地震速報サービスの登録・利用 35.4%

・5位 自治体等が配信する緊急・防災情報、安全・安心メール等の登録・利用 30.5%

・6位 自宅に住宅用火災警報器や消火器を備える 30.1%

・7位 住宅の耐震補強 21.2%

・8位 災害用伝言板サービスや災害用安否確認、災害用伝言ダイヤルの登録・利用 16.8%

・9位 蓄電池・発電機の導入10.6%

・10位 防災シェルターの導入 1.3%

出典:セコム「防災に関する意識調査」

6割を超える人が実施しているのは、非常用持ち出し袋の用意や食料などの備蓄で、日常生活をおくるうえで対策しやすいことが挙がります。ただし、発災して命が助かった後に必要になるものなので、命が助かるためには「転倒防止器具の設置」や「住宅の耐震補強」を実施する必要があります。転倒防止器具の設置は3位ですが、まだ4割の人しか実施していません。もっと多くの方に実施してほしいと思います。

コロナ禍で防災グッズに変化。新たに追加したものは?

最後に、日本製紙クレシアの「新型コロナウイルス感染拡大以降の防災意識と対策」に関する調査を見ていきましょう。

「現在、災害が起きて避難が必要になった場合、移動時や避難先での新型コロナウイルス感染を不安に感じるか」を聞くと、91%もの人が「不安に感じる」と回答しました。残念ながら、災害自体のリスクに加え、避難先などでの感染リスクにも不安を感じる事態になってしまいました。

そこで、避難先などに持ち込む「防災グッズ」にも変化が見られるようです。「新型コロナウイルス感染拡大以降、防災グッズに除菌・消毒アイテムを新たに追加したか」を聞いたところ、33%の人が「追加した」と回答しました。コロナ禍の防災対策では、「除菌・消毒アイテム」の重要度が今まで以上に高まってきているようです。

出典:日本製紙クレシア「新型コロナウイルス感染拡大以降の防災意識と対策」に関する調査
出典:日本製紙クレシア「新型コロナウイルス感染拡大以降の防災意識と対策」に関する調査

また、家庭における「備蓄・ストック量」も増える傾向が見られます。「新型コロナウイルス感染拡大以降、自宅における備蓄・ストック量が増えたか」を聞くと、25%の人が「増えた」と回答しました。増えたと回答した人に、「家に備蓄・ストックしてあるもののみで生活ができる日数」がどれくらい変わったかを聞くと、次のようにかなり増えたことがわかります。

【飲料・食品】家に備蓄・ストックしてあるもののみで生活ができる日数

・新型コロナウイルス感染拡大前(昨年):平均「約4.7日」

・新型コロナウイルス感染拡大後(現在):平均「約8.7日」

【日用品】家に備蓄・ストックしてあるもののみで生活ができる日数

・新型コロナウイルス感染拡大前(昨年):平均「約15.5日」

・新型コロナウイルス感染拡大後(現在):平均「約25.5日」

不安の強さに加えて、新しい生活様式によって、スーパーなどでのまとめ買いやネット購入などが浸透したことも影響しているのでしょう。

災害は、いつ何が起こるかわかりません。日ごろから災害に備えることが大切です。防災の日は、災害に対する心構えなどをする日です。この日には、お住まいの地域のハザードマップを確認するといった習慣づけをしてはいかがでしょう。

住宅ジャーナリスト

早稲田大学卒業。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナーなどの講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「東洋経済オンライン」「ビジネスジャーナル」などのサイトで連載記事を執筆。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナー等の資格を持つ。江戸文化(歌舞伎・落語・浮世絵)をこよなく愛する。

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