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ジャニーズ性加害問題、再発防止特別チームの会見はなぜ違和感だらけだったのか―全文と解説―(中編)

石川慶子危機管理/広報コンサルタント
日本リスクマネジャー&コンサルタント協会提供

前編

https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20230707-00356517

第三者委員会は誰のために働くのか

カゲヤマ:APのカゲヤマです。これから賠償請求する人も出てくると思うんですけれども、それに対して林さんはどう考えられますか。それから、この資料の中では、あなたたちはインディペンデントだっていうことですが、それぞれ報酬はジャニーズからもらっているんでしょうか。

林:この特別チームは基本的に、例えばこういったものがつくられた時に、その事案あるいはその事案に対する損害賠償も含む法的な責任を認定するチームではございません。そういった意味で損害賠償がどのようなものであるべきか、われわれはそれを目的として検証することは行いません。もう一つは、報酬の点はジャニーズ事務所が設置したものでございますので、すべからくいわゆるいろんな調査委員会、第三者委員会も、そういった設置した側から報酬を頂くという形にはなっております。

 「よしいいぞ!」と思った切り口の質問ですがやや迫力に欠けます。「報酬額は開示されるのでしょうか」と加えてもよかったのでないでしょうか。多額の調査費用が支払われることが経営者に忖度するような結果を生み出す新たなリスクを生じさせてしまうのではないか、そこをチェックするためです。その報酬は組織のガバナンス改善のためだけに検証するのか、社会的説明責任まで背負うのか、多くのステークホルダーが注視している部分でもあります。補足しておくと、一般的に第三者委員会や検証では、数か月で数千万程度とかなりの金額と言われています。三菱電機は鉄道車両用空調装置等の長年の不適切検査について、調査関連で100億、検証で20億と記者会見(2022年10月22日)で回答しています。このような会見も無報酬ではなく、登壇者には相当な負担がかかる分多額の金額が支払われます。不祥事調査・検証ビジネスの側面もあるわけです。

伊藤:『毎日新聞』の伊藤と申します。1点お伺いしますが、第1回の会合の時に、資料の徴求、検討が行われたということですが、具体的にはどのような資料を請求されているのか、その期間と内容と量についてお伺いします。

林:現在の調査の具体的な個別の内容については、今回ここでお話しすることは控えさせていただきたいと思います。

 この手の質問は回答が得られないと予測できます。「まだ1回しか会合を開催していないのになぜ今日会見を開くのですか?今までほぼ何も回答していないではないですか。調査期間や今後のスケジュール、予定や目標すら回答していません。網羅的な調査ではないとのことですが、幹部の聴取方法について回答していません。一般論しか回答していません。何についてなら回答するのでしょうか。3名の内1名が欠けているため顔出しにも至っていません。ジャニーズ事務所からとりあえず報道陣の前に立ってほしいと依頼されたのではないですか」としたらよかったのではないでしょうか。

危機時に混乱する名称は信頼回復を遅らせる

松谷:ジャーナリストの松谷です。今回、再発防止特別チームという名前になっていますけれども、なぜ第三者委員会を設置しないのでしょうか。また、日弁連の第三者委員会のガイドラインと今回の再発防止特別チームはどのように違うのかということについてお話しいただけますでしょうか。

林:今回、私たちは外部の独立した有識者から構成されておりまして、独立した形で調査、提言を行いますので、私たちは第三者委員会であると受け取ってもらっても、私は差し支えないと思っています。一方で、では第三者委員会という名前を何で付けてないのか。私はその点については、いわゆる過去にもいろんな形で第三者委員会っていうのはつくられてきましたが、必ずしも第三者委員会は第三者委員会と名乗る必要はないと思っております。たまたま今回この特別チーム、正式に言えば「外部専門家による再発防止特別チーム」という形の名前になりましたが、これはジャニーズ事務所側が設定した名前でございます。ただ、またそれを受ける私たちにとりましても、実際に活動内容を端的に表している内容だと思いますので、この名称で名乗ることは、問題はないと思っています。

