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ジュニアグランプリファイナルで頂点に立った島田麻央と中田璃士 全日本選手権でみせる輝きに期待

沢田聡子ライター
2023 全日本ジュニア選手権 女子 FS(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

■トリプルアクセルと4回転を決めた島田麻央

シニアと同じ会場(中国・北京、国家体育館)で行われたジュニアグランプリファイナル(12月7~10日)では、男女シングル共に日本人選手が優勝した。

ジュニア女子シングルを制したのは、天才少女として名高い15歳の島田麻央だ。ジュニアに転向して以来、一年前のファイナルを含む7つの国際大会のすべてで優勝してきた島田だが、このファイナルではショートで思わぬミスが出た。最後のジャンプ、3回転ルッツの着氷でステップアウトしたのだ。他の要素ではほぼ完璧といっていい出来栄えだったため首位と僅差の2位発進となったが、島田はキスアンドクライで涙をみせていた。

追う立場で臨んだフリー、島田は果敢にトリプルアクセルと4回転に挑戦する。冒頭に組み込んだトリプルアクセルは回転速度が速く、1.60の加点がつく。続いて跳んだ4回転トウループも島田ならではの鋭さで決め、GOE2.17という高い評価を得た。二つの大技の成功を目指してきた島田は、連覇がかかるこの大舞台で遂にその目標を達成した。

回転不足や3回転を予定していたループが1回転になるミスがありクリーンプログラムとはいかなかったものの、ショートのミスから気持ちを立て直して挑んだ島田の強さが光るフリーだった。島田は、逆転で2連覇を果たしている。

金メダリストとして臨んだ記者会見で「I'm happy to win second time(2度目の優勝ができて嬉しいです)」と英語で最初のコメントを発した島田は、試合を振り返っている。

「今回の試合は、ショートプログラムでまずミスをしてしまったので、フリーはすごく緊張感があって。気持ちを切り替えることがすごく難しかったんですけど、今回はしっかり昼寝をして、気持ちを切り替えることができました」

会見で憧れのスケーターを問われた島田は、名前の由来である浅田真央さんを挙げ「浅田真央さんはトリプルアクセルを跳び続けているところにも憧れて、自分も挑戦し続けたいなと思っています」と語っている。逆境でも挑戦し続けた島田の原動力は、偉大な先輩への憧れだった。

■クールなジェームズ・ボンドを演じた中田璃士

ジュニア男子を制したのは、15歳の中田璃士だ。全日本ノービス選手権を3連覇している逸材で、コーチとして今大会にも付き添った父とイギリス人の母を持つ。ポイントランキング1位でファイナル進出を決めており、最終滑走者として臨んだショートだったが、トリプルアクセルで転倒し4位発進となった。

しかし、映画『007』の曲を使うフリーで、中田は会心の演技をみせる。冒頭で跳んだ4回転トウループは3.12という高い加点を得る素晴らしい出来栄えで、中田も降りた瞬間にガッツポーズを繰り出している。その後も2本のトリプルアクセルを含むすべての要素を加点のつく出来栄えで滑り切り、クールなジェームズ・ボンドを演じた。

逆転で金メダルを勝ち取った中田は、記者会見で高難度ジャンプの重要性について問われている。

「4回転やトリプルアクセルはすごくジュニアで重要で、跳ばないと勝てないので、来シーズンは4回転を増やして、もっと点数を出せたらなと思います」

「グランプリファイナルに優勝したのはすごく大きなこと」としながらも、シーズン後半に向けて気を引き締めた。

「今シーズンまだまだ試合があるんですけど、ファイナルを優勝したからといって気を抜かないで、一つひとつの試合を大事にしていきたいと思います」

島田と中田は、ジュニアからの推薦選手として全日本選手権(12月20日~、長野)に出場する。ジュニアで世界の頂点に立った次世代のエース二人が、国内最高峰の舞台でどんな滑りをみせてくれるのか、楽しみだ。

ライター

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(フィギュアスケート、アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。2022年北京五輪を現地取材。

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