Yahoo!ニュース

スーパーウエルター級3団体統一王者となったジャーメル・チャーロが敗者を労わった一言

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
154パウンドの世界タイトル3団体を束ね、戦績を34勝(18KO)1敗とした(写真:Shutterstock/アフロ)

 9月26日興行のメインイベントとなったWBC/WBA/IBF統一スーパーウエルター級タイトルマッチは、ジャーメル・チャーロが第8ラウンド21秒でジェイソン・ロサリオをKOし、3本のベルトを束ねた。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 両者には差があった。初回、6回とWBCチャンピオンはWBA/IBF王者からダウンを奪う。

BZA PR/SHOWTIME Sports 提供
BZA PR/SHOWTIME Sports 提供

 そして第8ラウンド。ジャーメル・チャーロがロサリオの顔面を狙ったジャブがグローブを叩く。次の瞬間、WBCチャンピオンのジャブがボディーに決まると、ロサリオは腰からキャンバスに崩れ、大の字になった。立ち上がりかけたが、再び倒れ、レフェリーが試合を止めた。

Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME

 試合後、統一王者は語った。

 「俺が単なるパンチャーではなく、ビッグパンチャーであることを明確に示せたな。今夜はコーチが立てた作戦通りに試合を運べた。最初に奪ったダウンの後も、4回、5回とロサリオは前に出て、プレッシャーを掛けて来たよね。想定内だった。

 今、自分は伸びているし、いかに相手を倒すかを学習している。俺の両拳には爆発的なパワーがあるんだ。今回は、他のパンチよりもジャブを上手く使った」

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 「ロサリオもいいパンチを持っているんだから、倒し方を覚えないと。今夜のフィニッシュはジャブだったが、その前に繰り出した幾つかのパンチで、彼はダメージを負っていた。最後のボディーへの一発は、トドメだ。

 ロサリオが深刻な状態でないこと、そして無事に回復することを祈る。俺はリングで向かい合う全ての選手を尊敬しているからさ。

 俺たち兄弟は、揃って永遠に百獣の王さ。ずっとそうだった。夢を叶えたね。今夜のファイトは、夢と宿命の一部だ。非常に満足しているし、幸福を感じる。

 自分の体と相談し、次の試合を決めていくよ。俺は王であり、頂にいる。次の獲物は誰だ?」

 ジャーメルがロサリオの体を気遣う発言を聞き、私が思い出したのは、レノックス・ルイスがアンドリュー・ゴロタを初回95秒でKOで下したファイトである。

 試合直後、ルイスは「ゴロタが深刻な状態でないことを祈る。ボクシングはハードなビジネスで危険がつきものだから」と、敗者を慮った。https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20180111-00078831/

 今回のジャーメルの言葉と内容はほぼ同じ。統一スーパーウエルター級チャンピオンは、知性も感じさせる。

 確かに、チャーロ兄弟の次戦が楽しみだ。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事