 そうしますと、じゃあ日弁連の第三者委員会のガイドラインとの関係はどのように考えるのかということでございますが、日弁連のガイドラインはこういった調査、いろいろな第三者委員会のベストプラクティス、こういったものをモデル化して掲げてあるのがガイドラインだと思っています。私たちは、まさにベストプラクティスである日本弁護士連合会のガイドラインを踏まえて、今後活動していきたいと考えております。

 再発防止チームの位置づけを明確にする回答を引き出しています。それにしても第三者委員会ではなく「再発防止チーム」という名称は混乱させる名称であり、余計な質問や憶測を生じさせます。ジャニーズ事務所が事実に向き合っていない印象を与えてしまい、危機管理広報の視点から見ると、信頼回復を遅らせる不適切な名称です。

後藤:『朝日新聞』の後藤です。お聞きしたいのは、この調査がいつまでかっていうのは分からないとおっしゃっていましたけれども、中間報告とかがあるのか。結果が出た時にどのぐらい、もちろん固有名詞とかをわれわれは別に望んでないっていうかあれですけども、かなり詳細にメディアに対して、誰がどういうふうに言ったとか、職員のヒアリングとか含めて明らかにしていただきたいなと思うんですけど。どの程度まで調査を公表されるのか、中間報告等はあるのかという方針をお聞かせください。

林:もちろんスケジュール等はまだ定まっておりませんし、中間報告というのが必要かどうか、するべきかどうか、これもまだ検討しておりません。そして、最終的に当然私たちは、私たちの検証結果あるいは再発防止策の提言内容については皆さまにお知らせしたいと思っておりますが、その範囲どのようにするかっていうことも現在のところは全く。今後検討していきたいと、調査をして検証をしていく過程の中で徐々に決めていきたいと考えております。

 本当に何も回答していません。ここまでくると本当に何のための会見なのか、徒労感が出てきます。せめて3か月後に中間報告なり、スケジュールなりを公表します、程度のことを言えば、会見を開いた意味もあるものを。

滝沢:『朝日新聞』の滝沢と申します。頂いたペーパーだと、今回のチームの方はいずれもジャニーズ事務所とはこれまで関係がないということで、それは第三者委員会という意味でもすごく重要なことだと思うんですけれども。今回こういったお話をお引き受けになった経緯、可能な範囲で教えていただきたい。それと関連するんですけども、経営陣含めて、関係者の協力が必要不可欠だと思いますが、今まで面識がない中で、どういった形でそのあたり進めていかれるのかお聞かせいただければと思います。

林:再発防止特別チーム案内は5月14日のリリースが最初にありましたが、そこからしばらくたってから、弁護士の方を介して私は打診を受けたわけでございます。就任を受けた私なりの理由は、非常に深刻な問題だなと、それまでのテレビとかいろんなメディアで事実が明らかになってから、そのように感じておりました。こういった深刻な問題、二度と起きないようにするためにガバナンスの改善を行ってくれ、提言をつくってほしいと言われました。社会的な意義を考えれば、私が誰かを紹介するのではなく、私自身がこれを引き受けようと考えた次第でございます。

飛鳥井:私も5月14日のリリースの後に弁護士さんを通して打診を受けたんですけれども、私が被害者支援都民センターの理事長をしておりますので、そういう関係でご依頼があったんだと思います。確かにこの問題はガバナンスの改善っていうことを考える上で、被害者支援ですとか被害者の心の回復ということとは不可欠なテーマですので、私がお引き受けすべき役割だろうと考えました。

林:現役幹部への聞き取りをどのようにするかっていうことですね。当然今回ガバナンスの問題点、こういったものを、あるいは対応の問題点を検証するわけでございますが、現役の幹部、また幹部のみならず、その周辺の人たちに対する聞き取り、ヒアリングっていうのは今回の活動の必須のものだと思っています。

 引き受けた経緯を聞く質問はよかったと思います。一方、林さんらは幹部への聞き取りの進め方はやはり回答していません。特別チームからすると言えないのは十分わかりますが、司会からは「特別チームの今後の調査の進め方や取り組み状況について説明する」とアナウンスがありますので、会見の目的がわからなくなります。やはり単なる顔出し。睨みを利かせる会見だったのでしょうか。今、求められているのは、経営者の顔出しなのですが。

