バスケットボールU19代表:ツインタワーでディフェンスが強固になった日本、4Qの猛攻で韓国を撃破
韓国との試合を前に、カナダ、スペイン、イタリアという日本を破った3チームが、U19ワールドカップで準決勝進出を果たした。イタリアに惜敗、スペインも38分間互角に戦ったことでも、このU19日本代表は今までのチームと大きく違う。しかし、永遠のライバルである韓国に敗れれば、これまでの努力が台無しと言っていいくらい、絶対に勝たなければいけない試合だった。
1Qのスタートは最高。韓国のゾーンディフェンスに対し、八村塁を皮切りに明成のチームメイトだった三上侑希も3Pシュートで続く。西田優大が3本連続で決めて勢いを増した日本は、5分41秒で15-5とリード。さらに、左ウイングでボールをもらった八村が、韓国のハン・スンヒィをドライブで抜き去ると、豪快なダンクを4分38秒に叩き込むなど、日本は1Q終了時のスコアで25-11と完全に主導権を握った。
ところが、ベンチ陣が出てきた2Qは状況が一変。マンツーマンへ変えた韓国のディフェンスに対するオフェンスはまったく機能しなくなり、ファストブレイクの機会がやってきても、誤った判断からブロックショットの餌食となり、反転速攻で失点するなど、流れがあっという間に韓国へと移ってしまう。特にターンオーバーが多発した序盤、トーステン・ロイブルコーチは7分25秒でタイムアウトを取ったが、1ポゼッションタイミングが遅かった。シン・ミンソクに3Pシュートを決められる前、鍵冨太雅がパスミスのターンオーバーを犯した直後に請求していれば、悪い流れは継続しなかっただろう。
シューティング・スランプから抜け出せずにいた杉本天昇が、5分13秒と4分32秒に3Pを決めたのはプラスといえ、韓国もハ・ユンギとハン・スンヒィのフロントラインが得点を重ねる。3点ビハインドで後半を迎えると、増田啓介相手にミスマッチになるハ・ユンギにボールを徹底的に供給し、2本のレイアップで36対35とついに逆転。さらに、パク・ジウォンもドライブから2度フィニッシュするなど、韓国は2Q終盤から18連続得点を奪い、3Q終了時には58対47とリードを11点まで広げた。
「ロッカールームで軽く入らないように言ったんだけど、イタリア戦同様の問題になってしまった。(昨年の)アジア選手権では35点取られたから、絶対に再現しちゃダメだった」とロイブルコーチが振り返ったように、3Qのスタートでまたも失敗した日本は、ハ・ユンギに対応しきれない増田に代え、2分38秒にシェーファー・アヴィ幸樹を投入。「チェコやドイツと試合したとき、あまり機能しなかった」と言う指揮官だったが、八村とのツインタワーをやるしかない状況に追い込まれたのはまちがいない。正直なところ、2Qでのタイムアウト同様、決断のタイミングが遅いという気もしたが、"Too late"、遅すぎるところまでいかなかったのは幸いだった。
4Q序盤、オフェンス・リバウンドを奪ったハ・ユンギが、ゴール下からイージーショットと思われたところで、八村が見事にブロックショット。このプレイをきっかけにディフェンスはよりタフさを増し、7分41秒にシェーファーが西田のアシストからダンクを叩き込むと、勢いが日本に戻ってくる。左ひざを痛めた状態で出場し続ける西田はドライブで何度も仕掛け、7分4秒に3Pプレイとなるレイアップを決める。さらに、2Qでリズムをつかんだ杉本は、6分32秒にジャンパーを決めると、5分4秒に水野の3Pシュートをアシスト。今大会で自信を失いかけていたが、「コーナーは絶対来ると思ったので、あそこで3Pを自分で決めれば流れも来るし、チームでもどんどん(勢いを)上げていけるかなと思い、自信を持って打ちました」と言う水野がシュートを決めたことで、日本は一気に逆転できる態勢に入った。
