Yahoo!ニュース

日本付近は冬型の気圧配置でも台風22号が発生 フィリピンでも台風が少ない南部のミンダナオ島へ

饒村曜気象予報士
日本付近の冬型の気圧配置とカロリン諸島の台風(12月13日9時の予想天気図)

台風22号の発生

 日本付近は西高東低の冬型の気圧配置が強まり、北日本の上空約5000メートルには氷点下39度以下の強い寒気が流れ込んでいます(タイトル画像参照)。

 このため、北日本を中心に雪を伴った非常に強い風が吹いて、大しけとなる所があるでしょう。

 猛ふぶきや吹きだまりによる交通障害、暴風、高波に警戒してください。

 一方、日本のはるか南、カロリン諸島付近の熱帯低気圧が台風22号になりそうです(図1)。

図1 台風22号になりそうな熱帯低気圧の進路予報(12月13日0時)と海面水温
図1 台風22号になりそうな熱帯低気圧の進路予報(12月13日0時)と海面水温

 熱帯低気圧がある海域は、台風が発生・発達する目安となっている海面水温27度を大きく上回る29度以上の温かい海です。

 台風発生後も、さらに発達を続け、強い勢力となってフィリピン南部のミンダナオ島に上陸する予報です。

【追記(12月13日16時30分)】

 カロリン諸島の熱帯低気圧は、12月13日15時に台風22号になりました。

 台風22号は、今後もカロリン諸島を西よりに進み、15日(水)にはミンダナオ島の東で強い勢力になり、16日(木)には非常に強い勢力となる見込みです。

 昔、12月の台風進路を統計したことがありますが、それによると、日付変更線付近から西進する台風の中には北上してくるものもありますが、日本の南海上で発生する台風のほとんどは西進してフィリピンに上陸しています(図2)。

図2 台風の12月の平均経路
図2 台風の12月の平均経路

 したがって、12月の平均的な台風経路とほぼ同じといえますが、平均的な経路より少し南を通って、フィリピン上陸の見込みです。

ミンダナオ島の台風と白ラワン材

 フィリピンに上陸する台風は、年平均4.5個で、日本の約1.5倍あります。

 月別にみると、11月が一番多く上陸しており、台風の発生数が多い7~9月が少ないのは、このころの台風の発生がフィリピンより高緯度の海域であるからです(図3)。

図3 フィリピンの月別台風上陸数
図3 フィリピンの月別台風上陸数

 また、フィリピンに上陸する台風の6割以上がルソン島に上陸していますが、12月に限ると、ルソン島以外の上陸の方が多くなっています。

 フィリピンは、全土を通じて年平均気温が27度程度であることなどから、ラワンと呼ばれるフタバガキ科の木々が群生しています。

 このラワンは樹高が数十メートルにも達し、建築材や家具材として使用されるラワン材が得られます。

 ラワンは、ラワン材の色調で赤ラワンと白ラワンに分けられますが、台風が多く通るルソン島に多い赤ラワンは、台風の影響でねじれて節があるのに対して、台風の影響のほとんどないミンダナオ島に多い白ラワンは、まっすぐで太いという特徴があります。

 当然、建築材としては白ラワンの方が良質材となり、日本の大手商社はフィリピンの白ラワンを買いあさってきました。

 昭和40年代の初めの、いわゆる経済の高度成長時代には、日本向け輸出の過半数は白ラワンだったといわれています。

 その結果、白ラワンの乱伐が進み、やむなく赤ラワンの買付けに走る経済戦争が始まっています。

 このフィリピンにおける木材事情をテーマとして、深田祐介氏は「炎熱商人」という経済小説を書き、昭和57年(1982年)の直木賞に選ばれています。

 このように、台風の影響が少ないミンダナオ島ですが、近年、ときおり発達した台風が上陸し、大きな被害が発生しています。

 台風に不慣れな地方ということもあり、災害が懸念されます。

令和3年(2021年)の台風

 令和3年(2021年)は、7月~9月に発生数が若干少なかったことから、台風22号の発生でも、平年より少ない発生数となっています(表)。

表 令和3年(2021年)の台風と平年の台風発生数・接近数・上陸数
表 令和3年(2021年)の台風と平年の台風発生数・接近数・上陸数

 一方、台風の中心がそれぞれの地域のいずれかの気象官署等から300 キロ以内に入った場合を、台風の接近といいますが、その接近数は12個と平年並みとなっています。

 また、台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を「台風の上陸」といいます。

 令和3年(2021年)は、これまで、台風8号が7月に宮城県石巻市付近に、台風9号が8月に鹿児島県枕崎市付近に、台風14号が9月に福岡県福津市付近に上陸しており、平年並みの3個上陸です。

 令和3年(2021年)の台風は、発生数は平年より少なく、接近数と上陸数は平年並みということになりそうです。

タイトル画像、表の出典:気象庁ホームページ。

図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:饒村曜・宮澤清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計 月別発生数・存在分布・平均経路、研究時報、気象庁。

図3の出典:饒村曜(昭和61年(1986年))、台風物語、日本気象協会。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事