イタクラ:新聞の『赤旗日曜版』のイタクラと申します。先ほど林さんのほうから深刻な問題とご自身も考えられたということでした。深刻さの中身について、どのようなふうにお感じになったのかということをお聞きできればと思います。よろしくお願いします。

林:私は、これまでの自分のキャリア、仕事の中でも認識していたことは、性暴力っていうのは一般に、例えば経済的とか社会的な地位に基づく影響力があって、これが影響力に乗じて、特に立場の弱い者あるいは特に年少の者、こういった者に対して起こりやすいという認識を持っておりました。

 その中で今回のジャニーズ事務所の事案というのは、そういった範疇(はんちゅう)に入る非常に深刻な問題だろうと考えまして。こういった性犯罪の性暴力は……すいません、性犯罪とは言ってはいけませんね。また性暴力についての、あるいは性加害についての問題について、どのように再発を防止していくのかということを提言するという使命は、深刻な事案を二度と起こさないようにするための提言っていうのは、社会的に非常に意義があるなと考えて引き受けた次第でございます。

飛鳥井:私も同じように感じておりまして。今ご質問にありましたように、立場の強い者が立場を利用して、立場の弱い者に性加害行為を繰り返すと。それが否認と沈黙によって露見されないまま長く続いて、それによって被害者の数が増大する大変深刻な問題です。日本だけではなくて海外でも、ハリウッドでもメトロポリタン歌劇場でもBBCでもあった案件で、やはり防ぐのはなかなか難しい問題なんだと思います。

 ただ、それが勇気ある方の証言ですとか、それから報道機関のスクープですとか、あるいは捜査機関が動くとか、そういうことを待たなければどうしようもないのかといったようになってしまいますので。そうではなくて、まずガバナンスの改善によって、そういうものをどうやって防いでいけるかということが、まさにこのチームで考えていかなければならないことだと思います。

質問がよかったと思います。調査の手法もスケジュールも回答しない方針を立てている中、聞けることは「どう感じているのか」になるからです。このような質問は相手の問題意識、人柄を引き出すことが可能です。

大吉:毎日放送、大吉と申します。よろしくお願いいたします。ジャニーズ事務所を去っていったタレントたちではなくて、現役で今事務所に所属しているタレントさんたちへの聞き取りというのは、事務所の大きな協力がないと非常に難しいと思うんですが。これが具体的に、例えば書面でアンケートを取るであったり、もしくは先生方が直接タレントさんと面談をしてヒアリングをするであったり、何か予定というのはあるんでしょうか。現役タレントへのヒアリング調査というのはどう行っていかれるご予定でしょうか。

林:先ほど申し上げましたように、まず被害を申告されている方、こういった方々に対しては、なるべく直接私たちはお話を伺いたいと思っております。その過程で、現役のタレントの方が要る、要らないかというのは、今後状況に応じて変わってくると思います。もし現役の方が出てきた場合には、当然非常にアプローチの仕方は慎重にしなくちゃいけないと思います。心情に配慮した形でのアプローチをしなくちゃいけないと思っていますが、そのような方法をチームの中でよく検討して、ぜひともアプローチしていきたいなと思っております。

 一方で、アンケートを取るとかそういう形では、先ほどちょっと申し上げましたが、網羅的に今まで顕在化してないのを発掘する、有無がないかを確定するっていうのが私たちのミッションではありませんので。少なくとも、こういったことが既に1件ならず複数回起きているという事実を所与の前提として、それをどのようにして防ぐのか、こういったことを主眼に検証していきたいと思っておりますので。網羅的にあらゆる所属タレントに対して調査するというようなやり方は現在考えてはおりません。

飛鳥井:これも先ほどご説明したとおりですけども、被害者の方の心に寄り添うという点も、繰り返しますけども、いくらプライバシーを保護しても、調査の対象になるということだけで大きな精神的な負担になります。特に性被害の問題はそういう問題がありますので、現役の方であろうとOBの方であろうと、網羅的にアンケート調査をしたりとか電話調査したりとか、あるいは調査のためのホームページを立ち上げるとか、そういったようなことは一切考えておりません。

