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あなたは、パン派ですか? ごはん派ですか? 水災害の影響を少なくできるのはどっち?

橋本淳司水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表
著者撮影

お米を食べる量を増やしたい人は7割

あなたはパン派だろうか。ごはん派だろうか。

1962年度をピークに米離れの傾向はずっと続いている。1人当たりの消費量は半減した。近年も国内消費量は年間10万トンずつ減っている。食の洋風化にともないごはん派はパン派におされてきた。

ところが、タイガー魔法瓶株式会社の「物価高騰に伴う家庭の食卓の変化に関する調査」(2022年10月実施)によると、その傾向に変化が起きそうだ。

「小麦価格の高騰を理由に、お米を食べる量を増やしたい」と答えた人は70.7%、「パンや麺の価格高騰により、主食でお米を食べることが増えた」と答えた人は24.1%いた。

朝食ではパン派が多かったが(パン派46.3%、ごはん派24.1%)、昼食と夕食ではごはんを食べる人が最も多いという結果になった(昼食のごはん派42.1%、夕食のごはん派74.7%)。

日本の食は海外への依存度が大きいが、米の自給率はほぼ100%。一方でパンやラーメン、パスタに使用される小麦の自給率は17%にとどまる。

ごはんは国内の田んぼでつくられ、パンは海外の畑でつくられることの意味

では、これが水害とどう関係するのか?

それは、コメは国内の田んぼでつくられ、小麦の多くは海外の畑でつくられているということ。

そして、田んぼはコメをつくる以外にも活躍している。近年は、猛烈な雨が各地に甚大な被害をもたらすことが多くなったが、全国各地の田んぼはそのたびに水を受け止め、下流の被害をおさえている。

「田んぼダム」という言葉もある。田んぼの排水溝に「せき板」を設置し、水が流れる勢いを調整する。一時的に田んぼに水をためることで、大雨のときに下流の土地や河川に大量の水が流れこまないようにし、氾濫の被害を減らすしくみだ。

田んぼのこうした働きを守るには、雑草をとったり、あぜを保全したりする作業が必要で、これは農家の人が行ってくれている。

筆者撮影
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米を食べて農家の人を応援することも「流域治水」

あなたの住む流域にある田んぼは、米をつくる場所というだけでなく、水をためて地下水を育んだり、水害を防いでくれたり、多くのいきもののすみかとなっている。

そこでつくられた米を食べて農家の人を応援することも「流域治水」(ダムや堤防だけに頼らない広範囲の治水)の1つと言える。米離れが進んで、海外からの小麦への依存度が高まれば、田んぼが消えてしまうだろう。

こうした理由で、水災害の影響を少なくできるのはごはん派、ということなのだけれど、近年は米粉にも注目が集まっているから、ちょっと話がややこしくなる。グルテンフリーで健康的なことから、パンや麺などに使われるようになり、米粉用米の需要量は、2022年度に4万5000トンと5年前の倍になった。

こうなると単にごはん派、パン派ということではないかもしれない。ただ、田んぼが私たちの暮らしを守ってくれていることは変わらない。

水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。

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