前WBAスーパーライト級王者のカムバック
2021年12月5日、ジャーボンテイ・デービスの持つWBAライト級タイトルに挑み、思いのほか善戦したイサック・クルス。当時、3階級制覇を成し遂げ、5つの世界タイトルを獲得中だったデービスの圧勝が予想された。だが、この日のチャンピオンにはいつもの爆発力がなかった。身長で4センチ、リーチで11センチのアドバンテージをまるで生かせず、ラウンドが進んだ。
一方、デービスの得意とする顎への左アッパーを何度もグローブでキャッチしながら前に出て、乱打戦に持ち込もうとするクルスの闘志が光った。
「これが自分のスタイル。闘犬はアタックを繰り返すのみ。オープニングから終了まで、同じリズムで戦ったよ。5ラウンドあたりで、デービスは左拳を痛めているように感じた…」
試合後、挑戦者はそう振り返ったが、時間の経過と共に場内のファンは、被弾しながらも常に獲物を追い続けるイサック・クルスに胸を焦がした。
確かに株を大いに上げたクルスだったが、判定は112-116、113-115、113-115のスコアで敗者となる。
再三、リターンマッチを呼び掛けたクルスだが、実現せず。そこで1階級上げ、今年の4月にローランド・ロメロを8ラウンドにKOしてWBAスーパーライト級タイトルを奪取する。しかし、8月の初防衛戦に失敗。1-2のスプリット・ディシジョンだった。
このほど、クルスの復帰戦が決まった。2025年2月1日に同じ22勝(17KO)2敗2分の同胞、アンヘル・フェーロと拳を交える。フェーロも6月にWBO-NABO空位決定戦で判定負けし、再起を目指している。言うなれば、生き残りを掛けたサバイバルマッチだ。
クルスは記者会見で語った。
「この試合は、今の俺にとって全てを意味する。メキシコvs.メキシコ。メキシコ人同士が激突すると、どうなるかは誰もが知っている筈だ。間違いなく戦争になる。だから、今、とても興奮しているんだ。素晴らしいショーになるだろう。2月1日が待ち切れない。
リング上で、怒りを見せたいとは考えていない。2月1日は、目標を達成して手を挙げられたいだけさ。試合終了のゴングが鳴った折、最高の状態でいられるよう、自分を研ぎ澄ませている。俺は過去の全ての試合から学習している。だから、負けだとは決して思わない。物事を別の視点から見る機会を与えてもらったからね。強くなって戻ってくることを約束するよ」
さて、クルスはどんな戦いを見せるか。