 アンケート調査をしない、ホームページを立ち上げない、といった方針を引き出すことができた質問だと思います。この回答から、かなり限定的な調査をすることが判明しました。しかしながら、このような受け身の調査で本当にいいのでしょうか。第三者委員会のガイドラインでは、「統制環境、コンプライアンスに対する意識、ガバナンスの状況などを知るためには社員を対象としたアンケート調査が有益なことが多いので、第三者委員会はこの有用性を認識する必要がある」とされています。嵐は天皇即位の祭典でも歌っていることからすると、税金が支払われていることになります。ホームページくらいは立ち上げる必要があるのではないでしょうか。後ろ向きの方針を感じさせる回答です。被害者目線だけではなく、組織構造だけではなく、社会構造的側面もありそうですから、国民目線を持った調査をする方向性が示されてもよかったのではないでしょうか。

本当に再発防止チームが会見開催を決めたのか?

オオハシ:『ニューズウィーク日本版』のオオハシと申します。これまで藤島社長とか広報の方とか記者会見されてないんですけれども、こちらの再発防止特別チームが先に記者会見するのはなぜですかっていうのと、今回の会見について藤島社長とはどのようなお話をされているか、分かる範囲で教えてください。

林:藤島社長と、今回の会見に当たって、全く何の話も当然しておりません。それから社長が、われわれがこういう記者会見をしたということに対して、一方で社長は記者会見をしていない、これについてどう考えるかということについては。それ自体は、現時点で社長が記者会見をしていること、あるいはしてないこと、また行うべきじゃないか、そういった求めに対しては、やはりジャニーズ事務所側で考えるべきことであって、私たち特別チームとしてコメントをする立場にはないと思っております。

飛鳥井:今座長が言われたとおりでありまして、それはジャニーズ事務所側で考えていただくことなんですけども。ただ、いずれ私どもで再発防止に向けた提言をさせていただいた時には、それをジャニーズ事務所の代表者として、どのように受け止めて実行に移されていくかにつきましては、お考えを明らかにしていただけるものと考えております。

 ようやく会見の位置づけ、目的についての質問が出ました。やはり、ここは苦しい回答になっています。今回の会見について社長と何も話をしていないとのことですが、そうなるとこの会見は林さんと飛鳥井さんだけの判断で行った、そのように受け取れる回答です。しかし、まだ1回のみの会合だけで調査が進んでいない状態で林さんらが記者会見をしたい、と判断するものでしょうか。やはりジャニーズ事務所が会見をした事実を作りたいから彼らにお願いして開催したとしか見えません。ジャニーズ事務所のダメな対応に加担してしまったように見えます。もしかして、相当お金を積まれたのか、と疑いたくなってしまいます。

村瀬:TBS「報道特集」の村瀬と申します。再発防止のための特別チームだということなんですけれども、そのためには、どこに責任があったのかというのは明らかにしないといけないと思うんですけれども、こちらの特別チームとしては、現経営陣の責任の有無について明らかにするお考えはありますか。それと、特にジャニーズ事務所のように未成年のタレントを抱えている事務所の幹部たちは、通常の事務所の幹部とは違って、未成年タレントたちの安全を確保するっていう、より大きな責任があると思うんですけれども。一般論として、ジャニーズ事務所の幹部たちがどのような責任を負っていたとお考えかをお聞かせ願えますか。

林:ジャニーズ事務所の責任、特に幹部の責任。責任という言葉は、厳密に使えば、私たちは法的な責任を認定するチームではございません。だから、責任っていうのを問題点だというふうに置き換えて今のご質問に答えるとすれば、今回の検証の対象にジャニーズ事務所の幹部の問題点というものは、当然それは一番重要な検証事項の一つだと考えております。

