「旧統一教会」問題の合同電話相談窓口の開設がスタート 被害相談の声が、社会を変える。
9月5日から30日まで、旧統一教会問題の相談を受け付ける「合同電話相談窓口」が開設されました。初日から「相当数の電話を受け付けている。社会の関心の高さを感じた」との葉梨法務大臣の声も報道されています。
旧統一教会被害の電話相談を開始 法相視察、実態把握急ぎ救済へ (共同通信)
旧統一教会の問題には、どのようなものがあるのでしょうか。
相談内容は今後、わかってくると思いますが、現状で考えられることを列挙しておきます。
【霊感商法】
1980年代に旧統一教会の信者らが行った「あなたには悪霊がとりついている」「浮かばれない先祖の霊がいる」と根拠のない話をもちかけて不安を覚えさせて、高額な壺や多宝塔、印鑑を販売する「霊感商法」の被害が多発して社会問題になりました。それから40年ほどたって、やっと国が被害救済のために動き出しました。
【高額献金の問題】
旧統一教会の問題は、霊感商法だけではありません。土地や建物を担保にして、本人の生活を破綻させるまでに高額な献金をさせ続けます。今回、旧統一教会の問題の発端となったのが、山上容疑者が安倍元首相を銃撃して死亡させた事件ですが、容疑者の母親が1億円以上の献金をして、家庭が崩壊したために教団に恨みを持ち、それが犯行につながったとされています。
この世の物はすべてサタンの物
教団はなぜ多額のお金を集めるのでしょうか。それは教義において、この世の物はすべてサタン(悪魔)の物(万物)とされているために、すべてのお金を神のもとに捧げなければならないからです。
【元信者らの過酷な活動実態】
日本人信者らは、教義に裏打ちされていることもあり、メシヤである文鮮明・韓鶴子総裁のために、教団の上層部から高い金額ノルマを与えられて、必死にそれを果たそうと活動してきました。
私自身も信者として中にいたのでわかるのは、信者らは万物以下の存在であるために、ほぼ人権のない世界で活動していた実態です。献身(出家)すると、睡眠は3~4時間で、教団側から渡されるお小遣いも月に1万5千円で、一日中、お金集めや伝道という街頭、訪問などでの勧誘活動をさせられます。
時に、熱が出て体調が悪くても、上の人間からは「心にサタンが入った」と言われて、私自身も外に出ての伝道をさせられた経験があります。
信者らの活動に自主性はなく、すべてが教団の命令・意思に従って行動することになります。それゆえに、貴重な青春時代の時間を奪われてしまったと感じている人は多くいます。
当時、教祖の指示で、たくさんの日本人女性が海外宣教に向かいましたが、現地で病気になったり、亡くなったりした人がいることも聞いています。何より、文教祖が決める異性と結婚して、韓国など海外に行き、異性から暴力を受けたりするなど、過酷な生活を強いられて身も心もボロボロになって、帰国した人もいます。
【家族の被害・苦悩】
何より、家族の苦悩は計り知れません。自分の子供が教団に入信したことで、育て方を間違ったのだろうかと悩む方もいます。そして違法活動をして、誰かを誘い、どこかの家庭を崩壊させてしまっている。その現実に心を痛める家族もたくさんいます。しかし幾ら信者である子供を説得しても脱会せずに、献金のための無心ばかりをしてきます。家族もまた、被害者です。
【2世信者の苦しみ】
特に、親が信者である2世らの問題も深刻です。教団は一般の人たちへの布教活動がかなり難しくなっているために、いかにして信者らの子供たちに教義を教え込み、敬虔な信者にさせるのかに腐心しているといわれます。
こうした親や教団の一方的な押し付けに耐え切れずに、家を出たいと思っている人たちも多くいるかと思います。しかし誰も頼れないために、自立したくてもそれができない子もいます。親と断絶して困窮してしまう2世の子供たちもいて、その受け皿がない状況です。
【信じるものを選ぶ自由が奪われている】
これは私が受けた、旧統一教会であるという正体を隠した伝道にもつながってくるのですが、2世たちは生まれながら、あるいは小さい頃から教団の教えを受け入れなければならず、まさに「信じるものを選ぶ自由」が奪われている状況です。
教団の教えでは恋愛感情を持つことは「罪」とされていますので、思春期に異性を好きになる思いを抱くかと思いますが、教えとのはざまのなかで悩まされている人も多くいるはずです。旧統一教会の問題は、霊感商法や高額な献金だけでなく、様々な問題をはらんでいます。
