Yahoo!ニュース

【JAZZ LIVE】ジェシ・ヴァン・ルーラー・トリオ “PHANTOM” Tour 2015

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、オランダ出身のギター界の寵児、ジェシ・ヴァン・ルーラー率いるトリオ。

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

ジェシ・ヴァン・ルーラー・トリオ・ツアー
ジェシ・ヴァン・ルーラー・トリオ・ツアー

クインテットやデュオ、そしてオーケストラとの共演なども実現してきたジェシ・ヴァン・ルーラーが、新作で取り組んだのはギター・トリオ。

ある意味で“原点回帰”とも言えそうだなぁなんて思っていたんだけど、彼がそのトリオで収録した新作『ファントム』は、サブ・タイトルが“〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ”だというところを見れば聴かなくったってわかるように、ジャズ・サックスの巨人をモチーフにしているから、“原点回帰”なんていっている場合じゃなさそうだ。

そういえば、前に彼のステージを見たのは2012年。チェンバー・トーンズ・トリオと名付けられたバンドは、同じ3人編成ではあるものの、ドラムではなくサックスが入るという室内楽を意識したもので、サウンドも“ジャズ・ギター”のイメージから距離を置くものだったから、彼に振り返るとか“回帰”なんていう言葉は似合わないということを想い出した。

ジャズ・ギターの新たな真髄は“めんどくささ”にあるっ!

ということは、今回はドラムを入れたオーソドックスな“ジャズ・ギター”のトリオに仕立てているというのに(しかもサックス入りのトリオじゃないという正統的なアプローチだというのに)、サックスを想定したジャズのサウンドをモチーフにしているから、前回のサックスがあるのにジャズのサックスを意識しないアプローチとは逆の、サックスがないのにジャズのサックスを意識させるということになるわけだから、やっぱり“原点回帰”というようなニュアンスはあるのやらないのやら……。

まったくぅ……、「めんどくさいヤツだなぁ」とブツブツ言いながらきっとジェシ・ヴァン・ルーラーのファン(あるいはコンテンポラリー・ジャズのギター・ファン)はニヤニヤしながら会場へ足を運ぶに違いない。そう、その“めんどくささ”こそが、彼の魅力なのだから。

ちょっと補足しておくと、このところのコンテンポラリー・ギターで盛り上がっているのが管楽器(とくにサックス)とのコラボで、それはギターがいかに“息継ぎ”できるのかというコンセプションだと思っていたのだが、それをジェシ・ヴァン・ルーラーはギターだけでやろうとしていうのではないか、ということ。

だって、ジョー・ヘンダーソンといえば、サックスのトリオで名盤を残しているんだからね……。

では、行ってきます!

●公演概要

ジェシ・ヴァン・ルーラー・トリオ・ツアー

8月20日(木) 1st19:00/2nd21:15(入れ替えなし)

会場:Mister Kelly’s(大阪)

8月21日(金) 開場18:00/開演19:30(約100分のステージで30分の休憩あり)

会場:モーション・ブルー・ヨコハマ(横浜・みなとみらい)

8月22日(土) 開場18:00/開演19:30(2セット、入れ替えなし)

会場:Jazz Club Mr.Kenny’s(名古屋)

8月23日(日) 開場18:30/開演19:30(2セット、入れ替えなし)

会場:Live & Cafe’ マムゼル(静岡県袋井市)

8月24日(月)25日(火)

1st 開場17:00/開演18:30 2nd開場20:00/開演21:00(入れ替え制)

会場:コットンクラブ(丸の内)

出演:ジェシ・ヴァン・ルーラー・トリオ:ジェシ・ヴァン・ルーラー(ギター)、クレメンス・ヴェン・デル・フィーン(ベース)、ヨースト・ヴァン・サイク(ドラム)

♪JESSE VAN RULLER TRIO

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

富澤えいちの最近の記事