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フローニンゲンの板倉滉、全国紙2紙でベストイレブン。アヤックス完封の勢いに乗って日本代表へ

中田徹サッカーライター
スタジアム内ラウンジはFWバルクの父がオーナー 【撮影:中田徹】

■ 1−0でアヤックスを完封したフローニンゲン。板倉滉、最終ラインで奮闘

 1−0。10月4日、タイムアップの笛が鳴り、フローニンゲンがアヤックスを下した瞬間、板倉滉、ウェッセル・ディマース、バルト・ファン・ヒンテゥムの3人は抱きあって喜んだ。

 3バックシステムと4バックシステムを併用する今季のフローニンゲンに於いて、この3人はまさに守備の中心。しかし、前節のトゥエンテ戦ではディマースの不調からほころびが生まれ、3点を失ってしまった。

「『やらないと』という思いがありました。前の試合はちょっとパッとせず、『もったいなかった』とみんなが気付いてましたから。今日は、アヤックス相手にチャレンジしてました。(今季開幕の)PSV戦から3試合しか経ってないけれど、今日はやりながら成長を感じました」(試合後の板倉)

■ ハーフタイムのゲキに応えた殊勲の2トップ

 板倉によると、この1週間で主に改善したのは、試合開始からアグレッシブにプレスをかけたこと、そして無理してつながず早めにFWへボールを入れたこと。

「だけど、『時間が生まれたら、つないでいこう』という話もしてました。DFラインは、キーパーのセルジオ(パット)がボールを持ったときに、(CBが)その真横にポジションを取った後、彼が蹴ってからプッシュアップした。それがすごいシンドいんだけど、みんなで集中して声をかけながらやってました。ハイ・インテンシティでプレーしたので、セカンドボールからアヤックスにやられることはあまりなかった。チームが集中して戦った結果が出たと思います」

 前半は8本のCKを許し(フローニンゲンはゼロ)、アヤックスがやや優勢に立ったが、後半はフローニンゲンのペースに。デニー・バイス監督はハーフタイム、アタッカー陣に「倒れてもいいから走れ! 立ち上がりの10分、20分でいいから走るんだ。それで駄目だったら代えるから」と指示を出したという。

 指揮官のゲキが実ったのは49分。味方のスルーパスに反応した長身ストライカー、ラルセンが左ハーフスペースへ走り込み、アヤックスの選手2人を引きつけながら強引にシュート。GKがセーブしたこぼれ球を、もう一人のストライカー、バルクが押し込んで、これが決勝ゴールとなった。殊勲の2人は70分までピッチの上を走り回った。

「『なるべくアヤックスの背後を狙っていこう』という話をしてました。あそこでアヤックスの最終ラインはマンツーマンで守るので、9番(ラルセン)が競り合ってもう一人の小さくて速いFW(バルク)がランニングする狙いでした」

■ フンテラール、トラオレへの放り込みに耐えたフローニンゲンの守備

 一呼吸置いてから、板倉は「いやあ、良かったなあ」と言って笑った。それもそうだろう。アヤックスは55分のネレス投入を皮切りに、68分にはトラオレが、76分にはフンテラールが前線に立ってフローニンゲンに圧をかけてきた。しかし、大ピンチは86分、アヤックスのシュートが続けて2度、バーを叩いた場面のみ。前半、あれだけアヤックスに許したCKも、後半は1本しか与えなかった。

――アヤックス、後半元気なかったですね

 そう問うと、板倉は「ねっ!フローニンゲンに勢いがあるから。アヤックスは勢いに押されていたでしょう」と即答した。

「だけど、アヤックスはところどころ、やっぱりうまいんだよねえ。それは感じます。タジッチの体の使い方とかうまい。ボランチ(フラーフェンベルフ)も取られたりするけれど、やっぱりボールを持ったときに嫌な感じがする。やっぱりポテンシャルは高いですよ。それから最後にフンテラールとトラオレが入ってくる。フンテラールはやっぱり嫌なところにいる。この二人は怖かった。しかも、ボールを受ける気がなかった。そこはハッキリしていた」

 ポストの名人、フンテラール、そしてトラオレに「ボールを受ける気がなかった」とは?

「サイドからのクロスに対して、2人で行く準備をしていたから。あれは怖い。タディッチのクロスもうまいし、タグリアフィコもすごい。怖かったけれど、このピリピリ感は面白かったですね」

■  日本代表のCB争いに意欲をみせる板倉

 このまま、いい流れで日本代表のオランダ遠征に挑みたい。

 吉田麻也――。そう私が言うと、板倉は「植田直通選手、冨安健洋選手」と続けた。

――いかに吉田選手&冨安選手のコンビに、板倉選手が割って入るか

「そこに入っていかないと駄目だと、自分も思ってます。『もう、変わっていかないといけない』。そう自分にもプレシャーをかけて普段からやってます。ベンチで代表の雰囲気を味わうという気持ちで行くつもりはない。やるからには試合に出ないといけないので、ガツガツしっかりアピールできればなと思います」

 ふと、無意識のうちに、今回の代表ウイークでの板倉はCBであることを前提にインタビューが続いていることに、私は気づいた。1年余り前、コパ・アメリカに参加したときの板倉はMFだった。

「今回もどうなるかわかりませんが、(日本代表の)登録はDFで入ってますし、フローニンゲンでもずっとCBでやってるし、この際もう、CBとしてスタメンで使ってくれたら、いいですね」

 翌朝、全国紙の『アルヘメーン・ダッハブラット』、『デ・テレフラーフ』は板倉を週間ベストイレブンに選出した。

サッカーライター

1966年生まれ。サッカー好きが高じて、駐在先のオランダでサッカーライターに転じる。一ヶ月、3000km以上の距離を車で駆け抜け取材し、サッカー・スポーツ媒体に寄稿している。

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