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なぜ“新時代”のクラシコは重要なのか?バルサとレアルのプランとニュースター出現への期待。

森田泰史スポーツライター
バルサとマドリーが激突(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

フットボールの世界が止まる一戦が、行われる。

リーガエスパニョーラ第11節、バルセロナとレアル・マドリーが激突する。今季から『EA Sports』をスポンサーとして迎え「新たな時代」を標榜するラ・リーガで初のエル・クラシコが開催される。

■負傷者トラブル

ビッグマッチに向け、万全な状態でーー。というのが理想だったが、そうはいかない。苦しんでいるのは、バルセロナだ。

バルセロナは「負傷者続出トラブル」に見舞われている。ロベルト・レヴァンドフスキ、ラフィーニャ、ペドリ・ゴンサレス、フレンキー・デ・ヨングが負傷中で、エル・クラシコの出場が危ぶまれている。

負傷中のペドリとデ・ヨング
負傷中のペドリとデ・ヨング写真:ムツ・カワモリ/アフロ

「これだけケガ人がいるのは理想的ではない。だが我々は不満を言うためにここにいるのではない。戦うためにいる。どれほど欠場する選手がいても、言い訳にはならない」とはシャビ・エルナンデス監督のコメントだ。

「どれだけケガ人がいても、偉大なバルサを見せられる。私はそのように確信している。彼らは正面を切って戦ってくれるはずだ。不在の選手たちの名前を見れば、もちろん重い。しかし、我々のプレーモデルは決して変わらない」

■新戦力とカンテラーノの台頭

だがネガティブなニュースばかりではない。台頭してきている選手たちがいる。

まず注目したいのは、新戦力だ。

バルセロナは今夏、イルカイ・ギュンドアン、ジョアン・フェリックス、オリオル・ロメウ、イニゴ・マルティネス、ジョアン・カンセロを獲得した。なかでも、フェリックスとカンセロ、「2人のジョアン」が活躍している。

フェリックスは公式戦10試合で3得点4アシスト。カンセロは10試合で2得点1アシストをマークしている。また、彼らは戦術面でも重要な役割を担っている。フェリックスは左ウィングに置かれ突破力と連携力で状況を打開。カンセロは右サイドバックで、「偽SB」として機能し、アンカーのロメウを助けている。

フェルミンやヤマルが台頭
フェルミンやヤマルが台頭写真:なかしまだいすけ/アフロ

加えて、バルセロナは、カンテラーノが大きく成長している。ラミン・ヤマル、フェルミン・ロペス、マルク・グイウ、若き才能がアピールを続けている。

今季、バルセロナのトップ登録の選手は19名だ。それだけ、カンテラの選手にチャンスがある。エル・クラシコでも新星(ニュースター)が誕生するかもしれない。

■主力の離脱を乗り越えて

一方、マドリーは、シーズン序盤にアクシデントに襲われた。

GKティボ・クルトワ、エデル・ミリトンと主力の負傷による長期離脱が相次いだ。チェルシーからGKケパ・アリサバラガをレンタル獲得して緊急補強を行ったが、開幕時の懸念材料は多かった。

ただ、ここまで、マドリーは順調にきていると言えるだろう。「失敗」と称せるのはアトレティコ・マドリーとのダービーマッチ(第6節/●1−3)くらいで、公式戦13試合で11勝1分け1敗と申し分ない成績だ。

ゴールを喜ぶベリンガム
ゴールを喜ぶベリンガム写真:ロイター/アフロ

そのマドリーを牽引しているのは、ジュード・ベリンガムだ。今夏、ボルシア・ドルトムントから移籍金1億300万ユーロ(約151億円)で加入した男が、新天地で好パフォーマンスを見せている。

カルロ・アンチェロッティ監督は今季からシステムを変更している。【4−3−3】から【4−4−2】にして、中盤ダイヤモンド型の布陣でトップ下にベリンガムを当て嵌めた。

その効果はあらわれている。ベリンガムは今季、公式戦12試合で11得点3アシスト。95分毎にゴールを決めている。2トップシステムで、トップ下のベリンガムが自由に攻撃に絡んでくる、いわゆる「擬似3トップ」のアタックがマドリーの大きな得点源になっているのだ。

■中盤の構成と配置

ただ、システムチェンジが行われ、選手の配置にも変化が生じた。

とりわけ、中盤の構成だ。ベリンガムに自由を与えるため、彼の背後には、スペースをカバーできる選手が必要になった。ゆえに、アンチェロッティ監督はフェデリコ・バルベルデやエドゥアルド・カマヴィンガを重宝している。

マドリーは現在、クラブとして世代交代を進めている。ルカ・モドリッチ、トニ・クロースの出場機会が減っている背景として、その点も忘れてはならない。だが戦術的な観点からも、ベリンガムを生かすために、フィジカルベースの高い選手をインサイドハーフに置くことが好まれている。

世代交代を進めているマドリー
世代交代を進めているマドリー写真:ロイター/アフロ

「調子はいい。できるだけ良いコンディションで試合に臨めるように、励んでいる。この前のゲームで少し違和感を感じたけど、大丈夫だ。クラシコでプレーできると思う。素晴らしい結果を得られたらいいね」

「すごく感情が揺さぶられている。早く試合がきて欲しいね。(バルセロナという相手に)僕たちは大きな敬意を抱いている。モチベーションに満ちているし、個人的に非常に楽しみにしているよ」

これは初めてのエル・クラシコに挑むベリンガムの言葉だ。

プライドを懸けた戦いは時にヒートアップ
プライドを懸けた戦いは時にヒートアップ写真:なかしまだいすけ/アフロ

エル・クラシコは違いをつくる。優勝を争う直接的なライバルを叩ければ、精神的に大きなアドバンテージになる。首位のマドリー(勝ち点25)、3位のバルセロナ(勝ち点24)と勝ち点数でも肉薄している。

まだ第11節だ。ここで優勝が決まる、というのはない。だが趨勢が決まる、というのはあり得る。新たな時代の重要な一戦を、見逃してはならない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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