あなたの知らない「名古屋めしスナック菓子」の世界
キヨスクでも百花繚乱! 名古屋=ご当地グルメ菓子の宝庫
名古屋に来たら名古屋めし。味噌カツや手羽先、ひつまぶしなど、地域独特の料理を旅の楽しみとしている人は少なくありません。そして、それだけでなく“名古屋に来たら名古屋めしスナック”をおみやげに買っていく人たちもまた多いのです。
「名古屋めしテイストのお菓子は当社の店頭だけで30~35種類はあります。ご当地グルメをお菓子にした商品がこれだけ数多くあるのは全国的にも珍しい。名古屋独特の傾向といえます」とは東海キヨスク中部支社中央支店支店長の伊藤良幸さん。「スナック類は手羽先味、甘いお菓子は小倉トースト味。この2種類が味の主流です。売れ筋は『じゃがりこ』『チップスター』『ジャガビー』の手羽先味、甘いものでは『小倉トーストランドグシャ』が発売7年目のロングセラーになっています」といいます。
ちなみに大阪では、JR新大阪駅「アントレマルシェエキマルシェ新大阪店」で販売している大阪グルメスナック(たこ焼き味、串カツ味、お好み焼き味、紅しょうが味など)は約15アイテム(運営者のジェイアール西日本デイリーサービスネット)とのこと。やはり名古屋めしスナックの数は突出しています。
そして今秋、名古屋めしスナックシーンに新たな動きが。「ここ数年は先行するロングセラーに割って入る商品がなかなか生まれていなかった。そこへ『おっとっと矢場とんみそかつ味』『小枝シロノワール味』とブランド力のある飲食店とのコラボ商品が登場しました。さらなる市場の活性化が期待されます」(伊藤さん)。
つまり名古屋めしスナックは、もともと手羽先や小倉トースト、豆味噌など、この地域特有の料理や調味料の味を再現したものが主流でした。これに「世界の山ちゃん」「矢場とん」「コメダ珈琲店」などの有名店のコラボ商品が加わり、売り場がいっそうにぎやかになっているのです。
「地元の人も認める味がヒットの鍵」とカルビーじゃがりこ開発担当者
名古屋めしスナックの中で王道なのが、手羽先テイストのじゃがいも系スナック。中でも根強い人気を誇るのがカルビーの「じゃがりこ」です。
「『じゃがりこ手羽先味』は2008年2月発売。当社のじゃがりこみやげの中で最も歴史のある商品です。しかもずっと売れ続けていて、2017年の販売実績は10種類ある全国じゃがりこみやげの中でもナンバー1でした」というのはカルビーグループのカルナック経営企画室の近間貴明さん。
このシリーズは他に「関西限定たこ焼き味」「九州限定明太子味」などが商品化され、キヨスクや高速道路のSAなどを中心に販売されていますが、名古屋の手羽先味は一番のヒット商品ということです。
「名古屋のテイストはバラエティ豊かで知名度も高い。お菓子になっても味の想像がつきやすいので安心してご購入いただける。さらに濃くてはっきりした味が多いため、スナック菓子として再現しやすい点も魅力です」と近間さん。
じゃがりこはロングセラーの「手羽先味」に続いて、今年10月「小倉トースト味」も発売しました。ひとつの地域で2つのご当地限定味の商品を出すのはじゃがりこ史上初。「手羽先味に次ぐ第2の柱にしたい」(近間さん)と大きな期待をかけています。
カルビーは、この他にも47都道府県のご当地ポテトチップスを開発・販売する「ラブ ジャパンプロジェクト」を2017年から実施。愛知県では「ポテトチップス 台湾ラーメン味」が今年10月に発売されました。こちらはおみやげ商品ではなく、地元の人向けにコンビニ、スーパーを中心に販売されています。「地元の皆さんとのワークショップで、地域に愛されている味を掘り起こすのがキャンペーンの目的です。今回は台湾ラーメンを推す声が最も強く、採用しました」とカルビー広報部の間瀬理恵さん。
ご当地ポテトチップスはもちろんですが、おみやげ商品として販売中のじゃがりこも、地元の人に認められるかがヒットの鍵だといいます。
