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救急車の有料化?選定療養費を取るってどういうこと? #専門家のまとめ

薬師寺泰匡救急科専門医/薬師寺慈恵病院 院長
(写真:イメージマート)

茨城県が、緊急性のない救急搬送の場合、患者から選定療養費として別途費用を徴収する方針を決め、12月2日から運用を開始しました。救急車の有料化ではないのか?選定療養費ってなに?といった疑問がありそうで、この部分を丁寧に説明した記事も少ないので、今回は選定療養費についてまとめます。

ココがポイント

茨城県内の病床数が200以上ある22の病院ではきょうから、患者が救急車で搬送されたときに、緊急性が認められなかった場合、病院側が患者から「選定療養費」を徴収します。

都道府県単位でのこうした運用は全国で初めてです。
出典:テレビ朝日放送局 2024/12/2(月)

初診時にかかりつけ医の紹介状を持たず、一般病床が200床以上ある大病院を受診すると、患者は追加で選定療養費を負担する。

県内22の大病院で、救急車の要請時に緊急性がなかったと病院の医師が判断すると、患者は搬送先の病院に一定額を支払うことになる。
出典:朝日新聞社 2024/12/2(月)

初診時選定療養費とは、該当する病院の初診時に、紹介状を持参していない場合に発生する費用です。通常の医療費とは別に療養費を負担する必要があり、金額は7000円以上と定められています。

ただし、公費負担医療制度を利用している場合や入院を伴う場合のほか、医師の判断によっては選定療養費を請求されないケースもあるようです。
出典:ファイナンシャルフィールド 2024/9/11(水)

エキスパートの補足・見解

特定機能病院や、一般病床200床以上をもつ地域医療支援病院などに紹介状なしで受診したら、7,000円を選定療養費として徴収することが義務付けられています。これはそもそも初期の診療は地域の病院で、高度・専門医療は基幹病院で行うという外来機能分担を目的にしています。救急外来の受診も同じで、紹介状を持たないで受診した場合には、選定療養費徴収の対象となります。

ただし、休日夜間受診患者や、外来受診から継続して入院した患者からは負担を求めなくても良いとされています。これまでは、救急搬送された患者から徴収するかどうかは各病院の裁量とされていました。

三重県で一部地域において足並みをそろえたことが話題となりましたが、今回は茨城県が全県下で方針をそろえたのがポイントです。

今回の件は救急車の有料化ではありません。そして200床未満の病院はこれまで通りです。大病院への負担を減らそうという目論見とのことですが、「200床未満の病院に搬送してください」などと言われたら搬送業務に逆に負担がかかるのではないか、大病院も窓口でクレームの温床になるのではないかといった懸念はあります。今後どのような変化がもたらされるか着目が必要です。

救急科専門医/薬師寺慈恵病院 院長

やくしじひろまさ/Yakushiji Hiromasa。救急科専門医。空気と水と米と酒と魚がおいしい富山で医学を学び、岸和田徳洲会病院、福岡徳洲会病院で救急医療に従事。2020年から家業の病院に勤務しつつ、岡山大学病院高度救命救急センターで救急医療にのめり込んでいる。ER診療全般、特に敗血症(感染症)、中毒、血管性浮腫の診療が得意。著書に「やっくん先生の そこが知りたかった中毒診療(金芳堂)」、「@ER×ICU めざせギラギラ救急医(日本医事新報社)」など。※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。

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