ロサンゼルスやアリゾナ州などアメリカ南部から「珍しい雪の便り」
温暖なことで知られるアメリカ南部から、続々と雪の便りが届いています。
ロサンゼルスから
23日(土)には、ロサンゼルス郡マリブに雪が降りました。突如現れた雪景色に、ドライバーの心は完全に乱され、車を放置してそり滑りや雪合戦に興じる人もいたほどでした。その一方で、慣れないツルツルの道路に悪戦苦闘して、立往生したり、事故を起こしたりしたドライバーもいたようです。
マリブに前回雪が降ったのは2007年のことで、その前は20年以上前だったようです。
なおロサンゼルスの中心部にある観測所では、積雪の記録はありませんでした。この観測所に残る積雪の記録は、1882年、1932年、1949年の3回のみです。
(↑マリブの雪景色)
アリゾナ州から
一方、25日(月)にはカリフォルニア州の隣のアリゾナ州の州都フェニックスでも珍しい雪が降りました。フェニックスと言えば、夏には気温が50度近くもなる灼熱の地です。しかし同日は1948年の観測開始以来、午後(12時から18時)の気温としてはもっとも低いマイナス2.2度まで下がりました。
アリゾナ州では学校や休校になったり、新型コロナウイルスの検査所が早々にしまったりと、様々な雪の影響が出たもようです。
(↑フェニックス近郊の景色。雪の中じゃれ合うコヨーテ。)
ラスベガスにも降雪予報
ラスベガスからも雪の便りが届きそうです。
ラスベガス中心部の「ストリップ」と呼ばれる場所では、26日(月)夜に雪が予想されています。ウェザーチャンネルによると、これまでストリップで雪が観測されたのは2019年の2回、2008年、2003年の4回とのことですから、これまた珍しい事態と言えます。
雪の南限を探して
実はもっとも南でも雪が降っています。それはハワイ島のマウナケア山で、26日(火)までに20センチの大雪が降る見込みです。
このマウナケア山は、北緯19度に位置しており、アメリカ50州における雪の南限と言えそうです。
では日本の雪の南限はというと、北緯23度の沖縄県久米島でしょう。1977年にみぞれが降っています。
では世界ではどうでしょうか。実は赤道直下の記録があります。
それはエクアドルのカヤンベ山と、ケニアのケニア山です。それぞれ赤道の真下にある5000メートル級の険しい山で、頂上には万年雪が積もっています。
赤道雪を追いかけて脱走した捕虜
赤道直下にありながら雪をたたえる、そんな不思議な魅力に取りつかれたのが、戦時中の3人の捕虜でした。
第二次大戦の最中、イギリス軍の捕虜して捕らえられていたイタリア人ベヌッチ氏が、毎日収容所からケニア山を眺める中、どうしても登頂したいという衝動に駆られました。彼は2人の捕虜と共に脱獄し、不完全な装備と少しばかりの食糧を携えて、世界で初めてケニア山(レナナ峰)登頂を達成しました。この話は「ノー・ピクニック・オン・マウント・ケニア」というタイトルの本にもなっています。
下山後、自主的に刑務所に戻った彼らを待ち受けていたのは、28日間の独房入りでした。しかし世紀の偉業を成し遂げたことで減刑され、7日間に短縮されたようです。もし捕虜でなければ英雄となっていたでしょう。
赤道直下の太陽に照らされた山頂の輝かしい雪が、彼らを前人未踏の山に突き進ませたのかもしれません。