 これは明らかに逃げてしまった回答です。彼らが検証するのはガバナンスであって経営責任です。したがって、法的責任ではなく、経営責任について回答する必要があります。なのに、「責任」を「問題点」とわざわざ言い換える必要があるのでしょうか。甘い視点が垣間見えてしまい残念。ここは前検事総長として威厳を示してほしい場面でした。ガバナンスの観点から経営責任は明らかにする、と言い切るのが被害者やステークホルダーへの説明責任であり、言いきれれば会見を開いた意味があったといえます。本当に第三者委員会は、クライアントから依頼された内容しか検証できないのでしょうか。責任を明確にしなくていい、と言われればそこまで踏み込めない。まさにかんぽ生命の第三者委員会はそう回答しています。一方、スルガ銀行の第三者委員会は、経営責任にまで踏み込んでいますから、絶対できないわけではなく、まさに委員会の方針次第といえます。

コマツ:TBSのコマツと申します。6月9日にジャニーズ事務所側が出したリリースに、本チームが以前所属していたとされる人物の性加害に関する記事について、この問題も含めて調査していく旨をお聞きしていますと書いてあるんですけども。ジャニー喜多川氏からだけでなく、以前に所属していたとされる人物、つまりマネジャーからの性加害についても調査していくということでしょうか。

林:具体的に当該その事実について、そのマネジャーを調査するのかということについては、今後考えていくことだと思います。ただ、私は例えば、当初ジャニー喜多川氏による性暴力、この事実に対する再発防止を考える特別チームであったわけですけども。一方で、それがジャニー喜多川氏でなくて、その他のスタッフだったりマネジャーだったりした場合に、これを全く度外視できるのかといったら。それはジャニーズ事務所のこれまでのガバナンス対応に問題があったかどうかという私たちの検証目的からすれば、当然そのあたりの別の人によることの性暴力については、調査しないのか、検証の対象から外すのか言われれば、全くそういうことではないと考えております。

飛鳥井:先ほどもコメントしましたけど、事務所として、これだけの歴史とそれから組織規模ですので、恐らく、いろいろなセクハラ行為といったようなものは散見されるっていうことは、あったとしても不思議ではないと思います。ただ、散発的な事案ということを超えて、そういったような性加害に対して甘いような組織風土を許してしまうような問題があったかどうかということについては、まさにこのチームが検討すべき問題と感じております。

 質問をもう少し具体的にしてもよかったと思います。マネジャーは現在何人いるのか、どこまで遡れそうか、喜多川氏以外で生存している加害者、見て見ぬふりをした人も含めて関与が疑われる人には受け身ではなく、チーム側からアプローチをするのか。被害者の心情に配慮はしても加害者の心情には配慮する必要がないので、網羅的に調査ができるのではないか、そのように加害者側にアプローチすることが再発防止につながるといえるのではないか、再発防止チームのミッションではないか、生存している加害者側に逃げ切れたと思わせることが次の被害を生んでいくのではないか、と。

オオツカ:『しんぶん赤旗』のオオツカと申します。飛鳥井先生に伺いたいんですけれども、今回のチームの活動によって、子ども期に性暴力を受けた被害者の方にとって、どのようにこのチームの活動が進んでいくことが回復に役立つのか、専門家の目から見てどうお感じになっているかを伺えたらと思うんですが。

飛鳥井:とても大事な点でありまして、私自身もこの件につきましては、単にジャニーズ事務所の信用回復だけではなくて、被害者の心の回復とジャニーズ事務所の信用回復って表裏一体だと思っております。被害者の心を置き去りにしたままで信用回復というのはあり得ません。という意味で、被害者の心の動きということをわれわれ自身も把握していくことがとても大事でありまして、それだからこそ、恐らく私の役割っていうものがあるんだと思います。

 ただ、ご指摘のように、いわゆる性被害による心理的な後遺症、深刻なものがこれまでも報告されております。女性だけではなくて、男性の被害者でも共通するものであります。これまでの性被害と共通する部分と、先ほど言いましたように、心の葛藤といいますか、自分のタレントとしての夢や希望をかなえたい、それからジャニー氏に対する、指導者に対する思いというものがある。それプラス、その中で自分が性加害行為に耐えなきゃいけないといったような心の葛藤がある。それは今回の事案の特徴の一つだと思うんです。そういうことも含めて、実際にいろんな、その時の気持ちなども伺うことによって、どういったことが今後被害者の方の回復に役立つのかを明らかにしていけると思います。

