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スーパーボウルへ出場するチームは? ~NFLプレイオフを占う AFC編~

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
ペイトリオッツを率いるブレイディ(Photo by Kiyoshi Mio)

AFC Playoffs Preview: Text&Photos by Kiyoshi Mio

1月1日にNFLの全32チームが試合を行ない、今季のレギュラーシーズンが終了した。

レギュラーシーズンの戦いを勝ち抜いて、スーパーボウル出場権を賭けたプレイオフに進出できたのは、AFCからは以下の6チーム。

アメリカン・フットボール・カンファレンス(AFC)

1位:ニューイングランド・ペイトリオッツ(14勝2敗、AFC東地区王者)

2位:カンザスシティ・チーフス(12勝4敗、AFC西地区王者)

3位:ピッツバーグ・スティーラーズ(11勝5敗、AFC北地区王者)

4位:ヒューストン・テキサンズ(9勝7敗、AFC南地区王者)

5位:オークランド・レイダース(12勝4敗、ワイルドカード枠)

6位:マイアミ・ドルフィンズ(10勝6敗、ワイルドカード枠)

NFLでは勝ち星よりも地区優勝チームが優遇されるために、9勝のテキサンズが4位シードを得て、12勝のレイダースと10勝のドルフィンズよりもシード権が高い。

この6チームの中でプレイオフを勝ち抜いて、スーパーボウル出場権を手にするチームはどこなのだろうか?

まずは各種データを基に算出したスーパーボウル出場確率を見てみたい。

AFCチーム・スーパーボウル出場確率

ペイトリオッツ:55%

チーフス:28%

スティーラーズ:10%

レイダース:3%

テキサンズ:2%

ドルフィンズ:2%

スーパーボウル優勝4回を誇るペイトリオッツのトム・ブレイディ(三尾圭撮影)
スーパーボウル優勝4回を誇るペイトリオッツのトム・ブレイディ(三尾圭撮影)

AFCではペイトリオッツが大本命であり、経験と実力を兼ね備えた常勝チームを倒すのは難しい。1990年にプレイオフ出場チームが現行の12チームになってから、ペイトリオッツが1位シードを得たのはリーグ最多の6度目で、8年連続の地区優勝を飾った。

今季は開幕からエース・クォーターバック(QB)のトム・ブレイディが4試合の出場停止処分を受けたが、NFLで先発経験のなかったジミー・ガロポロが開幕2連勝と好発進。ブレイディ不在でも勝てるシステムの強さを誇示した。

5戦目から39歳のブレイディが復帰。今季のブレイディは28タッチダウン(TD)・パスを投げながらインターセプションは僅かに2つと抜群の安定感を披露。タッチダウンとインターセプション比率が14:1は歴代最高の数字だ。乃木坂46の斎藤ちはるもファンだと公言するベテランQBはミスを犯すことなく、チームを勝利に導いてきた。

第12週目にはブレイディと共にオフェンスの柱として活躍していたタイトエンド(TE)のロブ・グロンコウスキーがケガで離脱。それでも他の選手たちがグロンコウスキーの穴埋めをきちんとして、リーグ・ナンバーワンTEの不在を感じさせなかった。

今季のペイトリオッツはブレイディの空中戦だけでなく、地上戦でも強さを発揮。ランニングバック(RB)のレギャレット・ブラントはリーグ1位となる18ラッシングTDを記録。この18ラッシングTDは、2009年のエイドリアン・ピーターソン(バイキングス)に並ぶ過去11シーズンで最多タイの記録となる。

パスとランのバランスが整ったオフェンスばかりに注目が集まるが、今季のペイトリオッツは失点がリーグ最少の15.6点と鉄壁ディフェンスを誇る。

「今季の14勝は上出来だ。毎試合ハードに戦った選手たちを誇りに思う」とビル・ベリチック監督も褒めたように、攻守共に穴がなく、数々の障害を乗り越えてきた今季のペイトリオッツはスーパーボウル優勝の最有力候補だ。

プレイオフ歴代最多勝を挙げているペイトリオッツのベリチック監督(三尾圭撮影)
プレイオフ歴代最多勝を挙げているペイトリオッツのベリチック監督(三尾圭撮影)

そんなペイトリオッツに対抗できそうなのは、スティーラーズとチーフスの2チームのみ。

シーズン最終戦の勝利でプレイオフ1回戦のシード権を与えられる2位シードを得たチーフスは、リーグ最多タイの18インターセプションを奪ったディフェンシブバックを中心に固い守りが自慢のチーム。ただ、ブレイディからインターセプションを奪うのは簡単ではないし、インサイドの守備が手薄なので、試合巧者のペイトリオッツにその穴を突かれそうだ。

