「北欧は無視できない存在」映画『ジョーカー』の曲を生んだアイスランド作曲家へ北欧音楽賞
「北欧らしい音ってなに?」
それなら、毎年話題となる「北欧音楽賞」(Hyundai Nordic Music Prize)をチェックするといい。
アイスランド、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーの5か国から、その年に発表された優秀なアルバムを表彰している。
商業的な売り上げ、大抵は評価の際に重要となる数字や受賞歴を一切気にせずに、審査員がクオリティのみで価値を判断する。
優秀賞は、ノルウェーの冬の音楽祭&音楽業界関係者のためのショーケースである「ビーラルム」(by:Larm)で発表される。
2010年から始まったアワードは、商業的な数字を物差しとしないことから、北欧音楽業界で存在感と影響力を増し続けている。
審査員には北欧関係者のほかに、BBCや英国ガーディアン紙の関係者などが含まれる。
今年は25候補から、最終的に12のアルバムがノミネートされた。
さて、今年の優勝者は28日に音楽祭ビーラルムで発表となった。
優勝はアイスランド
「音楽に何ができるかという境界線を越えた作品」として、2019年のアワードはアイスランドのチェリスト・作曲家であるヒドゥル・グドナドッティルさんのアルバム『CHERNOBYL OST』に贈られることに。
彼女の名前だけを聞いてピンとくる人はあまりいないかもしれないが、映画『ジョーカー』でゴールデングローブ賞作曲賞、アカデミー賞作曲賞を受賞している。
テレビドラマ『チェルノブイリ』のサウンドトラックも手掛け、グラミー賞のビジュアルメディア向けベストスコアサウンドトラック部門受賞。ほかにも数々の賞を授与されている、実はすごい人だ。
北欧出身の女性アーティストが、海を越えて『ジョーカー』や『チェルノブイリ』という大作の音楽をつくるという偉業。
彼女の音楽は、これらの作品の世界観にも表れているように、重々しく、どこか不気味で怖い。
闇が深い悪夢の中を歩いているかのような、どしりとしたサウンドが印象的だ。
静かに忍び寄ってくるような、陰鬱なサウンドとは対極的に、北欧音楽賞の会場に現れたヒドゥル・グドナドッティルさんは、繊細で優しい笑顔を振りまき、静かな声で話す女性だった。
彼女があの物々しい音を作りだしたとは、想像しがたい。
「私が作曲し終えた時は、このアルバムを聞く人なんて、誰もいないだろうと思っていました」と、彼女は静かに喜びを語った。
北欧は無視できない存在に
審査員であるガーディアン紙のジャーナリスト、ジュード・ロジャース氏は、「音楽界で北欧は無視できない存在となった。どれも、とてもユニークな北欧の音で溢れている。ディズニーが、映画『アナと雪の女王2』でオーロラに恋したのも理解できる。北欧は、今、きていますね!」と興奮して語った。
映画アナ雪2では、イディナ・メンゼルが歌う「イントゥ・ジ・アンノウン」で、ノルウェーのシンガーソングライターであるオーロラが「不思議な声」として共演している。
さて、今回ノミネートされていた他の11のアルバムも、どれも素晴らしい作品だ。
女性の活躍が目覚ましいのも北欧らしい。
「今の北欧のサウンド」を知る参考にもなるだろう。
デンマーク
Jada / I Cry A Lot
Lowly / Hifalutin
フィンランド
STINAKO / Ikuisuus
The Hearing / Demian
アイスランド
Cell7 / Is Anybody Listening?
ノルウェー
Erlend Apneseth Trio with Frode Haltli / Salika, Molika
Karpe / SAS PLUS / SAS PUSSY
Pom Poko / Birthday
スウェーデン
Jenny Wilson / TRAUMA
Nadia Tehran / Dozakh: All lovers hell
これまでの優勝者
2010: Jonsi- Go
2011: Goran Kafjes- X/Y
2012: First Aid Kit- The Lions Roar
2013: The Knife- Shaking The Habitual
2014: Mirel Wagner- When The Cellar Children See The Light Of Day
2015: Band of Gold- Band of Gold
2016: Jenny Hval- Blood Bitch
2017: Susanne Sundfor- Music For People In Trouble
2018: Robyn- Honey
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Text: Asaki Abumi