 ただ恐らく、ご本人自身、そういうことがあったけども、ご自分の中でいろいろ既に整理を付けて、心の引き出しにしまっておられる方もおられますし、まだまだとてもそのことは自分で整理が付かないと、いろいろ悩んでおられる方も。これはほんとに被害者お一人お一人でさまざまだと思います。こうだと一律では述べられないということがございまして、ほんとにお一人お一人、さまざまだと思います。

 赤旗二人目の質問も「感じ方」でした。このメディアの特徴なのかもしれないし、方針を回答しないから切り替えたのかもしれません。被害者支援、回復支援は、重要なテーマなので、質問も的を射ているし、飛鳥井さんの回答も「葛藤」「夢や希望」「性加害に耐える」「心の引き出しにしまった人」「整理できた人できない人」「悩んでいる人」といった被害者心理に寄り添った言葉が選ばれている内容でした。

ナカオ:『FRIDAY』のナカオと申します。先ほどジュリー社長が会見をされてないことに関して、それはわれわれチームがタッチする領域ではないとおっしゃっていたんですが。ただ今回みたいな、性加害みたいな深刻な問題が浮上してきた時に、現社長が要は会見を行わず、一部、雲隠れとか逃げ回っているとかいう声も出ている中で、社長が表に出て自分の言葉で説明しない、記者会見を開かないっていうことも、一つのガバナンスの問題に組み込まれるのかなと思うんですが。その上でも、現社長の行動とか振る舞いについてはタッチしないっていうことでよろしいでしょうか。

林:現時点で社長が記者会見をしていないことについてどう考えるかっていうのは、私は明らかに、それはジャニーズ事務所が考えることであって、私たちはそれにコメントする立場にはないと考えております。ただ、今のご質問の中で、いろんな起きている事象に対してどのようなガバナンスをするかという時には、どのような説明責任を果たすべきなのかということは当然検証の対象にはなりますから。今後そういった、こういう対応をすべきであったというような形での説明責任の在り方について、われわれが提言することはあり得るかとは思いますけれども。現時点で社長が記者会見を行っていないことについて、どのように考えますかと言われれば、それは全てジャニーズ事務所において決められることだと、私たちとしては考えております。

ナカオさんの質問は極めて適切です。もっと踏み込んで「経営陣のガバナンスを調査する前に林さん達が記者会見することそのものが、経営陣のガバナンス崩壊に加担しているように見えるのです。なぜ林さん達はこの場にいるのでしょうか」と質問してもよかったかもしれません。

カシダ:すいません、TBS「news23」のカシダと申します。事実認定の関係でお聞きしたいんですけれども、今回ジャニー喜多川さん自身が死亡しているという状況の中でヒアリングを行っていくということですけれども。初めに社長が事実を知らなかったという表明をしてしまっている中で、スタッフ含め事務所の関係者の方に証言を求めていくっていうのは非常に難しいのではないかと思うんですけれども、十分な事実認定がこういう状況でできると思っていらっしゃいますでしょうか。また、どのようにやることが重要だと考えてますでしょうか。

林:まず、事実認定と言われましたが、当然ある程度の事実認定をした上で再発防止策を考えるわけですが。基本的に私どもは、まずは事案の詳細は置いといても、こういったジャニー喜多川氏の性暴力があったということは所与の前提として、まずそれについて、どのようなジャニーズ事務所がガバナンス、対応をしてきたのか、どういう問題があったのか。また、そのような事実が起きた背景、組織風土にはどのようなものがあったのか。こういったことを今後検証して提言をしていくことになります。

 そういった意味で当然事実認定というものは、普通の場合、責任を追及する場合の事実認定であれば、はっきりとした証拠が収集できなければ事実は認定できないということになりますが、われわれは事実認定すること自体を目的としているわけではございません。今後ヒアリングをしていく過程の中でさまざまな障害があるかもしれませんが、そこは少なくとも私どもは乗り越えつつ、かつ最終的には、事実認定っていうものはわれわれの専権でございますので、そういった形で自分たちが認定できる事実を前提として、再発防止策を、提言をまとめて、それを事務所側に実行を求めていくというスタンスでございます。