「マッチアップ的にも僕が小さいセンターを守ることになっていて、増田にミスマッチが起きていて、そこを突かれて点差を広げられたんですけど、そこからアヴィがしっかりやってくれた。僕も13番(ハン・スンヒィ)をしっかり守れるし、アヴィも体(のサイズ)もありますし、相手のセンター(ハ・ユンギ)に負けるわけがない。アヴィはディフェンスでもオフェンスでも活躍したと思います」
八村がこう語ったように、韓国は日本のツインタワーをまったく想定していなかったのか、ハ・ユンギで攻められなくなると、オフェンスがまったく機能しなくなる。「あのダンクからチームに流れが入ってきたと思うし、彼はチームのムードメーカー。アヴィみたいなのがいると、僕も今までドライブからシュートまでしか行けなかったけど、そこからパスも入るようになるし、もっと自分のプレイができるようになる。その中で自分にディフェンスが来ても、アヴィにパスすれば絶対決めますし、そういうコンビができてよかったと思います」と八村の言葉が示すように、シェーファーの今大会2度目となる10点、10リバウンドのダブルダブルは、チームに大きな活力をもたらした。と同時に、U19ワールドカップ開幕の2週間前に左足首を捻挫して万全でなかったといえ、頼れるオールラウンダーのヤン・ジェミンがまったく点を取れなかったのは、韓国にしてみると大誤算。3分47秒にハ・ユンギが19点目となるダンクを決めるも、これを最後にまったく点が取れなかったのである。
対する日本は八村がスティールし、水野のアシストで西田がジャンパーを決め、4分41秒に63対62とついに逆転。韓国がタイムアウトを取った直後のオフェンスでは、「セット・プレイで狙いどおり」と語った八村が、杉本のアシストから豪快なアリウープダンクを叩き込み、日本のリードが3点に広がる。さらに、2分25秒には八村のドライブから、シェーファーが見事に合わせてフィニッシュ。ツインタワーはディフェンスだけでなく、オフェンスでも機能することを示した日本は、ラスト5分で19-2という猛チャージで韓国を引き離し、逆転で大きな意味のある勝利を手にした。
「ファンにはエキサイティングなゲームだったかもね。今日は5年寿命が縮まったから、マリ戦を含めると15年だよ。3Qはひどかった。リバウンドとインサイドのディフェンスでやられていたので、フロントラインをビッグ・ラインナップにし、ポイントガードも幹太にしてサイズを上げた。それが悪い状態を変えた要因だと思う。天昇はウイングのポジションで助けになった。2番、3番の選手たちがうまくできていなかったから、コートに出たらより一層のエナジーをもたらしてくれた。彼もカムバックのカギを握っていたと思う。ディフェンスで止めるだけでなく得点も必要なので、天昇は両方ともよくやってくれた」とは、試合後のロイブルコーチ。八村は大会序盤で苦戦していたフリースローを12本全部成功させるなど、21点、9リバウンド、4アシスト、3スティール、2ブロックショットと攻防両面で期待に応えた。4Qに逆転のジャンパーを決めた西田も4本の3Pを含む21点、杉本も11点と、マリ戦同様に4人が2ケタ得点を記録したのも勝因と言えよう。
4Qで韓国から8本のターンオーバーを誘発させ、FGを12本中2本しか決めさせず、6失点に抑えたディフェンスの頑張りは称賛に値する。逆転できずに敗れていたら、マリ戦の勝利、スペインやイタリアとの激闘は、まったく意味のないものになっていた。「結果を見ていくと、我々はベスト8どころか、ベスト4のチャンスもあった。あのイタリア戦がすべてだったけど、今大会での12位以上を確定し、非公式のアジア選手権で我々は頂点に立った(日韓戦の前にイランはエジプトに敗れたため、アジアの最上位が決定)。これは日本代表にとって1967年(世界選手権での11位)以降で最高の成績だから、みんなをすごく誇りに思う」と、ロイブルコーチは勝利を素直に喜ぶ。次の相手は地元のエジプトで、非常にフィジカルなチームだ。しかし、攻防両面、メンタルでもタフなチームに成長した今の日本ならば、決して勝てない相手ではない。