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元ハリケーン・カルビン、ハワイ島に最接近または直撃へ

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
ハワイに迫りくるカルビンの衛星画像 (18日、NOAA出典)

日本人観光客も戻ってきた楽園ハワイに、カルビン(Calvin)が最接近または直撃する見込みです。

カルビンは、一時今年最強のハリケーンにまで発達しましたが、現在はやや弱まり「トロピカルストーム」の勢力を維持しています。

予想されていること

予想進路図を見ると、ハワイの南をかすめていく公算が高そうです。しかし雨雲はカルビンの中心よりも北に集中しているため、ハワイ諸島は大雨に見舞われるおそれがあります。

国立ハリケーンセンター出典の予想図に筆者加筆
国立ハリケーンセンター出典の予想図に筆者加筆

国立ハリケーンセンターの発表した18日(火)時点の最新情報は、下記の通りです。

・中心付近の最大風速は22メートル (1分平均)

・18日(火)夜~19日(水)未明にハワイ島最接近

・ハワイ島では多い所250ミリの降水量

・命の危険を伴う波やうねり、離岸流の恐れ

もっとも影響を受けるのは、コナコーヒーやキラウエア火山などで知られるハワイ島です。

ホノルルのあるオアフ島は、ハワイ島に比べれば影響は低いものの、それでも18日(火)は朝から強風が吹き荒れており、木々が大きく揺れています。ピークは19日(水)で、雷を伴った大雨や強風が予想されています。

ハワイ緊急管理局は下の動画を投稿して、ユニークな方法でカルビンへの注意を呼び掛けています。じつにハワイの人々の人柄が表れています。

上陸すれば3例目

カルビンはハワイ島のすぐ南を通過する可能性が高いものの、直撃の可能性も捨てきれません。もし直撃すれば、かなり珍しいことです。

下図は、これまでにハワイ島を通過していった嵐の経路図です。トロピカルストームより弱い「熱帯低気圧」を含めると4例ありますが、トロピカルストームの強さで直撃したのは、2014年イゼルと2016年のダービーのみです。

ですからカルビンが今の勢力のままハワイ島を通過すれば、観測史上3例目となります。

さらにこれまでの直撃はいずれも7月下旬以降です。今は7月中旬ですから、最早記録を塗り替える可能性すらあります。

NOAA出典のハワイ島を通過していった過去の嵐の経路図に筆者加筆
NOAA出典のハワイ島を通過していった過去の嵐の経路図に筆者加筆

悪名高いイニキ

ハワイの周りの海水は比較的低温なうえ、常に吹いている心地よい北東風は、嵐を弱める働きもします。「ハリケーンはハワイを避けて通る」と言われるゆえんはそこにあります。そういう意味でも、ハワイは実にラッキーな島々で、見えない力に守られているとさえ感じます。

しかし、例外があります。通常ルートの東からやってくる嵐には強いのですが、南からやってくる嵐に利く盾はありません。

1992年には南の暖かな海上を進んで、90度進路を変えた「イニキ」というハリケーンがありました。非常に強い勢力でカウアイ島に突進し、甚大すぎるほどの被害をもたらしていきました。

南から突進してきた1992年のハリケーン・イニキ (NOAA出典の図と写真に筆者加筆)
南から突進してきた1992年のハリケーン・イニキ (NOAA出典の図と写真に筆者加筆)

エルニーニョの年は、ハワイは多くの嵐に見舞われる傾向にあります。イニキがやってきた年もそうでした。エルニーニョが発生している今、いくら楽園とはいえ、いつもよりも注意が必要になっています。

※7/21追記※

カルビンは、18日夜から19日朝にかけてハワイ島の南をトロピカルストームの勢力で通過していきました。ハワイ島では半日で176ミリの雨が降りました。特に目立った被害は出ていません。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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