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話題のヒートショックの正体 #専門家のまとめ

薬師寺泰匡救急科専門医/薬師寺慈恵病院 院長
(写真:アフロ)

歌手で俳優の中山美穂さんが自宅の浴槽で亡くなっていたことがニュースになっていました。とても残念なことです。毎年この時期になると、浴槽で亡くなる方が増えてきます。ヒートショックという言葉もよく用いられますが、これは一体なんなのでしょうか。ヒートショックについて改めて言葉の定義を見直しつつ、入浴中の死を避けるために、どのように対策すれば良いのかをまとめます。

ココがポイント

年間6885人が浴槽内で溺死(中略)特に1月が一番多くなるそうで、原因の多くはヒートショックと言われています。 
出典:MBS NEWS 2024/12/12(木)

ヒートショックとは、暖かい部屋から寒い部屋への移動など、急激な温度の変化によって身体がダメージを受けることです。
出典:tenki.jp 2024/12/13(金)

熱中症となり、脱力したり失神したりして溺れてしまうというのが入浴関連死の病態と考えられています。(中略)41度のお湯であれば、10分間入っても体温は38度以下に保たれる
出典:Yahoo!ニュース エキスパート 薬師寺泰匡 2024/11/27(水)

エキスパートの補足・見解

入浴中の死亡事故が後を絶たず、毎年冬に多いことから、以前は寒暖差による血圧変動が原因ではないかと考えられていました。しかし、実際に入浴中の救急搬送例や死亡例を調べてみると、心筋梗塞や脳梗塞といった血管病変は10%もなく、大半は体温上昇に伴う体調変化、つまり熱中症と言える状態でした。高体温で意識消失すると、そのまま浴槽で溺れてしまいます。

寒暖差に注意を払っても、多くの事例は防ぐことができません。対策として有用なのは、42度以上のお湯に長時間浸からないということです。給湯温度や風呂の温度を調節可能な場合は、高く設定しないようにしていただき、もし調節が難しい場合は、浴槽の温度に注意をしていただければと思います。

また、家族や同居者が長い時間入浴している場合には、声掛けをするなどの対策も重要です。あとはお酒を飲んだ後の長風呂は避けましょう

もちろん、頻度は低いものの、自律神経刺激による血圧変動で、心筋梗塞や大動脈解離、脳卒中につながる場合もあり得ますので、浴室と脱衣所の温度変化を少なくするなどの対策も可能な限り行っていただければ幸いです

救急科専門医/薬師寺慈恵病院 院長

やくしじひろまさ/Yakushiji Hiromasa。救急科専門医。空気と水と米と酒と魚がおいしい富山で医学を学び、岸和田徳洲会病院、福岡徳洲会病院で救急医療に従事。2020年から家業の病院に勤務しつつ、岡山大学病院高度救命救急センターで救急医療にのめり込んでいる。ER診療全般、特に敗血症(感染症)、中毒、血管性浮腫の診療が得意。著書に「やっくん先生の そこが知りたかった中毒診療(金芳堂)」、「@ER×ICU めざせギラギラ救急医(日本医事新報社)」など。※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。

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