秋によく見かけるジョロウグモ 不快なクモの巣を張らせない方法は?
どんなに気をつけていても、庭木や玄関などにクモの巣が張ってしまうことがあります。気付かずに身体が網に引っかかってしまうと、とても気持ち悪いですよね。今回は、大きな巣を張り、秋によく見かける「ジョロウグモ」についてご紹介します。
ジョロウグモってどんなクモ?
雌雄で大きさも色も異なることが特徴です。メスは、背中部分が黄色と暗い青色の鮮やかな縞模様で、脚は黒色に黄色の帯が入るトラテープのような感じです。黄色と黒の組み合わせは、街中では目立ちますが、自然界では溶け込んで目立たないのです。メスは体長17~30mm、金色に輝く糸を出し、目の細かい複雑で大きな巣を張ります。オスは6~10mmとメスに比べてとても小さく、褐色がかった地味な色合いです。人家周辺や公園、山間部などで普通に見られます。
ジョロウグモは漢字で「女郎蜘蛛」と書きます。女性の華やかな見た目やイメージから名付けられたと言われています。「女郎(遊女)」という意味の他に、大奥の中でも身分が高い女官「上臈(ジョウロウ)」から来ているとも言われています。ジョロウグモの色は昔から華やかで目立っていたのでしょうね。
春に孵化したクモが成虫になっているこの秋の時期が繁殖シーズンとなり、見かける機会が増え、クモの網に引っかかってしまうということが起こります。繁殖の際は、メスが作った巣にオスがやって来ます。ひとつの巣に複数のオスが来て戦うこともあり、メスに食べられることもありますが、命がけで自分の子孫を残そうとしています。メスはまもなく木の幹や壁面などに産卵すると、糸で覆った上に枯れ葉を重ねて卵を守り続け、寒い冬になるとそのまま死んでしまいます。
そもそもなぜクモは巣を張るの?
クモの巣は、餌を捕まえる大切な仕掛けでもあり、住処でもあります。ただしすべてのクモが張るわけではありません。巣を張るクモを「造網性」、張らずに歩き回って獲物を捕らえるクモを「徘徊性」と言います。
ジョロウグモはもちろん「造網性」のクモです。巣を張って獲物を待ち伏せます。かなり雑食で、食べられる大きさであればほとんどの虫を食べます。
人のいる場所で巣を張る時は、「巣を壊されにくい場所」に張ります。造網型のクモは巣がないと生きていけないので巣を壊されることは危機だと感じています。人が通っても見つけられない、当たらない、高いところや暗い場所に造ることが多いようです。ただ、自然が多いところでは低い位置に巣を張り、そこを通った人の顔に引っかかることがあります。
クモの網は、時間の経過とともに粘着力が減少したり、壊れたりするので、時々新しく張り替えます。網を張るにはかなりエネルギーが必要なので、半分だけを張り替えたりもします。
クモが網に引っかからないのはなぜ?
クモの巣は、獲物(虫)を捕らえますが、クモ自身は網を自由自在に歩いているように見えます。どうして歩けるのか不思議に思いませんか? 実はクモの巣の糸には縦糸と横糸で違いがあります。中心から周りに広がる縦糸は粘着性がないのですが、縦糸の間を繋いでいるらせん状の横糸には、ちいさな粘液の粒(粘球)が並びネバネバしています。クモは縦糸だけを歩いているので、引っかからないのです。網に捕らえた獲物を捕まえに行く時は、すぐ近くだったとしても、一度中心に戻って、縦糸を歩いて獲物に向かうという遠回りをしています。
クモの巣を張らせないためには?
気にならなければそのまま放置しておくという手もありますが、クモの巣が玄関や庭にあるのは、なんとなく不潔感や不快感を覚えますよね。どのように対処したらいいかお教えします。
既に張られている巣は?
巣を張られてしまっていたら、取り除くしかありません。ホウキなどで簡単に取り除けますが、ホウキに糸が絡み付くとなかなか取れず処理が意外に大変です。ホウキに使い捨てのシートや布をかけて巣ごと処分したり、プラスチック製の園芸用の棒などを使用したりすると手間がかからないのでお勧めです。
予防にはスプレー剤が有効
クモは同じ場所に何度も巣を張ることが多いので、窓・ベランダ・外壁などに、クモの巣を張らせないタイプの市販のスプレー剤を塗布することをお勧めします。雨や風にも強いので外で使用でき、植物にほとんど影響のないタイプであれば庭などに安心して使えます。巣ができる前に予防としてスプレー剤をかけることで効果が期待できます。
見つけたクモを駆除するには?
クモは殺虫剤に特別強いわけではないので、クモ専用または不快害虫用のスプレー剤で簡単に駆除できます。上記の巣を張らせないタイプのスプレー剤は直接クモにかけることで退治もできます。
人に危害を与えるの?
ジョロウグモは人に害を与えることはありません。ただし獲物を捕らえた時に毒液を注入します。人に対しては微弱な毒ですが、かまれないよう素手では触らないようにした方が無難です。また、クモの糸が目に入ると炎症を起こす可能性もあるので注意が必要です。日本に生息するクモのほとんどは自ら進んで人を襲うことはなく、害虫を食べてくれる「益虫」とすら呼ばれます。強い毒を持つ特定外来生物「セアカゴケグモ」には注意が必要ですが、積極的に人を攻撃することはありません。ただ、触れてしまった場合、身を守るために咬むことがあるので、十分用心してください。( 気をつけて!危険な外来生物 | 東京都環境局)
冬には短い一生を終えるジョロウグモを嫌うのはかわいそうかもしれませんが、クモの巣が家の周りにあると不快と感じるのも事実です。人の目に付かない場所のクモは益虫として生かしておき、自宅周りのクモの巣には対策をとることをお勧めします。