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不倒・永瀬拓矢王座「負けない将棋」で渡辺明名人を降し、藤井聡太棋聖への挑戦権獲得!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月25日10時。東京・将棋会館において第93期ヒューリック杯棋聖戦・挑戦者決定戦▲渡辺明名人(38歳)-△永瀬拓矢王座(29歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 10時に始まった対局は19時24分に終局。結果は158手で永瀬王座の勝ちとなりました。永瀬王座は藤井聡太棋聖(19歳)への挑戦権を獲得しました。

 五番勝負第1局は6月3日、兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」でおこなわれます。

 両者によるタイトル戦番勝負は今回が初めてとなります。

 永瀬王座はこれまで分のわるかった難敵・渡辺名人を大一番で降しました。

 両者の対戦成績はこれで渡辺19勝、永瀬7勝です。

ついに実現、藤井-永瀬のタイトル戦

 渡辺名人先手で矢倉模様の立ち上がり。駆け引きのあと、渡辺名人は金矢倉、永瀬王座は現代風の雁木に構えました。

 後手番の永瀬王座は千日手歓迎で待ちの姿勢。渡辺名人は穴熊に組み替えようとしたところで永瀬王座が抑え込みの態勢を築き、リードを奪いました。

 渡辺名人が穴熊の堅さを頼みに動いてくるのに対して、永瀬王座は冷静に対応し、手段を与えません。永瀬玉は手厚い上部に逃げ出して捕まらない形となり、永瀬王座が勝勢となりました。

 永瀬王座は3年連続の挑決進出。一昨年は藤井現棋聖に敗れ、昨年は渡辺名人に逆転負けを喫しました。しかし本局では終始、水も漏らさぬ手堅い永瀬流が冴え渡ります。

 145手目、永瀬玉はついに相手陣三段目に達して入玉。一方、穴熊に収まる渡辺玉は脱出が難しい状況です。

 渡辺名人は最後、自陣一段目の最終ラインで相手のこれ以上の侵入を防ぎました。対して永瀬王座はその間に穴熊を攻略。渡辺玉を受けなしに追い込みました。

 かくして多くのファンが、いずれは見たいと思っていたであろう、藤井棋聖-永瀬王座のタイトル戦がついに実現しました。

 両者の過去の対戦成績は、藤井7勝、永瀬3勝。直近の2局は永瀬王座が連勝しています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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