「おみやげ商品も実はご購入者の半分は地元の方。名古屋から出張先などへ手土産として持っていかれるのです。自分で食べてもおいしく、訪問先でも名古屋らしいと喜ばれる。じゃがりこの手羽先味は、そうやってリピーターをつかむことでロングセラーになっていると思います」(近間さん)。
名古屋めしらしさを追求した江崎グリコ
ご当地スナックの先駆的メーカーが江崎グリコ。1994年から全国各地でおみやげ向けの「プリッツ」を開発・商品化しています。名古屋地区では2017年8月から「ジャイアントプリッツ手羽先味」「和ごころプリッツ味噌カツ味」を販売。同社もやはり地元の人が納得する味の表現に力を注いだと語ります。
「食へのこだわりが強い名古屋の人に認めてもらえる味をつくることを第一に考えました。他のエリアは“りんご”“レモン”といった素材・農産物のご当地商品が多い。対して名古屋は“メシ系”の名物が多いため、プリッツでどう表現するのか、とりわけ名古屋独特の“甘辛さ”の表現に苦心しました」と江崎グリココーポレートコミュニケーション部・竹内彩恵子さん。開発にあたっては名古屋の有名店を食べ歩き、例えば味噌カツはごはんと一緒に食べることに着目し、プリッツのベースを従来の小麦粉ではなく国産米粉に変更。その上に味噌カツの味つけをしたというこだわりぶりです。
「今後は台湾ラーメン、ひつまぶし味にもチャレンジしたい」とのこと。さらに魅力的な名古屋めしスナックの登場が期待できそうです。
予想の3倍のヒット!「おっとっと 矢場とんみそかつ味」
ご当地スナックの販売はキヨスクなどみやげ物売り場が中心ですが、コラボした企業の店舗でも人気商品となっています。
「最初の1カ月で、当社の店舗だけで見込みの3倍となる約3000箱が売れました」というのは「矢場とん」商品管理部の坂(ばん)元子さん。期待以上のヒットとなったのは、森永製菓と共同で開発し10月に売り出した「おっとっと 矢場とんみそかつ味」。特に「県外からのお客様が多い矢場町本店、名古屋駅エスカ店、名古屋城金シャチ横丁店でよく売れています」。
「過去に東海地方では手羽先味のおっとっとがありましたが、特定の店舗とコラボしたおっとっとを売り出すのは初めてです」と森永製菓中部統括支店の根本有二さん。
メーカーにとっては、おみやげ用商品は客層を広げる効果が期待できるといいます。「おっとっとの購買層の中心はお子様ですが、実はビールなど酒のつまみにもなり、家族で食べられる。おみやげとしてご購入いただくことで家族で食べるシーンが生まれ、幅広い世代に商品の魅力をアピールできるのです」とは同じく森永製菓中部統括支店の益子亮二さん。
「誰もが知っているロングセラーのお菓子とコラボできたことでブランド力向上につながる。息の長い名古屋みやげに育てていきたい」(矢場とん・坂さん)「かつて出した手羽先味よりも出荷量は2ケタ以上多い。矢場とんの名古屋での知名度で話題性が高まったおかげ」(森永製菓広報・寺内理恵さん)と双方のブランド力が相乗効果をもたらしているようです。
コメダは名物シロノワール+小枝で相互コラボ
森永製菓はチョコレートの分野でも「コメダ珈琲店」とコラボした「小枝 シロノワール味」「小枝 チョコノワール味」を商品化。さらにコメダ珈琲店ではシロノワールの小枝味が売り出されるというユニークな相互コラボにも発展しています。
「『小枝シロノワール味』は、店舗以外でもコメダ珈琲店をもっと身近に感じてもらいたいと、当社が企画して森永製菓様にご協力いただいて生まれました。今年1月に売り出し、非常に反響が大きかったため、今度は小枝味のシロノワールを、と開発にいたりました。他社とコラボレーションした季節のシロノワールはコメダ史上初めてです」とコメダ珈琲店広報の伊藤綾子さん。
両社のコラボは第2弾「シロノワール味アイスバー」(2018年8~10月)、第3弾「小枝チョコノワール味」(10月23日~)と続いています。おみやげ品としてだけでなく、全国のスーパー、コンビニでも販売されています。