ペイトリオッツからの金星を奪う可能性をチーフスよりも感じさせるのがスティーラーズ。チーフスにはビッグプレーで試合の流れを引き寄せられる「ゲーム・チェンジャー」的な存在が見当たらないが、スティーラーズにはスーパーボウルを制した経験を持つQBベン・ロスリスバーガーが控える。RBのレヴォン・ベル、WRのアントニオ・ブラウンとオフェンスのスキル・ポジションにスター選手が控えているだけに、ペイトリオッツに一泡吹かせる可能性を抱かせる。

大舞台での勝負強さに定評があるスティーラーズのロスリスバーガー(三尾圭撮影)
大舞台での勝負強さに定評があるスティーラーズのロスリスバーガー(三尾圭撮影)

悔やまれるのがレイダース。昨季は7勝9敗と負け越したチームが12勝4敗の好成績で14年振りの勝ち越しを記録。長い間、低迷に喘いでいたチームが、スーパーボウルに出場した2002年シーズン以来となるプレイオフ出場を果たした。

快進撃を続けたチームを牽引したNFL3年目のQBデレック・カーが16週目のコルツ戦でサックを受けた際に腓骨を折るケガを負ってしまう。復帰まで最低6週間かかる診断され、カーは自身初となるプレイオフ出場のチャンスを失った。カーが欠場したレイダースは、シーズン最終戦となる17週目のブロンコズ戦にマット・マグロインを先発させたが、50ヤードしかパスを投げられずに試合途中で負傷交代。テキサンズとのプレイオフ第1戦には、NFLで先発経験のない新人QBコナー・クックの先発起用が濃厚だが、シーズン最終戦にNFLデビューを飾った新人QBには荷が重すぎる。

シーズン最終戦のブロンコズ戦に勝利していれば第2シードとなり、プレイオフ1回戦は免除されたレイダースだが、ブロンコズに敗れたことにより第2シードから第5シードまで一気に転落してしまった。カーさえ健康ならば、AFCで唯一ペイトリオッツに対抗できるチームと言われていただけに、エースQBの離脱が残念でならない。

QBデレク・カー(4番)が抜けたことでレイダースの戦力は大幅ダウン(三尾圭撮影)
QBデレク・カー(4番)が抜けたことでレイダースの戦力は大幅ダウン(三尾圭撮影)

スーパーボウルを本拠地のNRGスタジアムで開催するテキサンズは、低レベルのAFC南地区を2年連続で制してのプレイオフ出場。

NFLナンバーワン・ディフェンス選手のJJ・ワットをシーズン序盤に故障で欠きながらも、プレイオフ出場を勝ち取ったのは評価できるが、プレイオフを勝ち抜くには駒不足なのは否めない。

ワットが抜けたディフェンスを牽引したのはジャデベオン・クラウニ―とウィトニー・マーシラス。被パス・ヤード数がリーグ2位とパッシング・オフェンスに対して強さを誇る。

オフにオフェンスの柱としてFAで獲得したQBブロック・オズワイラーが期待を大きく裏切り、シーズン終盤には先発の座を剥奪された。代役のトム・サベージもオズワイラーより成績はましだが、プレイオフを勝てるQBではないし、脳震盪によりプレイオフ1回戦を欠場する可能性が高い。オズワイラーは大型契約に相応しい活躍を見せたいが、レギュラーシーズンで活躍できなかたQBが、プレイオフで見違う働きをすることはないだろう。

幸いにも1回戦の相手がレイダースなので、1回戦は勝ち抜けても、2回戦での対戦が濃厚なペイトリオッツには勝ち目がない。また、過去50回のスーパーボウルで本拠地スタジアム開催のチームが出場した例がないジンクスをテキサンズが覆せるとも思えない。

テキサンズ守備陣を牽引するジャデベオン・クラウニー(三尾圭撮影)
テキサンズ守備陣を牽引するジャデベオン・クラウニー(三尾圭撮影)

プレイオフ最後の枠を得たドルフィンズは、プレイオフに出られただけでも上出来。シーズン最初の5試合を1勝4敗と大きく負け越しながら、その後は9勝2敗と立て直したが、対戦相手に恵まれたのも事実。

QBライアン・タネヒルがシーズン半ばに膝の靭帯を痛めて長期欠場中。レイダース同様にエースQB抜きでは、プレイオフを勝つことはできない。

1回戦で当たるスティーラーズには30対15で勝利を上げているが、敵地でプレイオフの雰囲気の中で勝てるだけの経験も実力もない。

エースQBのライアン・タネヒル抜きではドルフィンズに勝ち目はない(三尾圭撮影)
エースQBのライアン・タネヒル抜きではドルフィンズに勝ち目はない(三尾圭撮影)

プレイオフ出場6チームの陣容を見てきたが、余程のことがない限りペイトリオッツが負けるとは思えない。ブレイディが自身7度目となるスーパーボウルに導くはずだ。

自身7度目のスーパーボウル出場を目指すペイトリオッツのブレイディ(三尾圭撮影)
自身7度目のスーパーボウル出場を目指すペイトリオッツのブレイディ(三尾圭撮影)

スーパーボウルへ出場するチームは? ~NFLプレイオフを占う NFC編~はこちら

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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