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中国資本のミラノ勢、米資本のローマ…イタリアのサッカーファンは外資に納得なのか?

中村大晃カルチョ・ライター
初の「チャイナミラノダービー」でランチタイム開催を皮肉ったコレオグラフィー(写真:ロイター/アフロ)

2016-17シーズンのセリエAは、ユヴェントスが前人未到の6連覇を達成して幕を閉じた。来季も、対抗馬のローマとナポリが絶対王者を止められるかどうかが注目ポイントとなるだろう。一方で、大型補強のうわさもあるミラノ勢の復活に期待するファンも少なくないはずだ。

ミラノ勢が補強に動けるのは、もちろん、インテルに続いてミランも中国資本になったからだ。今季のセリエAを戦った20クラブのうち、外資が運営するのは、ローマ、パレルモ、ボローニャと合わせて計5クラブ。2011年のローマを皮切りに、セリエの外資クラブは少しずつ増えている。

では、イタリア人サポーターは、自分たちの愛するクラブが外資となること、あるいはすでになったことを、どう思っているのだろうか。明確な答えを出すことは不可能だが、ひとつのバロメーターを提示したのが、1日付のイタリア『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙のアンケートだ。

◆理想ではないが理解は広まる

これによると、「応援するチームが外資になったらうれしいか」との質問に、43%が「まったくうれしくない」と回答。大半が「イタリア資本のイタリアクラブ」を望んでいることが分かる。

ただ、「少し」という回答も23%あり、この数字は25~34歳の若い世代(29.8%)やサッカーファン(31.1%)の間ではさらに伸びている。プレミアリーグやリーガエスパニョーラでも「サッカークラブのグローバル化」が広がっていることで、イタリアの若いサッカーファンの間でも、外資への扉を開こうという考えが増えつつあるようだ。

実際、「イタリアのチームの会長はイタリア人であるべき」という考えは36%にとどまり、「経済的な理由からのみ外国人でもよし」の18%と、「イタリア人でも外国人でも気にしない」の29%を合わせると、47%と半数近くが外国人会長の存在を受け入れられると回答している。

◆外資クラブのファンは満足?

すでに外資となった5クラブのサポーターによる現オーナーの評価も興味深い。「非常にポジティブ」が26%、「ポジティブ」が27%と、じつに53%ものファンが好意的な評価を下しているのだ。「ネガティブ」は12%、「非常にネガティブ」は4%にとどまる。

◆外国人選手の多さには不満

一方で、オーナーではなく、ピッチで戦う選手については、イタリア人を増やしてほしいという声が多い。58%のイタリア人、サッカーファンに限れば64%ものサポーターが、現在の外国人選手数を「多すぎる」と評価している。

「以前のように外国人選手の数に制限をもうけるべきか」との質問にも、34%が起用できる人数を、27%が登録できる人数そのものを制限すべきと回答。サッカーファンの間では、それぞれ41%、32%とさらに多くのサポーターが「外国人制限」の必要性を訴えた。

◆ロマンだけでは成り立たず

一概には言えないが、『コッリエレ』のアンケートをまとめると、「できる限り外資の力に頼りたくないが、グローバル化への理解は広まりつつあり、実際に外資となったクラブのファンはおおむね満足。ただし全体的に外国人選手の数を減らし、自国選手を増やすべき」といったところか。

シルヴィオ・ベルルスコーニは「ひとつのファミリーがサッカークラブの経営を支えられる時代は終わった」と、愛するミランを売却した。かつて湯水のように資金を投じ、夢にあふれた補強を敢行してきたマッシモ・モラッティも、3冠達成を区切りにインテルを手放した。スポーツビジネスの国アメリカのオーナーを擁するローマは、未練たっぷりのフランチェスコ・トッティに引導を渡した。

巨額の金が動く現在のサッカー界は、ロマンだけでは成り立たない。それでも、それを前提としたうえで、サッカーは新たな夢や感動をつくり出していくはずだ。イタリアも、少しずつその波に乗っていくのだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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