コラボスナックの先駆け「世界の山ちゃん」
コラボスナックを早くから手がけてきたのが手羽先で有名な居酒屋チェーン「世界の山ちゃん」です。手羽先風味の柿の種やあられ、せんべいなどを2007年以降に順次商品化しています(他にさきいかなどつまみ類もあり)。
「メーカーさんからご提案いただき、当社が監修という立場で共同開発するケースが中心です。居酒屋のお客様以外の層に山ちゃんを知ってもらい、名古屋みやげとしてご購入いただき親しみを感じたり楽しんでいただくことが目的。当社の看板のひとつとして考えています」と経営元のエスワイフード営業企画部の高田笙子さん。山ちゃんの手羽先はスパイスがピリッと効いていて、さらにキャラクターの鳥男がトレードマークとしておなじみで、味にもビジュアルにもインパクトがある点がコラボのしやすさにつながっていると考えられます。
筆者が「名古屋めしスナック」22品目を実食チェック!
さぁ、ここからは筆者が各スナックを実食して評価。ご購入の折の参考にしてください。「再現度」は手羽先味ならどれだけ本物の手羽先に近い味になっているか、「お薦め度」はおみやげとして喜ばれそうか、をそれぞれ最大★3つで採点しました。ただし、採点はあくまで筆者の主観ですので、最終的にはご自身の舌でチェックしてお気に入りを見つけていただくことをお薦めします。(価格はキヨスクや通販での購入価格)
【手羽先 部門】
〇じゃがりこ 手羽先味(カルビー)864円/「再現度」★★ 「お薦め度」★★★・・・胡椒が後からピリッ!うまみ、ニンニクも効いている
〇ジャガビー 手羽先味(カルビー)378円/「再現度」★★ 「お薦め度」★★★・・・じゃがいもの甘味でじゃがりこよりマイルド。ほのかな味噌の風味が名古屋人好み
〇チップスター 手羽先甘辛醤油味(ヤマザキビスケット)540円(3缶セット)/「再現度」★★ 「お薦め度」★★・・・ひと口でガツン!とくるインパクトは抜群。辛みよりうまみが強い
〇ジャイアントプリッツ 手羽先味(グリコ)1174円/「再現度」★★★ 「お薦め度」★★★・・・プリッツの甘味がうま辛さを引き立てる。名古屋人がグッと来る味の濃さ
〇ハッピーターン 手羽先味(亀田製菓)1080円(あまから八丁味噌味との詰め合わせ)/「再現度」★★ 「お薦め度」★★・・・香りはまさしく手羽先。辛みは控えめでハッピーターンの甘味が活きている。容器の黄金缶がかわいい
〇世界の山ちゃん幻の手羽先風味 柿の種(スマイルリンク)140円/「再現度」★★ 「お薦め度」★★・・・山ちゃんらしいスパイシーさがガツン!と来る。ノーマルの柿の種以上のパンチを求める人にお薦め
〇世界の山ちゃん幻の手羽先しっとりせんべい(モントワール)172円/「再現度」★★★ 「お薦め度」★★・・・しっとり感が手羽先の食感にも通じる。ピリピリした刺激が後からやって来る
〇手羽先風味あられ(遠州屋)324円/「再現度」★★ 「お薦め度」★・・・食べ進むごとにスパイシーさが広がる。歯触りが小気味よい
〇てばさき棒(油屋)972円(10本×3袋)/「再現度」★★★ 「お薦め度」★★・・・うまみと辛みがひとつになって口の中に広がる。「~棒」の中で最も大人でも満足できる味では
【小倉トースト 部門】
〇小倉トーストランドグシャ(東海寿)780円/「再現度」★★ 「お薦め度」★★★・・・コクのある甘味とバターの塩気のコンビネーション。純粋においしい
〇カントリーマアム 小倉トースト風味(不二家)756円/「再現度」★ 「お薦め度」★★・・・バターの塩気が印象的でビスケットの中ではかなり独特な味わい
〇じゃがりこ 小倉トースト味(カルビー)864円/「再現度」★ 「お薦め度」★★★・・・じゃがりこの塩気と別添えのあんこのディップソースの絶妙なマッチングで、食べ慣れたじゃがりこが全く別の味に変身!