自助努力による解決は期待できない
今、国をあげて旧統一教会の問題にメスを入れて、多くの国民も関心を示しているにもかかわらず、当事者である旧統一教会側は「霊感商法なるものは、過去においても、現在も当法人が行ったことはありません」と、会見で述べ続けており、もはや自助努力による解決は期待できない状況です。
今回は、内閣官房、警察庁、法務省、消費者庁に、総務省、文部科学省、厚生労働省が加わり、各省庁合同の相談電話になっています。
これまで旧統一教会によって被害を受けてきながら、その思いを封印してこざるをえなかったその声を、ぜひともこの相談電話に寄せてください。その声は、必ずこの問題を解決できる大きな力になるはずです。
関係省庁連絡会議 「相談集中強化期間」合同電話相談窓口
フリーダイヤル 0120-090590 受付時間 午前9時半~午後5時(平日)
消費者庁と国民生活センターに話を聞きました
2019年6月に消費者契約法が改正されて、合理的に実証することが困難な特別な能力である「霊感」を用いた契約は取り消せるようになりましたが、厄介なことに、旧統一教会は、物品を一般に販売する形から、今は、信者を含めて教義を植え付けた人たちに献金をさせる形でお金を集めるようになっています。
献金だった場合でも、霊感商法による契約は取り消せるのでしょうか。
先月、消費庁に話を伺いました。
「消費者契約法では、霊感関係の規定を設けていますが、この法律が適用されるためには、それがまず契約であることが必要です」
つまり、被害者が行った献金や寄付が、契約にあたるのかがポイントだということです。
「民法の話になってきまして、これが(民法における)『贈与契約』にあたれば、(相手方が)宗教法人ということになりますと、消費者契約法が適用されて、霊感関係の規定のところの要件を満たせば、取り消しになるという立て付けになっています。しかし、その寄付(献金)が、契約にあたるかどうかが難しいところでございまして、民法のところの贈与契約にあたるか、そうでないのかというところの解釈が決め手になります」(同庁)
消費者契約法の逐条解説でも「宗教活動に伴う喜捨や布施が、宗教法人に対する『贈与』(すなわち、契約)に当たるかどうかは、民法の解釈によって定まるものであって」とあります。この辺りは、前回の消費者庁による「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」でも議題に上がっていましたが、今後、法律家の中でしっかりと議論して頂き、国民にもわかりやすい形での明示を願うところです。
祈願書を買わされる事例
国民生活センターにも開運・霊感商法について、様々な相談が寄せられています。
「街でスピリチュアルカウンセラーの看板を見て、20分3000円とあったので軽い気持ちで中に入った。カウンセリングを受けると、あなたには霊がついているので、除霊しないと子供の代にも及んで大変なことになる。1つの課題を解決するには30万円。2つ解決するには60万円といわれた。高額のため支払えないと伝えたら、不安になることを延々といわれて断り切れず、約30万円、毎月1万円の入金と書かれた祈願書を渡された。しかし解約したい」(40歳代女性)
この事例では、契約書のたぐいはありません。しかも考えてみれば、これは非常にうまいやり方といえます。相手に1万円という少額を払わせながら、徐々に霊の恐怖や思想を教え続けられるわけです。となれば、マインドコントロールがうまくいった時点で、一気に30万円以上を払わせることも可能です。
今回は本人からの相談のようですが、寄付・献金などに関しては「ご家族からの相談が多い」ということです。本人が信じ切って献金することで、家族の側が生活などに苦しみ、被害に遭うことになります。
相談傾向は変化している
同センターによると「開運・霊感商法の相談の傾向は2014年に公表した時とは傾向が変わってきていて、物品販売に関するものよりも、ここ数年はインターネットを通じての非対面の契約(占いサービス、祈祷のサービスなど)に関する相談が多くなってきている」と話します。
旧統一教会の問題を含めて、開運・霊感を使ったサービスによるトラブルの増加がまったなしで進んでいるともいえます。