藤井聡太竜王、渡辺名人&羽生九段とのダブルタイトル戦はフィナーレへ
年明けから続いてきた藤井聡太竜王(20)のダブルタイトル戦もいよいよ大詰めを迎えている。
第72期ALSOK杯王将戦七番勝負では、3月11・12日に行われた第6局を勝って羽生善治九段(52)の挑戦を退けた。
第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負では、渡辺明棋王(38)と19日(日)に第4局を迎える。
ALSOK杯王将戦七番勝負の総括と棋王戦コナミグループ杯第4局の展望を解説していく。
第5・6局について
ALSOK杯王将戦七番勝負は第6局で初めて後手の棋士が勝利して、藤井王将の4勝2敗で防衛となった。
以下の記事は2勝2敗の時点で書いたものである。
渡辺名人と羽生九段は、藤井聡太竜王「鉄壁の先手番」をどう崩すのか
ここで予想した通り、羽生九段は後手番の第5局で横歩取りを採用した。
横歩取りは若い頃から羽生九段の得意戦法であり、採用時の勝率も高く、天王山ともいえる一番に満を持して登場させたと思われる。
中盤までは藤井王将リードで進み、終盤には羽生九段にもチャンスが訪れたが、最後は藤井王将の勝利で終わった。
今から振り返れば、羽生九段が有利になった局面は、このシリーズで藤井王将が最も追い込まれていた瞬間だったといえよう。
第6局で先手番の羽生九段は角換わり早繰り銀を採用し、相早繰り銀に進んだ。この選択には筆者も驚いたし、予想していた人はほぼいない戦型だったと思う。
この戦型は常識が通用しにくく、指しこなすのが非常に難しい印象がある。羽生九段といえども指し手の選択に苦慮する場面が多く、結果的にいつもの強さが影を潜めていたように感じた。
対照的に藤井王将の指し手は冴えており、後手番ながら一方的な内容で勝利をおさめる結果となった。
近年、藤井王将はタイトル戦の舞台で相早繰り銀を数局経験しており、その経験が生きたのではないかと推察する。
シリーズ総括
改めて七番勝負の表をご覧いただこう。
羽生九段が作戦面で工夫をこらした全6局だった。
第4局では作戦が功を奏し、藤井王将の受け間違いもあって羽生九段の完勝に終わった。
一方、第1・3・6局では羽生九段の作戦にうまく対応した藤井王将の完勝だった。
第2・5局は均衡がとれたまま終盤に突入し、際どい将棋となった。
全体を通しては藤井王将のほうがゆとりをもって勝った将棋が多く、羽生九段は作戦に工夫をこらしても勝ちまでもっていくのは簡単ではなかった印象だ。
羽生九段の後手番では、第5局で唯一リードする場面を作った。
勝負にタラレバはないが、もしこの第5局を羽生九段が制していたら、第6局の結果や内容もまた違ったものになったかもしれない。
そして第6局でなぜ羽生九段は角換わり早繰り銀を採用したのか。
過去の羽生九段は大一番では矢倉を選択するケースが非常に多かった。
ここで採用しなかったのは、矢倉に対して藤井王将が採用する急戦策に対して自信をもてなかったのだろう。
この大一番に矢倉が使えず、先手番で信頼を置ける戦法がなかったために角換わり早繰り銀を採用したと筆者は考える。
作戦面で様々な工夫をしても強さを見せられるのが羽生九段ではあるが、先手番で信頼のおける戦法がなかったのがシリーズを勝ちきれなかった要因の一つといえそうだ。
棋王戦第4局は19日に
先ほどの記事での予想がこちらでも的中し、第3局で渡辺棋王は藤井王将の角換わり腰掛け銀を受けて立った。
最終盤での藤井竜王の詰み逃しが話題になり逆転の印象もあるが、実際は一局通じて渡辺棋王が押していて快勝といえる内容だった。
渡辺棋王としては後手番で角換わり腰掛け銀を受けて立ち、その中で五分以上の戦いを出来たのは今後に向けて非常に意義があったと思われる。
角換わり腰掛け銀で戦えるならば、そこに照準を絞って準備すればいいからだ。
さて、第4局は渡辺棋王の先手番となる。
この五番勝負を角換わりシリーズと定めて照準を合わせているであろう渡辺棋王は迷わず角換わり腰掛け銀に進めるはずだ。
羽生九段は先手番で信頼を置ける戦法がなかったと書いたが、いまの渡辺棋王にとって角換わり腰掛け銀が信頼の置ける戦法であり、それがシリーズを制する原動力になる可能性を十分に秘めている。
後手番で迎える第4局は藤井竜王にとって正念場といえる一局だ。
しかし王将戦七番勝負では最後に後手番で素晴らしい指しまわしを見せて大一番での強さを見せた。
今回も最後は後手番で勝ってシリーズを制し、六冠にタイトルを増やすのか。
それとも渡辺棋王が勝ってタイに戻し、フルセットにもつれ込むのか。
名人戦七番勝負、そして今後の両者の戦いにも影響を及ぼしそうな第4局だ。
本局は各メディアで中継が行われる。
藤井竜王の六冠なるか、という点でも世間の注目度も高そうだ。
ぜひご注目ください。