〇ハッピーターン小倉トースト風味(亀田製菓)864円/「再現度」★★ 「お薦め度」★★・・・ハッピーターンならではの塩気に後からしっかり甘味が。甘味としょっぱさの不思議な混然一体感
〇小倉トースト風味キャンディー(スマイルリンク)238円/「再現度」★★ 「お薦め度」★・・・塩気の後に小倉あん風のこのこってりした甘味が広がる、キャンディーなのにまさかの再現度
【味噌グルメ 部門】
〇おっとっと 矢場とんみそかつ味(森永製菓)648円/「再現度」★★★ 「お薦め度」★★★・・・後を引く甘辛さに矢場とんのみそかつの味がよみがえる再現度がスゴい! 味は濃いが口当たり軽やかで食べやすい。筆者の小学生の息子は何とごはんにかけて即席みそかつ丼に(笑)
〇和ごころプリッツ 味噌カツ味(グリコ)756円/「再現度」★★★ 「お薦め度」★★・・・味噌の風味が際立つ。プリッツの甘みが独特で味噌カツ味との相性抜群
〇ベビースター つけてみそかけてみそ味(おやつカンパニー)648円/「再現度」★★★ 「お薦め度」★★・・・まったりした甘味はまさに「つけてみそかけてみそ」の味。中毒性高し
〇ハッピーターン あまから八丁味噌味(亀田製菓)1080円(手羽先味との詰め合わせ)/「再現度」★★★ 「お薦め度」★★・・・ちょっとクセのある甘辛さ、味の濃さは確かに八丁味噌!
〇名古屋みそゴーフレット(桃の館)702円/「再現度」★★ 「お薦め度」★★★・・・みその甘じょっぱさが後を引く。甘いのが苦手な人ほどハマりそう
〇おにぎりせんべい 名古屋限定かけみそ味(マスヤ)864円/「再現度」★ 「お薦め度」★★★・・・ノーマルのおにぎりせんべいにコクを加えた感じ。味噌っぽさは控えめだが違和感なく食べられる
【その他 部門】
〇ポテトチップス 台湾ラーメン味(カルビー)124円/「再現度」★★★ 「お薦め度」★★★・・・ニンニクの香りの後に刺激的な辛さが。食べ口が軽やかで止まらなくなる。辛ッ!うまッ!止まらん!!の台湾ラーメンマジックを再現
〇小枝 シロノワール味(森永製菓)648円/「再現度」★★★ 「お薦め度」★★・・・シロノワールのシロップの風味が見事に広がる。サクッと感もシロノワールのデニッシュを彷彿させる
◆◆◆
手羽先味にしても小倉トースト味にしても、想像以上に味のふり幅が大きく、各メーカーの苦心の跡がうかがえました。それだけに、あれこれと食べ比べる楽しみもあり。旅のおみやげにお薦めなのはもちろん、地元の人にも味わっていただきたいと思います。いろいろと持ち寄って「名古屋めしスナック菓子パーティー」なんて面白いんじゃないでしょうか。さぁ、皆さんも「名古屋めしスナック菓子」の世界へ!
(写真はすべて筆者撮影)
【この記事は、Yahoo!ニュース 個人の企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、編集部が一定の基準に基づく審査の上、取材費などを負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】