たいへん使い勝手が悪い大宅壮一文庫が経営危機らしい件
数多くの雑誌を所蔵する民間が運営するアーカイヴである「大宅壮一文庫」が経営危機らしいということで、ウェブ上で話題になっています。
公益財団法人なので財務諸表を公開していますね。直近のP/Lを見てみても、たしかに赤字です。
B/Sを見るとキャッシュが2.2億円くらいあり、前年から1700万円ほど減っていますが、まったく同じペースでただただ現金が減っていき何も手を打たなければ13年くらいで底をつきそうです。
(なおP/L上は直近では4300万円赤字だそうですが)
公益財団法人の財務のきまり、どうなったら畳まないといけなくなるのかといったことは、よく知りませんが、そのあいだに手を打てればよいと。
いち利用者として大宅が雑誌図書館としていかにだめかということはわかりますので、いくつか利用者離れの原因をさぐってみたいと思います。
便利なのは検索システムWeb OYA-BUNKOだけであり、それはほかの図書館でも利用可能である
僕も仕事柄、調べものに過去の雑誌をあさりに出かけることもあります。しかし、もっぱら使うのは都立多摩図書館か国会図書館です。
大宅壮一文庫でありがたいのは、過去の雑誌の索引を独自につくってキーワード検索ができるWeb OYA-BUNKOです。
これとほかの雑誌データベースをくみあわせれば、おおよそ探したいものは見つけることができます。
しかし、大宅壮一文庫(施設のほう)では他のデータベースは使えないし、入館料もコピー代も高く、一日の利用冊数制限もあるし、縮小コピーや拡大コピーも拒否される(大きさがふぞろいになって不便)し、スタッフの対応もふた昔前くらいのお役所みたいな杓子定規で上から目線な感じでして、とても民間がやっているとは思えないホスピタリティの低さ、サービスの悪さなのです。
いっぽう、都立多摩図書館や国会図書館ではWeb OYAも使えるし、コピー代も安いし、コピーの大きさも融通がきくし、スタッフの対応も、すくなくとも不快に思うものではありません(個人によって体感の差はあるでしょうが)。
もちろん所蔵している雑誌の種類や期間はそれぞれの施設で一長一短があり、大宅が便利なこともあるのですが、大宅以外でどうしても用が足りなかった場合に渋々行くていどの存在になりはてています。
近年では地域の図書館(の雑誌の所蔵具合や検索システム)も充実していますから、ちょっとした調べものなら近所の図書館とインターネットでじゅうぶんです。新聞検索もいまや各新聞社がやっている記事検索のデータベース(有料)をつかえば、縮尺版をわざわざコピーしにいく必要もありませんし、地域の図書館でも、それらが使えるところもあります。
つまり、大宅には、大宅にしかない利便性がほとんどなくなっています。ウェブ上のアーカイヴおよび大宅以外の図書館の充実により、大宅に行かなくても用が足りるようになってきている。それでもよほど使い勝手がよければわざわざ行くひともいるのでしょうが……。
というわけで、経営不振になってもしかたないだろうなと、傍目から見ていて思います。
大宅がもしたちゆかなくなったら蔵書は都立図書館なり国会図書館に寄贈して、データベースをつくる団体として縮小してやっていってもらえれば、困るひとはそんなにいないのではないでしょうか。
そんなことよりデジタルアーカイヴ、デジタルデータでの資料複写を充実させてはくれまいか
しかしですね、大宅でもそれ以外の図書館であってもですね、そもそも雑誌図書館にわざわざ物理的に移動して紙のコピーを取らないといけないということをこのご時世に強いているほうが、あほらしい事態です。
だいたい紙でコピーした資料はpdf化してOCRかけて検索できるようにしてタブレットで読むことになるわけですよ。
だったら最初からデジタルデータでくれよ、二度手間だよ、と思います。
もちろん法律の整備など、さまざまなことが必要ではありましょうが、雑誌図書館の電子化、あるいは電子データによる雑誌の複写受取ができるよう、なんとかしてほしいと切に願う次第です。
それに積極的に動いてくれるのであれば、大宅壮一文庫を全力で支援したいと思っています。