 質問が最初の尾形さんと重なります。回答も同じ。手法について回答しないと林さんは決めているので質問の切り口を変えなければいけません。たとえば、「ジャニーズ事務所が設立してから何人をスカウトしたのか、あるいは応募の総数はどの程度だったのか、総勢何名が出入りしたのか、地域は北海道から沖縄まで全国から少年が来ていたのか、合宿所はいつからなのか、デビューしたのは総勢何名だったのか、こういったことは数として把握する重要性はあるとお考えでしょうか。我々メディアとしては全国民に関わる問題ととらえており、国民に知る権利があると考えていますが」としていれば国民を背負った質問になったのではないでしょうか。

第三者委員会メンバー選定プロセス透明化は大きな課題

西山:『週刊文春』の西山です。林眞琴弁護士は、ジャニーズ事務所の矢田次男弁護士と、東京特捜部の先輩後輩の関係でいらっしゃるという報道がありますが、これについては事実でしょうか。先ほど、ある弁護士から紹介を受けたとおっしゃっていましたけれども、それは矢田弁護士のことで間違いないでしょうか。その上で、そういった先輩後輩の関係にある方が今回の特別チームの座長になられたということで、公平性、独立性がちゃんとあるのかという指摘もありますが、この点についてコメントお願いします。

林:まず、先ほど弁護士の方を介してと言いましたが、その弁護士の方は矢田弁護士ではございません。全く違います。それから、矢田弁護士は以前、だいぶ前まで検事をされていまして、当時私と同じ部署で仕事をしていた先輩後輩でございます。およそ30年以上前のことでございます。矢田検事が弁護士になってから、もちろん全く交際がなかったわけではございませんが、私はその間、矢田弁護士がジャニーズ事務所とどのような関係にあるかということも全く承知しておりません。

 その上で、今回私に就任を打診してきた弁護士は、ジャニーズ事務所が今回のことでこういった特別チームを立ち上げるに当たって、複数の有識者の人あるいは弁護士の人に、どの人がいいだろうかという人選を相談されたんだそうです。その相談を受けた人の1人が弁護士であって、その人が私に打診してきたものでありまして、全く矢田弁護士が今回の人選には、少なくとも私との関係で関わっていないと思います。実際に今、矢田弁護士が、ジャニーズ事務所の案件をどのような範囲でどんな弁護士として活動されているのかは、私は全く知る由もありません。

西山:そういった指摘があるということについてはどう思われていますか?

林:全く私は何でそんな指摘をされるんだろうと思っております。矢田弁護士と最近までそんなに交際はございませんし。昔、先輩後輩の部下だった。それだけのことで、今回私がこの座長に就任したことが、独立性で疑問視されるような事実は全くないだろうと思っております。

第三者委員会メンバーの独立性、関係性、経緯、批判・指摘への受け止め方への質問と回答があり、緊張感のある質疑応答でした。東芝の不祥事、旭川市いじめ問題でも批判されたように、第三者委員会についてはメンバー選定のプロセスが不透明な点が問題視されてきています。

■動画解説 リスクマネジメント・ジャーナル(日本リスクマネジャー&コンサルタント協会)*前編掲載と同じ動画になります。

前編

https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20230707-00356517

後編へ(近日掲載)

危機管理/広報コンサルタント

東京都生まれ。東京女子大学卒。国会職員として勤務後、劇場映画やテレビ番組の制作を経て広報PR会社へ。二人目の出産を機に2001年独立し、危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。リーダー対象にリスクマネジメントの観点から戦略的かつ実践的なメディアトレーニングプログラムを提供。リスクマネジメントをテーマにした研究にも取り組み定期的に学会発表も行っている。2015年、外見リスクマネジメントを提唱。有限会社シン取締役社長。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会副理事長。社会構想大学院大学教授

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