政治家のマスクを徹底批評、河野防衛相の「富士山」は× 会見での正解は?
なぜか日本の政治家は柄も多様なマスクを着けています。どういうつもりでこの柄なのかな、と違和感を持つこともしばしば。危機管理の観点から考えます。
危機時はマスクの柄で自己PRしている場合ではない
少しでも明るくしたいという思いでマスクの柄を楽しむのは、ほほ笑ましいことだと思います。しかし、政治家が国民に自粛を要請している時期に色とりどりのマスクをするのは、楽しんでいるように見えてしまい、浮足立っている姿としての印象が残ります。
たとえば、思わずぎょっとしたのは、河野防衛大臣の迷彩柄マスクや真っ赤な日の出と富士山マスク。明らかに目立ちますし、注目を浴びるのは間違いなし。しかし、なぜ目立つ必要があるのでしょうか。沖縄県玉城デニー知事も、毎回マスクが変わります。話題になりますが、その報道でかえって沖縄に行きたくなってしまいます。来てほしくない時には目立たないことが肝要です。何かを宣伝したい場合には個性的なマスクは強い印象を残すため有効ですが、危機管理下においてはシンプルにするのが鉄則です。政治家は苦しむ国民に寄り添い、目立つ姿にせず粛々と事に当たっている姿になることが信頼につながります。
マスクマナーには確立したものはありませんが、身にまとうものの一部であることから、平時と危機時のマスクについて国民からの見え方もこの機会に考えた方がよい。ビジネススーツの着こなしマナーに詳しいスタイリストの高野いせこさんは、「スーツに合わせるならマスクは基本的に白」との見解を示しています。「清潔感という観点からも白がよいでしょう。もっとも、白マスクでも麻生財務大臣の片耳だけ外したマスク姿は、問題外です。だらしがない印象を与えてしまいます。濃紺スーツであれば、ブルー系のマスクもいいですが、ドクターの印象が強くなります。果たしてそれでよいかどうか」
白マスクにワンポイントのマスクについてはどうでしょうか。悪くないと思いますが、やはり何かを宣伝のように見えるため危機時には避けた方がよいでしょう。では、菅官房長官の魔除けのマスクはどう見えるでしょうか。「品のよいグレーワンカラーのポイントで印象はいいと思います。魔除けの気持ちもよくわかりますが、神頼みのようにも見えます」、と高野いせこさん。危機時には、リーダーシップが求められます。魔除けマークの意味を聞いてしまうと、主体的に危機を乗り越えていくんだ、という強いメッセージにはなりにくい。服装と同じで、マスクにどのような意味を込めるか、それが相手にどう受け止められるか考える視点がほしい。
危機時には自己ピーアールをしている場合ではありません。おそらく悪気はなく、国民を楽しませようと思っての行為かもしれませんが、弱者の立場を思えば、マスクで目立とうとする行為は慎むことが求められます。このような姿勢が、国際的には日本は新型コロナの封じ込めに成功していると評価されていながら、国民からの信頼が低くなっている理由に通じているのではないでしょうか。
テレビでは柄選びに気をつける
では、小池都知事はどうなのか、となります。さまざまな柄のマスクをしていますが、マスクが目立ちすぎる印象はなく、違和感がありません。パステルカラーであること、大柄ではないからでしょう。また、女性の場合、紺のスーツとは限らないからともいえます。
平時になれば、政治家も自由にマスクを楽しめばいいと思いますが、平時・緊急時共にテレビでは柄選びに注意が必要です。高野いせこさんは、「マスク選びでもっとも注意したいのは、柄の選び方です。白地ベース、パステルカラーなら清潔感は演出できます。テレビ出演する場合には、ネクタイ同様、細かい柄やストライプはモアレ現象が起きて目がチカチカしてしまいますので避けましょう。マスクは顔の半分を占めますから、余計に柄選びは注意してほしいですね。話している顔がアップになったとき、画面の半分でモアレ現象が起きたら、言葉が頭に入ってきませんから」。
注意緊急事態宣言が全面解除され、段階的に規制が緩和されますが、新型コロナとの長期戦になることは避けられません。政治家はその時々にふさわしいマスク選びをしていただきたい。
「危機管理とマスク」
(リスクマネジメント・ジャーナル、日本リスクマネジャー&コンサルタント協会提供番組)
・スタイリストの高野いせこさんが声だけのゲストスピーカー
・ホームページを検索して政治家マスクの画像を見ながら解説