前作も大いなる伏線? デジタルネイティブの情報量とスピード感だけじゃない『search/#サーチ2』
忽然と姿を消した高校生の娘の行方を父親が追うというストーリーが、全編パソコン画面上で進行する斬新さで驚かせた『search/サーチ』から5年。『search/#サーチ2』では、LAの高校生ジューンが、異国で消息を絶った母親を捜索するサスペンススリラーが全編デジタルデバイス上で展開する。
18歳のジューン(ストーム・リード)は、幼い頃から母親グレイス(ニア・ロング)と2人暮らし。過保護気味なグレイスが、恋人ケヴィン(ケン・レオン)とコロンビアへ旅行に出かけているうちに、友人たちと羽根を伸ばすのを楽しみにしていた。
しかし、帰国予定日になっても2人は戻らず、消息もつかめない。警察や大使館に掛け合う一方で、ジューンはスマホの位置情報や監視カメラなど、行動の全てがデジタル上で記録される社会ならではのアプローチで独自に母の痕跡を追うのだが…。
シリーズ第2弾とはいっても、キャストは一新され、前作のキム父娘と今作の母娘に繋がりはない。とはいえ、キム一家の事件は本作でも触れられており、その描き方からしてセンスが光るのが、前作で編集を手掛けた監督・脚本のウィル・メリック&ニック・ジョンソン。
ちなみに、前作の監督・脚本アニーシュ・チャガンティは、今回は製作に回っているが、製作・監督・脚本の5人は前作を作ったときと同じメンバーで、役回りが変わっただけというあたりも、本作の面白さがシリーズの遺伝子を受け継いでいるからこそと納得させる。
娘が幼い頃のホームビデオが冒頭に映し出されるスタイルも含め、基本的な見せ方は同じ。だが、この2作、何が違うって、画面上の情報量とデバイス操作のスピードが桁違い。
なにしろ、前作の主人公デビッドは、SNSに疎い中年男性。それがまた、彼のパソコン操作や画面上にひとつひとつ表示される情報に食い入らせ、「おお、全編パソコン画面上で物語が進むとはこういうことか!」と未だかつてなかったストーリーテリングに感心するのにも、ちょうどいい感じのスピードをもたらしていた。
しかし、ジューンはデジタルネイティブ。FaceTimeやInstagramなどなど、彼女が日常的に使用しているアプリも豊富だけに、デバイス上に同時に展開される情報量も飛躍的に多くなっている。彼女がさまざまな機能を使うスピードも速い、速い。この5年でさらに進んだデジタル社会を映し出す膨大な情報量とスピード感は、観客をどんどんサスペンスに引き込んでいくのだ。
そうして進んでいくストーリーは、次々と登場人物に疑惑の目を向けさせるのだけれど、観客目線での容疑者の確定はなかなかできない。なぜなら、“疑惑の人物”の動機が思い当たらないから。
そう、「誰が、いったい何のために?」という、ミステリーの一番大事なところでもめちゃくちゃ楽しませてくれるのが、このシリーズのもうひとつの醍醐味。
人は自分の目で見たものを信じる。逆にいえば、それは罠を仕掛ける側にとっては大きな武器となる。全編デバイス上で展開するという時代の先端をいくストーリーテリングを駆使し、キャストの多様性や犯罪の性質に、リアルな“現在”を感じさせつつ、「犯人探し」というミステリーの昔ながらの醍醐味も楽しませてくれるあたりが、実にお見事なのだ。
前作のディテールを覚えていなくても、前作を観ていなくても、この第2弾の伏線の張り方には、観終わって感動すら覚えるはず。
けれども、この興奮のあとに、『search/サーチ』を見返すと、あの第1作が観客に刷り込んだ、あるイメージもまた本作の大いなる伏線になっているのではと思えてくる。
『search/#サーチ2』
全国公開中
原題:MISSING
監督・脚本:ウィル・メリック&ニック・ジョンソン 出演:ストーム・リード、ニア・ロング、ヨアキム・デ・アルメイダ、ケン・レオン、ダニエル・へニー
(画像提供・ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント)